これからの抱負、
両陛下・皇太子殿下との思い出
秋篠宮
「この1年、私の公的な活動、それから研究などを通して言いますと、
やはり、一番にあるのは東日本大震災であります。
私たちも各地を訪れて、そこで被災された方たちにも会って、その当時の様子などを
聞いたりもいたしました。
その中で、先ほどともちょっと重複になりますが、肉親を亡くした人もいますし、
家が流された、それから原子力発電所の事故があって避難を余儀なくされている、
そのような人たちが、これは私がお会いした人たちですけれども、
その多くがより前向きに日々を過ごしている様子が、私は非常に、
この1年を通してみても印象に残っております。
そして、そのような中、8月の上旬に全国高等学校総合文化祭が福島県で
開催されました。
当初は開催をどうしようかということが随分いろいろ議論になったようで
ありますけれども、全国から高校生が集まって、これはひとえに実行委員会の熱意に、
それから努力によるものだと私は考えますが、残念ながら幾つかできなかった
種目(部門)はあるものの、かなりのものを行いました。
開会式で行われる構成劇も、今回の震災が起こる前までに用意して
いたものではなくて、震災が起こってから、日本、被災地の復興ということを考えた
「ふくしまからのメッセージ」というタイトルだったと思いますが、
そういう構成劇を新たに地元の高校生たちが作ったわけですね。
私は、福島県の高校生がそのように非常に生き生きと今回活動し、
さらに全国から高校生が大変な数、福島県に集まったという様子を見た時に、
非常に大変な状況の中に、何か明るいものを見た感じがいたしました。
一方、ご質問にあった、研究、私の行っている研究についてですけれども、
昨年までかなり長い期間、タイの研究者との共同研究を行っておりまして、
それがまあ、(紀子さまを見つめて)昨年でいいのですよね。
紀子妃 はい
秋篠宮
「昨年の3月に、サイアム・ソサエティーというところから本として
出版されております。
それで、最初のフェーズは一応一段落ついたという感じはします。
ただ、やり残していることもまだたくさんあります。
これは抱負のようなものになるのかもしれませんけれども、
そこでやり残したことというのを、またもう少し続けてみたいなと。
私の研究は、キーワードはドメスティケーション(家畜化)なのですね。
タイの人たちと一緒に仕事をしながら自分自身で感じるのは、鶏の
ドメスティケーションを考える時に、タイのみでなくて、もっと広くアジアを見る
必要があるし、もうちょっと言えば、他のヨーロッパとかそういうところに、
世界的に広がっているものを知る時に、やはり、そういうところを少し
見ていかなければいけないなという気がしました。
私の場合、時間を長く取って、海外の方に調査に行くということは
なかなかできませんけれども、何年かに一度くらいはですね、現地へ足を運んで
、自分で実感をしてみたいなと思います。最近、現地に足を運ぶことが
意外と少なくなってくると、大学で講義をしていても、最初の頃はかなり
自分の体験に基づいて話をしていたのが、だんだん人の受け売りが多くなってきて、
若干それについて、恥ずかしいこともあるものですから、そんなことも今少し
この1年を振り返って考えているところであります。
それから、両陛下ですね。両陛下との交流という点で言いますと、
毎年例えば葉山であるとか那須であるとか御料牧場であるとかに、
ご一緒する機会があります。
葉山はちょっと短めなことが多いのですけれども、今年も2回ほどは葉山に、
(紀子さまに確認して)2月と6月の2回ですね。
紀子妃 (秋篠宮さまをみつめて)そうでしたね。
秋篠宮
「ご一緒しましたけれども、夏の期間にはうまく時間が合わなくて、
ご一緒する機会はありませんでした。ただ、長男が夏の時期に、
昆虫採集に興味があるというのか、虫を探すことに興味があったものですから、
この赤坂御苑よりも恐らく種類数でいうと、皇居ははるかに多いと思うのですね。
そういうことから、夏の一番虫の多い時期にはほぼ毎週に近かったですよね。
(紀子さまを見つめて)
紀子妃 はい
秋篠宮
「皇居の方に行って、御所でごあいさつして、それで虫取りに吹上御苑に
行くということがありました。
そのような時に、陛下も息子の虫好きを知っておられますので、
普通だったら草刈りをしてしまう所をそのままに残して、虫がたくさんいられるような
環境を作っておいたりとか。
それから、暑い時期、当然短い期間ではありますが、ほとんど(毎週)家内と
息子が二人で虫取りに出かけていくわけなのですけれども、
それでも短時間、息子の悠仁に誘われるようにして、(陛下も)ご一緒に
昆虫採集……。(少し考え込む)
紀子妃 (秋篠宮さまを見つめて)虫探し?
秋篠宮 (紀子さまを見つめて)虫探し?
紀子妃 (秋篠宮さまを見つめて)観察も……。
秋篠宮 「観察、そういうことがよくありました。
皇太子同妃両殿下のところとの交流については、残念ながらそれほど
多くはありません。
ただ、先ほど家内がお話ししたように、秋口でしたか、みんなで集まった時に、
子供たちが集まって、非常に和やかというか、にぎやかというか、
一時を過ごしていたということが私には印象に残っております。以上です」
福島の「文化祭」について、ここまで具体的に色々語って下さったら、頑張った
主催者や高校生達も嬉しいのではないかと
ただ式典に参加して視察するだけではなく、開催の立ち上げからきちんと話をして
調べてその上で成果を見る・・というような手順を踏んでいる事が素晴らしいです。
研究者としての秋篠宮殿下の具体的な悩みを聞いたのも今回が初めてでは
ないかと思います。もっと勉強したい、もっと調べなくちゃ・・という焦りも感じ
られますが、多分、今後はさらに時間がなくなるかも
「水の研究」といいつつ何も愚弟的に出てこない皇太子とは偉い違いだなあって。
陛下とのエピソードは出てくるのに、皇太子との話しになると
「残念ながらそれほど多くありません」というもんきり調。これっていつかの
陛下の「お話できることはありません」にそっくりで。