今時の女の子も読んでね
「絵がキモい」とかーー「無理っ」とか言わないで。
一緒に仕事をしている同年代の人の話。
「小さい頃、漫画が大好きで大和和紀の「はいからさんが通る」の大ファンだったの。
でも母親に全部捨てられちゃった」
お母さんに捨てられたって人、結構多くないですか?
幸いにして、私の母は娘の趣味に無関心&傍観&言えば買ってあげる系
だったので助かりましたが。
今回は和田慎二の作品をご紹介します。
「スケバン刑事」で有名な和田慎二ですが、その昔は
「男なのに少女漫画を描いている」という事で、異色の存在でした。
でも別冊マーガレットにおいては美内すずえと並んでっていうか、張り合って
読み切りをガンガン描いてた人です
やっぱり男性ですから、絵もそうですがストーリーが男っぽい。
沢山の作品群の中には、複数回出てくる探偵などがいて、
「愛と死の砂時計」の神恭一郎、「大逃亡」の沼重三は「スケバン刑事」でも
おなじみ・・・とっても古くてファンにはたまらなく愛すべきキャラです。
その一方で「パパと恵子シリーズ」のようなほのぼのとした作品も残しています。
特に「クマさんシリーズ」は不朽の名作。買わなかった自分が悔やまれます。
「別冊マーガレット」から「花とゆめ」に移り、その後は悩みつつも様々な出版社
から出していたようですが2011年に亡くなりました。
「愛と死の砂時計」 (昭和48年別マ)
登場人物・・・雪室杳子 (表紙)
保本登 (杳子の婚約者)
紅崎麻矢 (杳子の親友)
神恭一郎 (私立探偵)
学園長 (杳子が通っている学校の園長)
ラベンダーの首飾りの少女
ストーリー・・・孤児院育ちで高校に通う杳子は教師の登ると婚約。
式を待つだけの幸せな日を迎えていた。
しかし、登は学園長に呼ばれ学校へ行き、そこで園長の死体を発見。
その場で逮捕され死刑判決を受けてしまう。
登の無実を信じる杳子は親友の麻矢や神恭一郎と共に真犯人を
探し始める。
「砂時計」ってあまりなじみがなかったので、どういうものか正直わからなかったです。
でもさらさらと死刑への時間を表現するのには最適でした。
また「ラベンダー」の香水というのも全く知らず。そのラベンダーの香りを
ペンダントに封じ込めるという・・・なんともハイカラでおしゃれなネックレスに
激しく憧れました
昭和40年代はまだラベンダーはメジャーじゃなかったですよね。
香水といえばオーデコロンでシャネルの5番 だから新鮮だったんです。
神恭一郎のかっこよさもひときわ目立ち、最重要人物の登より魅力的でしたね。
さらに「女は化粧で変わる」事を「メイキャップ」という言葉で表現。
当時は今ほど化粧技術が発達していなかったでしょうし、かつらもまたしかり。
それでも人は「メイキャップ」だけで顔が別人になる事もあるんだなーーと。
真犯人のヒントを持つ人々が次々殺されていくさま、その手法に驚いたり
怯えたり。すさまじかったですねーー
「姉貴は年下」(昭和47年別マ)
登場人物・・・森陽子 (表紙の女性)
久 (弟・表紙右上)
石川英明 (表紙右下)
ストーリー・・・わずか半年前まで日本的でなよやかでモテモテの姉貴・陽子が
突如、髪を切って染めて女優になった。さらにある日、弟に向かって
「今日から私はあんたの妹になる」と宣言。
それには深いわけが・・・鍵を握っているのはプロデューサーの
石川英明。
ちょっとシスコンの弟が姉貴の嘘を心配して繰り広げるドタバタコメディですが
まとまっていて笑えて面白い。
和田慎二は本当は「長髪で前髪がくるりんとして和服が似合う」女性が好きなんだなと
思う事があります。麻宮サキもそんな髪ですよねーー
とにかく姉と弟、兄と妹、父と娘・・のような図式が好きな事は確かです。
「パパとパイプ」(48年別マ)
登場人物・・・恵子 (表紙右)
パパ (表紙左)
ライダー1号、2号、V3(猫たち)
ストーリー・・・小説家のパパ、娘の恵子は父子家庭。
ある日、そこに一人の女性が現れ「私があなただったかもしれないのよ」
と告げていなくなる。
同時に人気作家のパパの仕事も次々打ち切りに・・・・
そこにはパパの知られざる「恋」の話が。
このコミックスにはさらに昭和46年別マに掲載された「パパ!」が収録されて
おり、この「パパ!」がシリーズ初という事になり、「パパとパイプ」は2作目。
パパは小説家で愛煙家。(今じゃ死語)パイプが友達。一日中モクモクと
パイプをくゆらしながら小説を書いてます。
パパが愛した恵子のママは和服が似合う髪の長い控えめな女性・・・・・
父子家庭には3匹の猫がいて、ライダー1号、2号、V3と名付けられています。
この設定は将来的にも変わりません。
そして何かっていうと「パパの初恋」「パパ独身時代の恋」が騒動の元と
なって恵子が泣いたり誤解したりという話が生まれるのです。
「姉貴は年下」はシスコンの弟が主人公。
そしてこれはファザコンの娘が主人公。
温かくて優しい家族関係には憧れた人も多いのではないでしょうか?
「大逃亡」(昭和49年別マ)
主人公・・・江木万理亜 (表紙)
沼重三
ローレンス・タルボット神父
律子
ストーリー・・・孤児でおばさんの家に居候していた万理亜は伯母一家の
陰謀により罪を着せられ少年院に。
そこで肩にバラの入れ墨をされ、そこから万理亜は「復讐」を誓う
女に変身。少年院を脱獄しある村の教会に身を寄せる事になった。
可憐で女性らしく、疑う事を知らない女の子が傷害の罪を着せられて
少年院に入る・・・スケバン刑事の大元がここにあるんです
今時の少年院があんなにすさんでいるとは思いませんが、「黒バラの万理亜」
となった万理亜が教会で今一度、素の優しい女性になりラストは死を迎える。
非常に教訓的な意味合いの大きい作品です。
「バラ屋敷の謎」 (昭和47年別マ)
登場人物・・・浅野ユミ(画面左下)
間久部五郎(マック) (左側の男子)
ジュン
ストーリー・・・ユミは家庭教師として雇われ、屋敷へ行くとそこは真冬なのに
コートがいらない程温かいバラだらけの屋敷だった。
担当するジュンはわずか9歳なのに天才で、ユミの他にもその道の
専門家が教えている。
しかし、ジュンの髪は緑色で生まれてから一度も屋敷の外に出た事がなく
さらに、教師がいない場所では「優秀」とはほど遠いすがたをしていた。
その謎を探るべくマックは潜入していたのだった。
やがてジュンは父親によって、元々は自閉症で生まれたものの、人工頭脳で
健常児かつ優秀な子供として生きていたのだった。
まるでどこかの誰かが読んだら「うちも人工頭脳が欲しい」と言い出しかねないような
ストーリーなんですが。
優秀な科学者がやっとさずかった息子が自閉症だった・・・
その事に納得できず人工頭脳を開発し、家庭教師が教え込んだ知識を全部
ためていく。屋敷がいつも温かいのは膨大な電気の消費量によるものだった・・・
子供は親に愛されたいから頑張る。親はそれを利用するという悲しい図式が
見えます。
間久部五郎はこの後も色々な作品に登場するキャラクターです。