2回目の観劇。一緒に見た姫がひどく感動
特にラストシーンがよかったみたい・・・といっても衣装が素晴らしかったそうで
「DVD買おうかなあ」というので
「ぜひぜひ(姫のお金で)買って ママは「蘭陵王」のDVD買うから」と言ったら
呆れられました
我が家を狭くしているもの・・・・それは膨大な本とDVDですね。はい。
あまり印象的ではなかった雪組時代
私は、壮一帆の下級生時代を知りません。
1998年の「speakeasy」「スナイパー」や2001年の「ミケランジェロ」も見ているからき
っと目に入ってはいたけど、気づかず。
その年に雪組に組替えた。多分、その時に名前を覚えたような気がします。
でも、轟悠と絵麻緒ゆう時代は、名前を知っていて顔も何となくわかっても
あまり印象に残りませんでした。
当時、非常に線が細く見えたのは確か。
2002年「ホップ・スコッチ」は立樹遥・壮一帆・音月桂の3人が主演という芝居で
しかも3人がほとんど同じ展開で物語が進んでいくという試験的なものだったのですが
この時の完全勝ち組は音月桂。
立樹遥の控えめな優しさと、音月桂の日の出の勢いにのまれて、壮一帆のクリストは
どこか中途半端な印象。
相手役の晴華みどりが、これまた歌ウマで主役のごとく光り輝いていたから
すっかり影になってしまって・・・・・
2003年、朝海ひかるのお披露目「春麗の淡き光に」の源頼信は、貴城けいの
厳しさと対照的な優しいおにいちゃまでしたが、それでも印象は薄かった。
ショー「Joyful」でも、背丈が低くて線が細い壮はあまり活躍したという印象はなく。
でも、スカステのビデオでみた「春ふたたび」では、美しい武者姿を披露。
あれ?ちゃんと演技が出来るんだ、この人・・・と思いながらストーリーに泣いてました。
多分、この頃から派手な着物が似合うタイプだったのかも。
「romance de paris」「レ・コラージュ」でかなり音月桂が迫って来て
「壮君、危ないなあ。路線落ちするんじゃないだろうか」と思った事もあります。
その後「送られなかった手紙」「あの日みた夢に」などを見ましたけど、何というか
今一つどっしりとした芯が見えない男役だと思っていました。
痩せて小柄で頼りない印象がずっとつきまとっていたんですよね
スカステビデオでみた「DAYTIMEHUSTLER」のヘイワードで、少し骨太さが
見えてきて、敵役が似合う男役なのかと思ったあたりで花組に返り咲き。
これがかなり幸いにしたようです。
はじけ飛んだ花組時代
正直、壮一帆が花組に行って、あそこまで強い男役になるとは想像していませんでした。
あの組替えはご栄転というより、「別格」扱いというのが目に見えていましたので。
あの当時の花組。
春野寿美礼を筆頭に彩吹真央が二番手として安定していたにも関わらず
突如、そこに真飛聖が次期トップとして乗り込んで来て、彩吹は雪へ。
そしてトレードされた壮一帆が3番手として入ったのですが、多分
「壮君、トップになれるのか?いや、なれないでしょう」という意見が多かったのでは?
本人もそれはわかっていたんじゃないかと。
それゆえに、ある意味、自分を捨てたというか、
かっこつけるのはやめたーーとばかりに自由に動き始めました。
純生星育ちの真飛にとって花組はなかなかなじめない組だったと思います。
その戸惑いを見透かしたように縦横無尽に動き回る壮。
この時期の壮はトップを支えるというより、トップを蹴落とす勢いだったでしょう。
「明智小五郎の事件簿」の波越警部役からそれはすでに出ていて
「愛と死のアラビア」では、構いたくなる弟・トゥスンでしたが、図々しい程人懐こい
役柄がよく似合っていたと思います。
「太王四神記」におけるプルキル役は、壮の代表作の一つ。
ドラマの印象が強かった私は、壮にあのあくどさを出せるのか?と疑問でしたけど
実際に舞台を見てびっくり。メイクから演技からまさにプルキルそのもの。
あの役は、本当に自分の殻を破った瞬間であったと思います。
その後は、鼻につくほど「ジャイアン」ぶりを発揮。
少しは二番手の自覚を持ったら?と言いたい程。
何となく真飛贔屓だった私にとって、壮の「花組の総意」的な態度が気に入らなかったんですよね。
「虞美人」の劉邦がこれまた当たり役。
「少しいい加減で底抜けに明るくて運がいい男」をやらせたら右に出るものがいない状態。
蘭寿とむ時代の壮一帆
そんな壮にとって、同期の蘭寿とむ返り咲きにはどんな気持ちだったのかと。
トップの座が遠のいたのか近づいたのか、イマイチ判別がつかない状態に。
蘭寿のあとに同期がトップというのはありえないとして、でも音月桂が突如辞める
ハメになり、もしかしてこれは・・・・ まさに「運がいい男」そのもの。
蘭寿時代の壮の代表作は「復活」のシェンホック。
いわゆる「トップスターのお友達役」に他ならないのですが、これまたいい加減で明るくて
でも友情に厚い豪快な役。敵役でなく、友人役でここまで個性を発揮できたのは
壮だからといえるでしょう。
正直、歌が上手なわけでもダンスが上手なわけでもない彼女ですが
次のショー「CONGA」では、見事に熱帯の雰囲気を出して成功。
そしてトップへ
花組時代から雪組時代、壮のテレビの露出はほとんどありませんでした。
タイミングが合わなかったのか、意図的だったのかわかりません。
確かパーソナルブックも出ていませんよね。
だから、いわゆる壮のトップ就任は歌劇団的には予定外だったのかもしれません。
音月が退団しなかったらもしかして壮のトップはなかったかも。
でも、運命の歯車が回り始め、壮一帆が雪組のトップスターになったのです。
トップとして大劇場3作品はどれも秀逸でした。
「ベルサイユのばら」のフェルゼンは壮の力技が光りましたし
「SHALL WE DANCE」はちょっと異色の作品でしたが、その普通っぷりが
かっこよかった。
そして「前田慶次」もまた壮の代表作になりました。
壮一帆の宝塚人生を振り返ると、人というのは成長するものなのだと
実感させられます。
若い10代のうちに音楽学校へ入って20歳そこそこで男役としてスタートし
右も左もわからないながら、少しずつ男役の伝統を身に着け、
自分の欠点を自覚し身もだえし、克服していく、あるいは欠点に変わるものを
見せて行く、その過程を存分に見せて貰ったという気がします。
小柄で痩せて線が細かった男役は、今や誰よりも骨太で豪快な男を演じられる
トップスターへと進化していった。
それは本当に素晴らしい事だと思います。
雪組は今、崩壊の危機にあります。
壮一帆の存在は、崩れ落ちる橋をかろうじて一本の木で支えているようなものでした。
その木がなくなった雪組はどこへ行くのかわかりません。
だからこそ、もう少しいて欲しかった。
一本の支柱に頼り切っている組子達をもっと引っ張って欲しかった。
けれど、最初から3作と決めていたんですよね。
だから何も言わない事にします。
今後、どんな人生を歩んでいくのかわかりません。
でも、多分、どこへ行っても何をしても不屈の努力で「運」を自分の中に
取り込んでいくのではないでしょうか。
えりたんの奇蹟。もう一度見てみたい。