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韓国史劇風小説「天皇の母」41(フィクション?)

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このところ、マサコはイライラしていた。

有頂天になっていたのはほんの僅かの間だった。

スペインのエレナ王女のレセプションでヒロノミヤに会った事は、自分としては

かなり「箔」がつく出来事だったんだろうと思う。

祖母が言う通り「将来、日本で一番偉い方になるのよ」という事で、そんな方に会え、

しかも言葉を交わす機会があった自分は非常に運がいい人間なのだと思った。

でも・・・まさか、それで皇太子が自分を「見初めた」なんて・・・・・

「ありえないって」

マサコはぞぞっと体を震わせた。

イギリスの華やかな王室ならともかく、日本の皇室なんて地味なイメージしかないし

堅苦しそうだし。いや、何よりもあの背が低い男の妻になるなんて・・・ありえない。

 

マサコが外務省に入省してからは、はっきりいって仕事場は自分の「天下」と

同様だった。

なぜなら外務省には父の威光が隅々まで響き渡っており、入省1日目にして

「ああ・・オワダさんのお嬢様」と上司に言われたくらいである。

研修中から同期、上司が自分を見る目が違っている。

それはマサコにとってうっとりするように心地よかった。

でも・・・外務省の研修はあまり面白いとは言えなかった。

こんな事、やる必要があるのか?ということの連続だったし、せっかくハーバード

を出て東大に学士入学した自分にふさわしい仕事か?といわれるとどうしても

そんな風には思えなかった。

外交官・オワダヒサシの娘にして最高の学歴を持つ女・・・その自分が、他の同期と

一緒に研修を受けている現実。これがわからないのだ。

「一応、流れてきなものがありますから」

と説明されたけど。

じゃあ、どんな仕事がふさわしいのか?って?

漠然とだが、「外交官」といえば「外国」だ。

つまり、日本にとどまっている自分ではなく、イギリスとかフランスとかヨーロッパ

大陸を闊歩する自分。これがいわゆる「夢」なのだった。

しかし、マサコにはそこに行き着くまで大きな努力が必要であるという事が理解

出来ないのだった。

 

まして・・・・いきなり週刊誌に「ヒロノミヤ様のお妃候補ナンバー1のオワダマサコさん」

と書かれた意味も。

何で1度会っただけでそういうことになるのかしら?

別に親密に会って話したわけじゃないのに。私の好みじゃないし。

「まーちゃんが将来の皇后になったらいいわあ」

と母は無邪気に言ったけど、自分としてはそういう姿は想像できない。

それなのに、週刊誌の報道は熱を帯びるばかり。

何でもヒロノミヤが自分に一目ぼれしたのだとか・・・・あの時点で一目ぼれ?

誰かに一目ぼれされる経験というのは心地よかったけど。

 

エレナ王女のレセプションから数ヵ月後、オワダ家に招待があった。

招待主はタカマドノミヤ。外務省の数人を招いての茶話会ということだった。

「宮家から招待が来るなんてすごい」と母ははいい

「まあ、適当に行っておいで」と父は言った。

「別に気後れする必要はない。お前はハーバードを出て外務省に入省した

日本でも指折りのキャリアウーマンなんだから誇りを持って行っておいで」とも。

そんな風にしてタカマドノミヤ邸にいってみると、なぜか自分以外の誰も来ていない。

しかもタカマドノミヤ夫妻と一緒に自分を迎えたのは・・・ヒロノミヤだった。

「他の方々はご都合が悪かったので」

緊張のあまりかたまるマサコに宮妃はにこやかに言った。

そうは言われてもマサコは緊張をとく事が出来ない。体が小刻みに震えて、

逃げ出したい感情にかられる。

目の前にいるのは、将来の天皇・・・といってもただのおぼちゃまにすぎないが。

「今日はよく来て下さいましたね」

ヒロノミヤは幾分高い声でマサコに声をかけた。エレナ王女の時と同じように

唇には微笑が。

「はあ・・・ご招待されましたので」

「マサコさんはずっとアメリカにいらしたんでしょう?それじゃ英語は得意なのかな」

「不得意とはいえないと思います」

「ハーバードの授業はどんな感じですか?」

「まず基礎が・・・」

それから延々とハーバードの授業体系を説明した。タカマドノミヤ夫妻はいつの

間にか姿を消していたが、ヒロノミヤはにこにこといつまでも聞いている。

「ハーバードの女子学生の割合は?」

「どんな授業が特に魅力的でしたか?」

「これじゃまるで接見しているようですね」とヒロノミヤも苦笑いしている。

「え?石鹸?石鹸がどうか?」

「いや、その石鹸じゃなくて・・・ああ。マサコさんは外国暮らしが長いから」

え?何を言ってるの?この人。

不思議そうな顔のマサコをヒロノミヤはくったくなく見つめて又笑った。

つられてマサコも笑った。すると、ヒロノミヤは嬉しそうに

「僕はオックスフォードに留学していたんですけど・・・」と話し始める。

「まあ、オックスフォード?私も来年には国費で留学いたします」

「え?本当ですか?じゃあ、僕が色々教えてあげますよ」

結局、最初から最後まで大学の話で終わってしまった。

二人の共通点といえば、「留学」経験くらいしかなかったのだから。

 

マサコは今日の訪問は有意義だったのではないかと思った。

普通の人がなかなか入れないタカマドノミヤ邸に入り、将来の天皇と話を

したのだから。やっぱり自分って何か特別なのかしら?

しかし、その事がさらに「お妃候補」報道を加熱させるとは・・・・思ってもいなかった。

 


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