DVDキャスト
トート・・・彩輝直
エリザベート・・・瀬奈じゅん
ルキーニ・・・霧矢大夢
フランツ・・・初風緑
ルドルフ・・・大空祐飛
小ルドルフ・・・彩那音
エルマー・・・月船さらら
なぜ今エリザベート?
版権があるうちに上演しないといけないから・・・・・
とはいっても「エリザベート」の場合、キャストのよしあしが作品に影響する
事は花組で証明済みだった筈。
それなのに同じ愚をもう一度経験するとはと思った記憶があります。
それというのも、エリザベートのキャスティングが問題でした。
彩輝直と瀬奈じゅん
彩輝直が月組のトップになるにあたっては紆余曲折があったものと推察します。
元々月組出身ではありましたが、星組へ移動してからは抜擢続き。
その割には男役として成長がないと言われ、このままトップになったら困るな
と思った所に新専科制度で宙組へ移動したかに見え・・・・
最終的に月組に里帰りして終わった感じ。
色々いわく付だったけど、トップになったらさっさと2作で退団。
しかも相手の映美くららが先に退団しちゃった。
そういう状況の中で、誰がエリザベートに抜擢されるのかというのは大きな
話題でした。
当時「歌劇団はえみくらにエリザベートをさせたくなかったのよ」と言われたものですが
これって本当だったんでしょうか?
なんにせよ、彩輝のお披露目で瀬奈じゅんが特出で出演。
その後、花組に戻る事無く月組に組替え。
次期トップであると同時にエリザベート役をゲットしたのでありました。
この時の衝撃は、ある意味麻路トートをしのぐものだったと言えるでしょう。
「あの・・・ごっつい男役がエリザベート?一体、何の冗談なの?」
これが本音。
確かに東宝では元男役が演じているけど・・・宝塚だよ?
大鳥れいでも十分にごっつかったのに、ここまでくると
「皇室に馴染めずに心を病んでしまった皇后」のイメージが総崩れになるわけで。
彩輝直が細いのに、肝っ玉母さんのようなエリザベート・・・・・
宝塚歌劇団の男役至上主義に非常に腹が立ったのも事実です。
これじゃ娘役の立つ瀬がないと。
バラバラな役作り
沢山の「エリザベート」の中で、宙組に匹敵する程バラバラな役作りだった月組。
彩輝トート・・・星組系統の血を引いているというか、ものすごく耽美的なトートです。
歌唱力がどうのというより、これはこれでトートとして悪くない。
むしろ妖しい魅力でかっこいい。
でも彩輝がトートとして存在感を発揮する為には、もっと弱弱しくて
おきゃんなエリザベートが必要だったと思うのです。
彩輝直の所作は黄金時代の星組で培ったものであり、よく言えば
型がきちんとしているし、悪く言えばよその組と合わない。
映美くららがエリザベートだったらもっと存在感を発揮できたのでは。
瀬奈エリザベート・・・どんなに可愛い声をだしても、そのガタイのよさは隠せないし
彩輝より初風より大柄で一番強そうな彼女が「私だけに」と歌っても
雅子さんにしか見えないわけで。
というか、この時の瀬奈は楽譜通りに歌うだけで精いっぱいで、とても
自分なりのエリザベートを構築するまではいかなかったと。
当たり前ですが、タイトルロールがこのありさまで成功するわけないのです。
せっかく彩輝直が妖しい雰囲気で迫っても全然・・・・
♪ フランツ助けてあなたが頼りよ ♪とフランツの肩に手をかけた時は
がっくりきちゃった。
初風フランツ・・・今にも消え入りそうなフランツ・ヨーゼフで、我が家のヨンジュナですら
DVDを見ながら「優しいじゃん」と言いました。
初風緑もまた「エリザベート」の中の皇帝をどう演じたらいいか
わからなかったんじゃないかと。
霧矢ルキーニ・・・もしかするとこの作品の主役は霧矢大夢ではないか?と思う程
自由自在に歌ってしゃべっていた霧矢。
霧矢と北翔だけはどんなセリフを言っても大丈夫な劇団四季風。
でも、このルキーニならトートはより圧倒的なパワーを持ってないと
負けてしまうし、エリザベートはもっと可愛くないと。
大空ルドルフ・・・ビジュアル的には最も彩輝と相性がよかったと思うのですが
いかんせんコスチューム慣れしていないのと、同期で親子と言われても。
大空ルドルフならエリザベートはもっと美しくないと。
マックス・ルドヴィカ・ゾフィ・・・星原マックスは宙組よりもっといやらしいおじいちゃんに
なってるし、夏河ルドヴィカの軽さは母親じゃないし、唯一、美々ゾフィ
だけが由緒正しい演技をしてて。
初演をほうふつとさせましたね。
結果的に、彩輝直は「心情」としてのトートを内側から演じたのに対し
他の組子は全員「形」から入った。
そのうち、霧矢は自分の実力を見せつけるような
演技をし、瀬奈はガタイのよさがあだになった。メマデレーネもヴィンディッシュ嬢も
エルマーも黒天使達もびっくりするほど個性に欠けていましたよね。
演出が変わり衣装も変わり
この当時、小池先生が情熱大陸か何かに出てて「月組は発声が弱い」と
言ってたような気がします。
言われてみると全体的に弱いんです。
だから「ミルク」の場面では銀橋にみんな出て来たのですが、私はこの演出は
好きじゃありません
銀橋に出るとトートが大きく見えないんですよね。黒天使も妖しく見えないし。
何だってこんな演出にしたかなと今も思ってます。
2幕目、ドクトルゼブルガーは縦に置いた椅子の上に乗ってエリザベートを
誘うのですが剣がブーツからはみ出てしまってました。
病院のシーンでは、ヴィンディッシュ嬢には白いショールをかけてあげる。
これに何の意味があったのかわかりませんけど。
トートが棺桶に乗るのは定番化。彩輝の立ち方は浮かんでいるような印象です。
フィナーレ
彩輝直のさよならですから、さよなら仕様で大階段での霧矢、大空、初風とのダンスは
結構好きです。
でもその後が、元気すぎるエリザベート登場。
「私こそ女王様」みたいにばーんと胸を張って出てくるので興ざめなんですよね。
東京で見た時
正直、瀬奈じゅんが出て来た瞬間に笑うしかなかった・・・
誰よりも大きいんだもん。
それと一人で声が大きい霧矢に圧倒されて、ちゃんと彩輝トートを
見る暇がなかったというか、遮られてしまった気がします。
ただ1か所。
2幕目、彩那音の小ルドルフとトートのシーンは涙が出るほどよい出来栄えで
血の繋がりのよさがこんな所に出るのかと。
要するに、一番彩輝トートと息があってたのが彩那音だったという事です。
最近、姫ちゃんにこのシーンを見せたら「ほっこりするね」と。
トートと小ルドルフでほっこりするって変だけど、本当なんです。
このシーンだけは切り取りたいなと思う程。
基本的に彩輝トートになら連れ去られてもいいなと思います。
優しそうで黄泉の国へ行ったら甘やかしてくれそう
そういう意味で言うと、やっぱり麻路トートも黄泉の国では甘やかし組かなあ。
春野トートと姿月トートは「釣った魚にエサはやらない」系かと。
一路トートは、黄泉の国でエリザベートに「公務」をさせそうだよね。