DVDキャスト
トート・・・春野寿美礼
エリザベート・・・大鳥れい
ルキーに・・・瀬奈じゅん
フランツ・ヨーゼフ・・・樹里咲穂
ルドルフ・・・彩吹真央
エルマー・・・蘭寿とむ
小ルドルフ・・・望月理世
5年ぶりの再演
先日のスカステにおいて、20周年パーティでの春野寿美礼の挨拶
「私のお披露目だったんですけど、大鳥れいの退団公演で。大鳥れいに振り回された
エリザベートでした」
大鳥れいは
「花組公演の時、最下級生で白い仮面をかぶっていた朝夏まなとさんがトートだなんて感慨深い」
この二つの挨拶を見て、みなさんはどう思いますか?
私はつくづく「オサって変わってないんだなあ」と思いました。
双子のママになるんだよね・・・・・大丈夫か?
大鳥れいのような挨拶をすべきだと私は思いました。トップスターならね。
さて、宙組以来5年ぶりの再演。
それも歌がめちゃくちゃ上手な春野寿美礼のお披露目という事で
結構盛り上がった記憶があります。
当然、チケット難でした。
瀬奈じゅんのルキーニも似合いそうだし、フランツの樹里さんも歌えるしって事で。
大鳥れい演じるエリザベートの見た目はしょうがないとしても、とにかく
聞くだけなら雪組レベルまで行くだろうなあと。
この時、演出は中村一徳だったんですよね。
おおまかの流れは変わらないにしても演出家が変わる事で違いが出れば・・・・
過去3回とは違う演技を・・・・と思いすぎ
春野寿美礼としては、今までの「エリザベート」とは違うトートを演じたいと思ったのでは
ないかと。だから、自分なりにものすごく頑張ったんだと思います。
しかし、他のキャストがみな平凡なので、春野寿美礼だけが浮き上がって見えてしまうんです。
春野寿美礼というスターのよさを私はなかなか理解しがたいのですが、
男役として未完成のままトップスターになった人だなという印象があります。
自分の欠点を補う為に、得意な歌をめちゃくちゃ朗々と歌う。
一方で大柄でないから、そう見せる為に一生懸命におおぶりにして大きく見せる。
花組版のトートは、とにかく無駄な手の動きが多いのが特徴です。
「その手の振りに何の意味があるのか」と思う程に手や腕を動かすんですね。
しかも、相手役を全くみないで、ひたすら自己陶酔の中で右往左往しているような。
確かに春野寿美礼のお披露目ですし、彼女が真ん中にいるんだから、自分の世界に
埋没してもいいといえばいいんだけど、相手役への気遣いが一切なく、自分を鏡で
みて、うっとりしているような感じはちょっと頂けないなと思います。
時折、叫んだり、体をぐいっと動かしたりするんですけど、演技と演技に脈路がないというか
その場その場の雰囲気でやってみましたーーという感じです。
歌なら一路真輝や姿月あさとがいるし、ガタイの大きさでは麻路さきに負けるし、
苦肉の策だったのかなと。
どこにでもいるエリザベートとルキーニとフランツとルドルフ
春野がひたすら自分に酔う中で、共演している大鳥れい、樹里咲穂、瀬奈じゅん、
彩吹真央はいわゆる「普通」です。
大鳥れいは格別美しいわけでもないし、かといって可愛いわけでもない。
エリザベートをやってもアントワネットをやっても同じだなt思うだけで。
樹里咲穂はあまり時代物には合わないというか、瀬奈じゅんの歌やセリフ回しは
耳障りはいいんだけどさらっと流れて忘れてしまう感じ。
彩吹真央は、さすが樹里咲穂と大鳥れいの息子だなーーと思う程「普通」の皇太子。
そう、春野寿美礼を除けば、この作品は「エリザベート」というタイトルじゃなくて
「エリザベート皇后の生涯」とか「ハプスブルク家」とかいうのがついても全然誰も
おかしいと思わないレベルです。
遠野あすか
この作品で見てよかったと思えるのは多分、遠野あすかだけではないかと思います。
彼女のヴィンディッシュ嬢は陵あきのとは違って、気がくるっても笑わないで泣くんですね。
狂気の中で悲しみに浸っている。
観客はヴィンディッシュ嬢に惹かれるエリザベートに同化していくのかなと。
演出
おおまかに変わっている所はないのですが、1幕最後、鏡の間から登場するエリザベートの
向きが白城あやかと正反対。
ヴィンディッシュ嬢が上手から登場して
下手に去っていく。その際、彼女が持っていた枯れた薔薇の花びらが落ちる。
トートがルキーニナイフをぽとっと落とす。
フィナーレCの「最後のダンス」が春野寿美礼と瀬奈じゅんのダンスで始まる。
仲がいいオサアサならではだなと思います。
衣装は全部デザインが新しくなっているのですが、とにかく安っぽい。
特にエリザベートの衣装が何だかな・・・・と
鏡の間のかつらはまるっきり大鳥れいに似合っていませんでした。
男役ダンスはボルドー。これは綺麗だと思いましたけどね。
でも、デュエットダンスでも歌っちゃうのか・・・春野さん。
パレードも1フレーズ少ないです。
なぜエリザベートとトートは結ばれるの
タイトルのように思った人は多かったと思います。
少なくとも雪組と星組を見た人からは出てこなかった感想です。
さらに言うなら、「エリザベートってわがままじゃない?」って事でしょうか。
まず「なぜ」について。
これは新曲「私が踊る時」の春野寿美礼と大鳥れいに原因があると思います。
ここの場面、宝塚版ではとにかく仲が悪く見えるんです。
喧嘩してみえる。
しかも最後、エリザベートはつんとして退場するわけですから。
東宝版で花總まりが歌うと、ここは「トートへの言い訳と強がり」になって
可愛いんですが。
花組の場合、こんなに仲が悪い二人が何で最後に抱き合って昇天していくのか?
変じゃないか?と。
思えば「エリザベート」は最初から矛盾を含んだ物語なんですけど、
それがあらわになってしまったんですよね。
樹里咲穂のフランツがあまりにも優しくて二枚目で
こういう人の言う事なら聞いてもいいなあと思う一方で、春野トートは吸血鬼のごとく
不気味なので「トートよりフランツの方が」と思う人もいたのではないかと。
また「わがまま」というのも、大鳥エリザベートはとても心を病むほど神経質に見えない、
むしろどんな逆境にも耐えていける強さを持っているので、まるっきり同情出来ないんですね。
これ以降、どの組を見ても、
「考えてみれば何でトートとエリザベートが結ばれるんだろう」という疑問が膨れ上がるばかり。
トートがエリザベートを愛している風に見えないのも原因ですね。
東京でみたとき
実はものすごく期待してました。だって歌が上手な人ばかりですし。
なのに、ふたを開けてみたら「全員上手なのになぜ頭に残らないの?」と
悩むばかりで。
思い出すのは、夏美ようのゾフィの目を伏せたくなる皇太后ぶりばかり。
早い話、当時の花組は優等生ばかりで個性が強い人がいなかったという事ですね。
仲がいいおさあさも、アイドル的な人気に過ぎなかったのかなと。
星よりずっとずっと上手なのになぜだーーと。
スターが小粒になってきたねと言われ始めた頃だったんですよね。
お披露目で「エリザベート」というのも災いしたのかもしれませんが。
気負いすぎの春野寿美礼と正しく演じ過ぎた他の人達の落差は大きかった。
DVDでは独立運動で旗をふるまー様がちらっと映っています。
感慨深いです。