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韓国史劇風小説『天皇の母」40(フィクションだって・・)

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日本は「経済大国」という言葉に酔いしれていた。

経済摩擦を引き起こしアメリカに不満を言われるので、大人しくしてはいたが

それでも心の中では『勤勉な日本人だからこそいいものを作れる。それのどこが悪い」

と思っていた。

東アジアの中で日本は突出して繁栄を謳歌していた。

敗戦国にも関わらず・・・・それが何となく周辺国の「中華思想」を持つ人々にとっては

不愉快で、でも金を引き出すには好都合とばかり、あれこれ画策。あるいは発展途上の

国々には惜しみなく援助をする国。

それが日本だった。

だが、一方で憂慮も抱えてきた。

多くの国民はわからない事だったかもしれないが、天皇は確実に弱って来ていたのだ。

人々にとって天皇はまさに「国家」そのものだったろう。

いつもそこに変わらず存在し続ける。たとえ、年に数回しかテレビで顔を見る事が

なくても、天皇は天皇。そこにいるだけで日本の「顔」だし国民の「父」だし

ほっとする存在だった。

華やかな皇太子一家にはそこまでのカリスマ性はなかった。

よくよく考えてみると皇太子一家のカリスマを支えているのはミチコ妃ただ一人。

彼女が「より皇族らしい行動を心がける」事によって、誰もがスパーウーマンを

見出し「とても凡人にはあんなこと出来ないわ」と思わせる。

ミチコ妃の「優秀さと記憶力のよさ」これが今の東宮御所を支えていたのだ。

 

しかし、当の本人達はそんな事に気づく筈もなく。

特に次期皇太子になる筈のヒロノミヤはそれこそ「自由」を謳歌していた。

彼がイギリス留学で学んだこと。

それは「自由」だ。日本にいる時のように常におたたさまが目を光らせている事も

ないし、多少のわがままも聞いてくれる。

その一端が、アメリカでブルック・シールズに会いに行った時の事。

イギリスの留学を終えての帰り、アメリカに立ち寄った時、プリンストン大学を

訪問する事が決まった。

その時、「ブルック・シールズに会いたい」と周囲に言って見た。

ブルック・シールズは大きな目をして大柄でグラマラスな美人女優だ。

ヒロノミヤは「エンドレス・ラブ」を見て一気にファンになり、イギリスの寮では

ポスターを貼っていたほど。

何が好きって・・・あのゴージャス感がたまらない。

気が強そうな太い眉と大きな瞳。栗毛の長い髪。高い背丈。それに知性もあって

胸も大きく言う事なし。

こんな人を恋人に出来たら、回りがどれだけ羨ましがるだろうなあ。

きっと二人で歩いていても、視線はこちらに釘付け。

こんな素晴らしい彼女を連れて歩いてるのが日本の皇族だって知ったら尚更

みんなびっくりするだろうなあ。

というわけで、ほぼ強引に頼み込んでブルック・シールズと会わせてもらった。

彼女は言うまでもなく美しかったし、ゴージャスだったし、いい匂いもした。

そんな彼女に気後れする事無くプリンスとして振舞った自分は偉いなと思う。

マスコミはこぞってはやし立てる。

「ブルック・シールズがお妃候補?」

「ヒロノミヤ様の好みは目が大きくて派手な美人」

「日本でこんな女性を探せばお妃候補に上げられるかも」

と・・・・

というのも、実際の所、ヒロノミヤの妃候補はどんどん脱落しており、先の見通しが

たっていなかった。

かつて皇太子妃を聖心女子出の民間人に奪われた学習院は、こんどこそはと

総力を結集して「ヒロノミヤの妃」を選定しては送り込んでくる。

学習院の女子同窓会「常磐会」にとって、あの時の屈辱は何としてもらはさねばならぬ。

こんどこそ、旧皇族、旧華族から妃を立てて、皇室の伝統を守り血筋の重要性を

説かなくては・・・・

しかし、ヒロノミヤの両親はそこまでのこだわりを持っていたわけではなかった。

むしろ「嫁」の方が家柄がいいとなれば、後々色々と面倒な事が起きるのではないか

と考えていたのだ。

旧皇族・旧華族連合は正直、現天皇の崩御と同時に「皇室」との付き合いを

辞めてもいいなと考えていた。

天皇には親近感もあるし自分達の事を大事にしてくれる。

しかし皇太子は民間妃を娶った時点で自分達に反旗を翻したようなものだし、

皇太子妃の異常な人気は「皇族として」のものとは到底思えず、何だか皇室自体が

貶められていくような気がする。

「開かれた皇室」と言われて30年。

イギリス王室のようなフレンドリーで親しみやすい皇室を作ろうと皇太子夫妻は

頑張って来たのだが、見る側が違えば「やりすぎ」にも見える。

まして、次代の皇太子がアメリカの女優とデートを楽しむなど・・・・・・

 

そんな事は意に介さずヒロノミヤはブルック・シールズとの逢瀬を楽しんでいた。

あちらは緊張することなく「プリンセスになった気分だわ」と言ってくれた。

それがどんなに嬉しかったか。

「ブルック・シールズでさえもお友達に出来るヒロノミヤ」というプライドが腹の

底からわきあがって笑顔がこぼれる。

世間的にはヒロノミヤのお妃は家柄は勿論、学校の成績も優秀でなければいけなかった。

全てが「ミチコ様」を基準に考える為、「美人で学歴優秀、成績優秀」

それが条件となっている。それはヒロノミヤも同じだった。

自分は将来天皇になるのだ。

それゆえに、自分にふさわしいのは誰にも手に入らない素晴らしい女性。

美人で頭が良くて語学堪能・・・誰もが羨ましがる女性。

妄想はどんどん膨らんでいく。

 

学習院大学のキャンパスでは静かに愛が育まれつつあった。

学友達はみな義理堅く、秘密はきっちり守ってくれた。

アヤノミヤはカワシマ教授の娘、キコと真剣に交際をしていたのだ。

勿論、誰も異を唱える人はいない。

なぜなら彼女はおっとりしているけどしっかりもので、気が強いけど優しくて。

美人というより可愛らしくて・・・・小さい頃にオーストリアにいたのでドイツ語と

英語は堪能。マンドリンを弾き手話に興味を持つ、ごく質素な娘。

その質素さがいかにもアヤノミヤの恋人としてふさわしかった。

「アーヤは短気な部分もあるから、キコちゃんみたいなおっとりやがちょうどいい」

と学友のクロはそう言った。

「そうかな・・」アヤノミヤは否定しない。確かに、時々ちょっと爆発するとすぐに

困った顔してこっちを見るキコに自分はぞっこんなのだと思った。

あの「何でそんなに短気なのか・・・」という目でみられると叱られているみたいで。

でもそれが妙に心地よくて。

「あいつだって頑固だよ。絶対に曲げない」

「知ってる。アーヤと付き合い始めてからキコちゃんは言葉遣いが変わった。

彼女はアーヤの恋人としてふさわしい人間になろうと必死になってるんだ。

あれは相当な覚悟だな。って事はアーヤも相当な覚悟をしないとな」

「うん」

アヤノミヤはすでに計画を練っていた。

さりげなく東宮御所に招いて妹や両親に会わせる。それを何度かやってから

具体的に結婚の話をする。

でも今の所、兄の結婚が決まってない以上、弟である自分の結婚は言い出せない。

もう、さっさと決めちゃってくれよ・・・

アヤノミヤは一人、そんな事を考えていた。


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