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Channel: ふぶきの部屋
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エドワード8世   1

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 昨日、霧矢大夢サヨナラ公演「エドワード8世」を見てきました。

大劇場ではパンフレットが売り切れていたとか。

その理由は、パンフレットの中にある登場人物の説明文らしい・・・・

確かに細かく書いてありますね。なんせ全員実在の人物なもんですから。

今回の演目はイギリス好きのキリヤンによる大野先生ご指名と言われていますが。

さすがに期待を外さない描き方。

でも皮肉もたっぷり含まれていて『純愛」じゃなかった事がいかにもキリヤンの舞台

らしいなあと思いました。

 

 大野先生が描きたかったもの

普通、宝塚の場合は「王冠を捨てた恋」という題材を与えられれば当然のように

「純愛」路線で描くと思うんですね。

実際はどうであれ、イギリス王室という環境の中で縛り付けられた皇太子がウォリス

の愛に育まれ、でも周囲に反対されていたので、地位を捨てて愛を取る・・みたいな。

その方が描きやすかったと思います。

でも、大野先生はしょっぱなからディビッドとウォリスの愛は「まやかし」だったと

位置づけていますね

エドワード8世の葬儀の日。ウォリスは本当にエリザベス女王の宥めを拒否する

程取り乱して泣いていたそうですが、そこに亡くなったウインザー公が

現れて「君の得意なうそ泣き」といい、こんな女と結婚しなけりゃ王座にいたのに・・・

とまで言ってしまう。

え?二人が結婚したのは「純愛」じゃないの?と、観客は興味を持つわけです。

芝居の中のディビッドを見ていると、都会的でかっこよくてモテモテの割には

そういう人生に満足していない。

何か違う意義ある事がしたい・・でも、出来ない。出来るのは「王室」への反抗。

大元は「父親」への反抗。

どこまでそれが許されるんだろう。ゲームのような状況になってきて引き際が

わからなくなり、結果的に自爆しちゃった・・・って感じ?

無論、そこに「愛」はあったでしょう

でも、それは大昔の御伽噺のようなものではなく、互いの人生を補い合う程度の

ものだったのでは?

純愛に徹するにはウォリスにもディビッドにも野心がありすぎ、後ろ暗さが目立つので

こういう描き方をするしかなかったんだろうなあって

舞台の作劇上、ディビッドが何をもってウォリスを愛するのか、何で退位を求められ

るのかはっきりとは描かれていませんし、それに対してのディビットの葛藤もない。

この物語の中で一番面白くない人物、それがディビッドなんですよね。

ウォリスを主役に描くなら、もっとダイナミックに盛り上げられたのにと思います。

でも、宝塚である以上はディビッドが主役でなければならず、ロミジュリ路線もダメ

となれば・・・あれが限界だったのかなあって

 

 踊る台詞・細かい設定

大野先生の脚本に感心するのは、とにかく台詞のやりとりが自然でテンポが

いいという事です。大劇場ならではの舞台転換もスムーズだし、登場人物の

背景も細かくてきっちりしている。

それゆえに、わかる人にはわかるけどわからない人にはわからない・・的な

感覚があると思います そこらへんはオギーと同じですね。

そもそもなんでエドワードなのにディビッド?って思ったら、ディビッドは洗礼名で

守護聖人の一人の名前だそうです だから守護聖人がどうのこうのって・・・・

さりげなく後の女王・エリザベスと妹マーガレットを登場させたり。

チャーチルの娘・サラが駆け落ちという話は史実のようで、後に彼女は女優に?

 

 回りを彩る人物が多すぎる

このお芝居の中で唯一の欠点があるとすれば、登場人物の多さでしょうか。

本当に必要なのはディビッド、ウォリス、チャーチル他王族だけだと思いますが

龍真咲が演じたのはラジオ局のガイ・バージェス。実はソ連のスパイでゲイ?

でもそういう説明が果たして必要だったんでしょうか?

また明日海りおが演じたトーマスは侍従の一人。後に出世して准男爵になる

らしいですが・・・しどころのない役だったなあと。

様々なところに事実がちりばめられているけど、その説明をいちいちしなくても

いいんじゃないか?という気がしました。

また「敵役」が存在してないかったので、盛り上げにくかったかな。

「うたかたの恋」のルドルフとフランツ・ヨーゼフの喧嘩シーンとか(似たようなのは

あったけど、もう少しやってーーというところで逃げちゃった)

チャーチルが全てを仕組んだ張本人でディビッドが踊らされていただけとか・・・

そういう雰囲気を出せばもっと引き締まったのにと思います。

さよなら公演だからなのか、大野先生特有の「毒」が抜けていたのは残念。

 

ラストの結婚式。

これまた史実通りだけど、これってハッピーエンドなのか?とちょっと疑問で。

(ウォリスのドレス、本当に蒼だったのかしら?白黒写真では白にしか見えず)

ディビッドはその後フランスへ行ったけど、すぐに帰国したかったらしいですね。

まさか一生帰る事が出来ないとは思わなかったのでは?

ナチスと繋がってみたり、ニクソン大統領と会ったり、目立ちたがり屋?

 

そうそう・・・ディビッドの弟達も出てきましたよね。

ジョージ6世、グロスター公爵、ケント公爵・・でも5番目にジョン王子がいたというのは

あまり知られていないかも。

彼は享年9歳。自閉症にてんかん持ちだったので王室の中で隠されて育ったそう。

「悲劇の王子」として今は知られているらしい・・・・・

 

個人的にはジョージ6世にいたく同情しちゃった私です。

「馬鹿な兄貴を持つと次男がここまで苦労する」の典型のような・・・・

わが国の皇太子がエドワード8世並に潔い人ならどんなにましだったか。

 


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