Quantcast
Channel: ふぶきの部屋
Viewing all articles
Browse latest Browse all 5842

韓国史劇風小説「天皇の母」161(綱引きのフィクション)

$
0
0

「では、今後は離婚で話をすすめると」

ユアサは不機嫌そうに椅子に座ってため息をついた。

職員はその言葉にただ黙っていた。

「全く、あれもこれも自由がない、海外行きたい、子供を産めというな・・・そんなんだったら

何で皇室に入ったのか。殿下のお気持ちがわからん。

今さら言っても仕方ないが、なぜあの時、結婚したのか。

結果的に皇室に泥を塗る事になったじゃないか」

「はあ・・・しかし、このまますんなり離婚と行きますかどうか」

職員の言葉にユアサはぎろっと目をむいた。

「何でそう思うのか」

「あのオワダ家ですよ。別れるなら慰謝料を出せと要求してくるでしょうし、そもそもトシノミヤ

様の扱いをどうするのかと。それに皇太子殿下の印象も本当に悪くなるでしょうし」

「そう・・・だな」

ユアサは頭を抱え込んだ。

マサコが軽井沢に籠城してはや一ヶ月がたとうとしている。

その間、皇太子は何度も別荘を訪ねている。

東宮侍従によると、止めても止めても振り切って行ってしまうんだとか。

「別荘にお泊りになったのは最初の3日のみ。しかも近くのホテルですよ。

何で天下の皇太子殿下がそこまでしなくちゃいけないんですか?

今まで、そりゃあ先帝の母君が怒ってご実家に帰られたケースはありますけど

それで陛下がお迎えに行ったなんて話は聞いたことがない。

いや、お迎えに行っても戻ってくればいいですよ。でも全然そんな気配はなし。

あちらは夫人に姉妹までついて、さらに先ごろはオワダ氏自身が別荘に来ているそうで。

皇太子をホテルに泊まらせるような事をしても全然平気なんですから」

ハヤシダ東宮大夫の悲鳴のような話を聞いて、ユアサは、もはや「オワダ家」と

「マサコ妃」が皇室に合う合わないのではなく、皇室そのものを根底から覆そうとしている

のではないかと思い始めていた。

「もしかして殿下は洗脳されているのでは」

職員のつぶやきにはっとする。

洗脳か・・・・それが愛によるものだと言えるんだろうか。

「とにかく、このまま欧州歴訪の返事を出さないととんでもない事になります」

「そうだな。今回は皇太子一人でと返事を」

「それが・・・・」

職員は困った顔をする。

「なんだ?」

「皇太子殿下は2人ないし3人で行きたいと希望されております」

「2人って妃と?3人ってトシノミヤ様もご一緒か」

「はい。ダイアナ妃がかつてそんな事をしましたよね。あれにあこがれがあるらしく」

「それだけの理由なんだろうか」

トシノミヤは女の子だ。しかも障碍がある。

そのような子を海外に同道する。しかもカミングアウトにせずに。

これはひょっとしてオワダ家の「女帝」アピールに他ならないのではないか。

海外メディアは3人でヨーロッパを歩く皇太子一家を写しだし、トシノミヤに皇位継承権が

ない事に疑問を呈するだろう。

ヨーロッパの王室は次々「長子相続」になっている。

日本の皇室は旧弊で男尊女卑だ・・・そんな印象を与える為に行きたいのではないか。

「絨毯の上をまっすぐに歩けもしない皇太子妃のくせに」

うんざりする。そうそう多くはない海外旅行においてマサコの態度は最悪だった。

いつまでたってもしりたりを覚えず、英語をはなせばスラングで。

それでも自分では「皇室外交」をやっているつもりなのだろう。

やたら堂々と命令口調で言うものだから、回りがひいてしまうと言った具合だ。

今までの海外訪問で失敗しなかった事はない。

10年経ってもこのザマだというのに、それでも「自由がない」「海外にいけない」と

嘆くあの性格。

ユアサには全く理解できないものだった。

「だが、とにかく妃殿下を自由にして差し上げるのが先だろう。皇室の伝統やしきたりは

未来永劫変えられるものではないのだから」

 

