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さよなら未涼亜希

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 まさかこんな形で退団しようとは・・・・思いませんでした。

 

 花組の微妙な立ち位置

宝塚には下級生だけを好きになるファンがいます。

新人公演を卒業したらもう終わり。次の下級生をみつけていく・・・そして

せっせと手紙を送ったり差し入れしたりする。

私が未涼亜希の名前を聞いたのは、そんなファン達と付き合っていた頃でした。

その頃は私、あまり花組を見てなくて、かろうじて愛音羽麗くらいまでは知っていたのですが

たまたま「まっつのファンです」という人がいて、「まっつって誰?」とオペラグラスを

向けた程度でした

 

未涼が入団した1999年からの花組というのは、愛華みれを筆頭に

上級生がひしめいていた時代です。

二番手の匠ひびき、伊織直加、春野寿美礼、瀬奈じゅん、水夏希と

若手有望株が沢山いました。

だから下級生がなかなか上に上がれない状態であったと記憶しています。

新専科制度で組替えや外部出演が相次ぎ、下級生といえども明日はどうなるか

わからない気分だったのではないかと。

私が未涼を意識し始めたのは2004年の「NAKED CITY」でした。

未涼は小柄で細くて、声も小さいような印象があったのですが、意外と演技力が

ある事に驚きました。

落ち着いた大人の役が似合う。

そうはいっても、声が細くて男役としてイマイチだよなあと思ったのは確か。

彩吹真央ファンだった私は、定期的に花組を見るようになりましたが、いつも

愛音羽麗の次という立ち位置で、いつもいつも微妙な立ち位置だったと記憶しています。

 

 花組の要に

そんな未涼亜希が実力をいかんなく発揮出来た作品として

「太王四神記」のヒョンゴがあると思います。

ヒョンゴはコムル村の村長で玄武の守り主。

物語のナレーションを担当していました。

最初から最後まで冷静な役回りでしたが、未涼の滑舌のよさと落ち着いた声は

客席に安心感を与えました。

ある意味、ここが分岐点で、未涼は自分なりのタカラジェンヌの道を見つけ始めたのかなと

思いました

その後「虞美人」の張良役は未涼のよさを存分にいかしたものでした。

影の主役っぽくさえあったと思います。

 そうやって花組の重要な要としてやっていくのかなと思った頃、突如の組替え。

 

 何かが狂い始めた雪組時代

音月桂のトップ就任と同時に雪組に組替えになった未涼亜希。

これで彼女の立ち位置は決まったようなものでした。

要するに、「3番手以上二番手未満」という事です

こういう立ち位置ってけっこうきついものではないかと・・・・・・

いっそ専科扱いの方が楽でしょうか。

それでも宙組の緒月遠麻のように、無くてはならない男役として君臨することも

可能ですが、雪組の場合、早霧せいなの2番手は確定中の確定

早霧の欠点は「歌」ですけど、そこを未涼が全面的にフォローする・・・というわけでも

なかった。なぜならトップの音月が歌える人だったから。

「ロミオとジュリエット」のベンヴォーリオや「黒い瞳」「ロックオン」などでは

音月と息のあった同期ぶりを発揮していたものですが、トップスター自体が器用な人

ですから未涼の自己アピールは空回りしていったような気がします。

「3番手以上2番手未満」の生きるよすがは、全て同期トップがどれほど頼りに

してくれるかにかかっているのですが、未涼にはそれがありませんでした。

役も静かに小さくなっていったような気がします。

でも「ドン・カルロス」のフェリペ二世は素晴らしかったと思うのですが。

てっきり音月と一緒に退団するものだと思っていたら、残ってくれて

さらにバウ作品「ブラック・ジャック」で主演してくれたので、嬉しかった反面

「これはもしかして最後の花道?」と思ったりして

個人的には、音月のあまりに短いトップ時代の後、もとは一緒だった壮一帆の

時代を支えるべき重要な男役になって欲しいという願いもありました。

しかし、そんな時に夢乃聖夏の組替え

夢乃の存在感は圧倒的でした。

「ベルサイユのばら」のジェローデル、「シャル・ウイ・ダンス?」のおどけた役等

とにかく自己アピールが素晴らしかった。

怪我の休演も重なって、あっという間に未涼の居場所が奪われていったのかも。

本当は早霧せいなトップ就任まで残る筈だったと聞いています。

それが唐突の退団発表。

もしかしたら未涼は自分が支えるというより支えられたかったのかもしれません。

重責に体と心がついていかなかったんだろうなと。

それは理解できるけれど、やっぱり才能がある人なだけに惜しみます。

 

