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韓国史劇風小説『天皇の母」44(フィクションかも)

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1987年から1988年、そして89年にかけて皇室には嵐が吹き荒れた。

1987年9月、天皇が入院した。

病状は伏せられていたし、何分高齢という事で国民はあまり疑問を持たなかったのだが

実は「ガン」であった。

その昔、長女テルノミヤをガンでなくした天皇は「我が家はガンの家系ではない筈」と

おっしゃったそうだ。

なのに、今度は自分がガンになってしまうとは・・・

世代交代の波が押し寄せてこようとしている。

 

ますますヒロノミヤのお妃問題が重大化している。

天皇が生きている間に慶事を、次代の皇太子妃を決めようとオモテもウラも

やっきになっている。

ヒロノミヤは好むと好まざるとを得ずに次から次へと女性と引き合わせられた。

大企業の社長令嬢、旧皇族令嬢、旧華族令嬢・・・・しかしどれもうまくいかない。

その理由は「お妃候補」に挙がった途端、女性の方から「辞退申し上げる」との

意向を示され、さっさと結婚されてしまうからだ。

自分が全くモテない事実はヒロノミヤにもわかっていた。

「僕はアーヤのような社交性はない。背も高くないしハンサムでもないし」

弟はますます背が伸びて180センチにもなっている。

最近はひげをはやしたり、金のブレスレットをしたりして物議をかもしているけど

でも人気者だ。結果的にいつも自分の目の前には弟がいる・・・と思わざるを得なかった。

そう思うと、自分がいいと思ったオワダマサコを否定する宮内庁の面々は 

いやがらせしているのかも・・とすら思う。

まさか、その間、かのオワダ嬢は追いかけてくるマスコミに対して

「どこの社なの?名刺出しなさいっ!」と指差し恫喝している事など

知りようもなかった。

ヒロノミヤの目に浮かぶマサコははきはきとした聡明な女性で、外国語に長けて

一般的知識が豊富な魅力的な女性だった。

マスコミ的には直感としてヒロノミヤのマサコに対する執着が見てとれたから

次第に取材攻勢は激しくなっていく。

アサヒ新聞の女性記者は上司に「マサコさんとデートして来いっ」と命令されて

計16回も食事をおごり、プレゼントを贈った。

官僚向きの性格なのか、マサコは「接待される」という事に遠慮した事がなかった。

食事をご馳走します、飲みに行きましょう、映画のチケットが手に入りました、

お誕生日おめでとうございます・・・と誘われる度に当たり前のようについてきて

当たり前のように食べて飲んで貰っていく。

「これ、ちゃんと経費で落としてくれるんでしょうね」と記者は上司に文句を言った。

最初は必死だったけれど、次第にマサコの気まぐれな性格が出て来て

ドタキャンされたり、暫く連絡を絶たれたり・・と、その度にプレゼントと電話攻撃で

自分を忘れないようにアピールする。

疲れてくるけど、食べたり飲んだりする席ではよくしゃべる事は間違いない。

とはいえその情報の信憑性には疑いが・・・・

「ヒロノミヤ様ってどんな方ですか?」

「普通の方」

「普通って・・優しいとか?気遣いがとか?」

「いえ、そういう意味ではなく私がいうのはユージョアリーの普通という意味です。

ごく一般的とでもいいましょうか」

「ヒロノミヤ様とはどんなお話をしましたか?」

「いちご大福を食べた事がないとか。あの人、いちご大福を知らなかったのよ。

信じられる?だから今度お持ちしましょうかって言ってあげたら喜ばれたわ」

「まあすごい。じゃあ、マサコさんもヒロノミヤ様の事を好き?」

「どうして?いちご大福と好き嫌いに何の関係があるの?」

「だって、今度お持ちしましょうかって」

「いやね。いちご大福も知らない人を好きになる自分が想像出来ないけれども」

「だって・・何度か東宮御所に招かれて・・・行ったんでしょう?」

「それは俗にいう興味があるからというか、真に生物学的な興味の対象?」

わけがわからん・・・記者は頭を抱えた。

本当にこの人をヒロノミヤは好ましいと思っているんだろうか?

この女性、一度も「今日は私が(払います)」と言った事がない。

自分よりもずっとずっとお金持ちに生まれているのに。

こういう人、官僚にはいるよなあ。3流の政治家とか。

あ・・・韓国に昔いたという「両班」気質かしら?

「じゃあ、マサコさんとしてはこの先、外交官になって世界に羽ばたくのが夢?」

「自分としては深く考えた記憶はないけれども、アメリカで培った英語力と

留学経験を生かして何か出来るといえば、やはり外務省で外交官になる事かしら?

私は小さい頃から父と一緒に海外で暮らしていたので、そこでは様々な場所へ

行ったわ。セントラルパークとか、モスクワの赤の広場とか。父のお友達には

有名な政治家も沢山いるし、部下もまた学歴と経歴がハンパじゃない人達。

だから海外で暮らして、そういう人達と色々語り合うというのは自分にとって

非常に自然な行為なの」

だから・・・・?言いたい事はなんなんだろう。

「外交官が天職って事ですね?」

「そうともいえるし、いえないともいえるし」

メモりながら酒の勢いも手伝って、すっかり理解不能にされてしまう。

これがこの人の手なんだろうか。

正直、翌年、彼女がイギリスに留学した時はほっとした。これ以上たかられるのは

いくら経費でも嫌だなと思ったのと、彼女の要領をえない話し方にはつくづく

うんざりしたからだった。

 

無論、ヒロノミヤはそんな風に馬鹿にされている事も知らない。

天皇ご不例で、両親はますます忙しくなり、一方、皇太子妃の母も具合が悪いと

きている。皇室全体が暗い雰囲気の中でヒロノミヤに出来ることは

ただ何事もなく微笑む事だけだった。


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