ドアがノックされて、憂欝そうな顔をしたハヤシダが入ってくる。

「ちょうどよかった。今後の事について」

「東宮が・・・もう一度軽井沢に行くと」

ハヤシダは遮って言った。

「またか」

「どうしてもヨーロッパに妃殿下を同行させたいお考えのようで。説得に行かれると

おっしゃっているのです。こんな事は前代未聞です」

「はあ・・・・」

ユアサはまたも大きなため息をついた。

「それで君は何と言ったのかね」

「御引止めしましたよ。ご公務もおありになるし。予定外の行動は回りに迷惑をかけます。

そうでなくても軽井沢のホテルは右往左往して大変な状態なのに」

「離婚のご意思はないのか」

「離婚?ハナからお考えじゃないですよ。あれはダメ。完璧に取り込まれてますね」

ハヤシダにしては下世話な口調だ。

彼にしてみれば「アキシノノミヤ家に第3子を」発言で、すっかりマスコミに悪者にされた

事に腹をたてているのだろう。

あの時はちゃんと「東宮家に第2子を」と言ったのに、そこはカットされてしまった。

それもまた見えない「手」のせいではないかと思うにつけ、腹立たしい。

マスコミはそうやって印象操作して、間違った方向に誘導していくのだ。

「それに・・・」

ハヤシダは口ごもりながら言った。

「皇后陛下が離婚には反対でいらっしゃいます」

「皇后陛下が」

「はい。一番にトシノミヤ様の事を心配されていますし、娘から母親を奪うようなことは

してはならないと」

「だったらトシノミヤ様の身分はそのまま、マサコ妃と一緒に実家に戻ればいいじゃないか。

どうせ皇位をつぐ立場になるわけじゃないし、15歳になったら臣籍降下出来るし」

「こう申してはなんですが」

「言いたい事はわかるよ。トシノミヤを女帝に推す声があるという事だろう」

「やっぱり長官もそうお考えですか。女帝論は過去に何度も出た事はありますがその度に

立ち消えになってきました。親王様が生まれたからです。でも、今回ばかりは。

マコ様やカコ様しかいらっしゃらない時も随分騒がれたようですし、正直、両陛下も

女帝には賛成ではないかと思ってしまい・・・・・」

「いや、いくら何でもそれは」

(マコがいるではないか)

耳に残る天皇の言葉。皇太子夫妻になかなか子供が出来なかった頃、

女帝論が高まった事がある。アキシノノミヤの次はマコ内親王でいいじゃないかと

天皇はつぶやいたのだ。

聞き違いではない。確かにあの時。でも黙殺された。

その事を天皇自身はどう思っているのだろう。

今度は本気でトシノミヤを女帝にと考えているのだろうか。

「まるで日々が腹の探り合いのようですよ。皇太子殿下は私達に心を開かなく

なってしまわれ、私達が何か助言をしてもお聞き入れにならない。

頭の中はいつも「マサコ、アイコ」で一杯です。

でもまさか、本気で女帝なんて考えているんでしょうか。

もし、そんな事を考えているとしたら妃殿下に他ならないのでしょうけど。

直接聞くわけにもいかないし」

「我々の仕事もあとわずかかもしれない」

ユアサは沈んだ声で言った。

「この所、外務省からの異動が頻繁になっている。そのうち宮内庁長官も

東宮大夫も外務省からという動きになるだろう。誰の策略かはすぐにわかる。

外務省といえば、今や反日の巣窟だ。まさに伏魔殿だよ。そこからの人が増えると

いう事は皇室の終わりの始まりを意味する」

「考えすぎじゃないですか」

「そうでもないさ。皇太子妃の今回の件がいい例だよ。今までなら両陛下を、あるいは

皇太子殿下を恐れて、思っても行動なんかする人はいなかった。

でもマサコ妃はそれをやったんだ。どんな事をやっても自分はバッシングされない

責められないと知っているからだ。世も末だよ」

一気に部屋中が暗い雰囲気に包まれてしまった。

 

その頃、皇太子はわずかな供と一緒に軽井沢に向かっていた。

5月の欧州訪問に対する最終回答に迫られていたからだ。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 5842

Trending Articles