 まっつへ

今は多分、1か月先の事で心が一杯で、回りの事も、自分がしてきた事も

何もかも目に入らない状態なんだろうと思います。

「前田慶次」を二度見ましたが、あなたはどこかしらけていて、組子達の視線、

そしてファンの視線をまともに受ける事を拒否していたようですね。

あなたから受けるオーラは「ほっといてほしい」

こればっかりだった

「ベルサイユのばら」の頃にはまだあったスター性がこうも見事に消え果るとは。

あなたをこんな風にした人の事、許せないです。

あなたはお母さんが元ジェンヌで、多分、小さい頃から「いつかはタカラジェンヌ」という

レールを敷かれていたのではありませんか。

宝塚という特殊な世界もあなたにとってはなじみのあるものだったに違いありません。

あまりになじみがある場所だったから、そこの本当の厳しさや落とし穴を感じる事が

出来なかった

世間知らずのまま、ある時自分の限界を知る。

その時の孤独と恐怖はどんなものだったでしょうか。

壮一帆のように自分を180度切り替えて、突き抜けるような明るさを持つ事が

あなたには出来なかった。

ただただ過去を思い、今を悲しみ、未来を憂える・・・そんな人だったのだろうかと。

私が舞台で感じていた落ち着きや骨太さは実は必死にまとっていた鎧だったのでしょう。

鎧をまとい続ける体力と気力がなかったんですね。

 

芸術の世界とは厳しいもの。特に宝塚は。

1+1が2にならない理不尽さ。努力だけではどうにもならない処遇。

いつしか迷宮に陥り、自分を見失っていく人が多い。

立ち止まって考える時間すらなかったんだろうと。

だけど、同情は出来ません。

まっつが「未涼亜希」として存在出来たのは、何といってもあなたを愛する

ファン達のおかげでしょう。

なけなしのお金を貯めてあなたの為にファンクラブに入り、チケットを買い

出待ちや入り待ちをしてくれ、真摯に舞台を見てお手紙をくれるファン達の。

彼らは無償の愛を捧げているのです。

ファンクラブの幹部の方々だって、どれ程の時間をあなたに割いてきたか。

その手間といったら半端なものではありません。

私は常々、ファンクラブの幹部に成程有能な女性ならきっと大企業でも

グローバルに活躍できるのではないかと思っています

それくらい、ファンクラブの運営というのは大変なことなんです。

一般のファンだって、あなたの為にグッズを買い、チケットを買い、お茶会に来てくれる。

雨が降っても雪が降っても「一目会いたい」一心で劇場の前に立ってくれる。

こんなに愛されているのに、まだ愛が足りなかった、私は愛されていなかったと

感じたのですか?

そりゃあ、ファンはあなたに期待します。もっと役付きがよくなってくれたらいいな、

組の中で出世してくれたら嬉しい。トップスターになって欲しいと。

その期待が重かったという事でしょうか。

耳に優しい事だけを言ってくれる人をあなたは選んだという事でしょうか。

大劇場のさよならの時、あなたは

「今さら自分の生き方を変えようとは思いません」と言い切りました。

そりゃ勝手だけど、せめて「支えてくれてありがとう」くらいは言うべきだった。

ファンが心配するあまり、沢山のお手紙を上げたり声を上げたり・・・したかもしれない。

だけどそれを断ち切るような真似をしてはいけないでしょう。

ヅカファンのありがたみを知るのは10年後だったとして、その時、あなたは

2014年の今、大きなものを失った事に気づくでしょうね。

幸せになって欲しいとは言いません。

少しも幸せそうでない事が気の毒なだけです。

それでも今が幸せなのだと思い込もうとしているなら・・・それは違うと伝えたい。

舞台人にとって、「舞台」こそが命です。

誰でも立てる場所ではないからこそ、そこに立つ人間には「覚悟」が必要だし

精一杯努めなくてはならない。

その舞台から去って行かざるをえない行為が「愛」なのか。

相手の立場や心を少しも思いやらない事が「愛」なのか。

もう一度考えて欲しい。


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