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なこよかひっ飛べ!北翔海莉

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 北翔海莉は退団しないと思っていたんだけどなあ。

今からでも専科に行った方がいいんじゃないのと思うし、でなければぜひ

音楽学校の先生に。

演技指導の先生もいいよねーー

 

さて。

北翔海莉は84期。

84期といえば、音月桂、未涼亜希、白羽ゆり、千琴ひめか、美城れん等々

颯爽たるメンバーがいるけど、どちらかといえば職人肌というか、脇で光るタイプが

多かったように思います。

思えば1999年。

激動の新専科制度によって組は増えるわ、人は変わるわ・・・そりゃあもうスターに

とってもファンにとっても大変な時代で、流した涙は計り知れない。

あの頃を思い出すのはヅカファンとしてはちょっと辛いものがあるんですけど

月組は真琴つばさをトップに迎え、何となく安定してて、しかも下級生が沢山

育つ時代でした。

最初に北翔海莉の名前を意識したのは1999年の「ノバ・ボサ・ノバ」で

ドアボーイをやってました。

ドアボーイは出世の近道らしいという話は聞いていましたので

「へえ」と思った記憶があります。

雪組の立樹遥のような明るさをあまり感じなかったけど、優等生っぽいなと。

だけど、その後の北翔に関してはあまり記憶がないのです。

 

新人公演を見てないからというのもあるけど、根本的に月組にはあまり

思い入れがなかったのかもしれません。

ベルリン公演メンバーにも入って、本当に優秀なんだなあとは思ったけど

ネットではわりと「勘違いみっちゃん」の噂が飛んでいたころでしたしね。

歌も踊りも演技もめちゃくちゃ上手で、滑舌がものすごくいい。

だけど、華やかさというか美しさがないというのが私の本音でしたね。

 

紫吹淳の時代になると、どの作品を見ても紫吹の手抜きが見えて、ちょっと嫌な

思いをすることもあったんですが、その中で「ガイズ&ドールズ」の3人のメンバーに

入っていた時は、彼女のセリフや歌が一番聞きやすくて理解できたので、やっぱり

すごい人なんだなあと。

ただ二枚目には向かないというか、外の世界の方が成功するんじゃないか?と

思った事もあります。

紫吹時代も瀬奈じゅん時代もぜーんぶ見ているのに、本当に記憶になくて・・・っていうか

作品自体が駄作過ぎましたよね。

2007年、大和悠河のプレお披露目を見に行きました。

「A/R」でシャーロックホームズをやっていました。

当時、瀬奈じゅんのトップ就任で月組のプリンス・大和悠河がまさかの宙組へ組替え。

そしてそれを追いかけるように北翔も宙へ組替えになったのでした。

まあ、あのまま月にいてもタイプが霧矢大夢みたいな感じでしたから、メリットはなかったかも

しれません。

シャーロックホームズの役は、見事で上手で、でもやっぱり華がなくて路線でいられるのかなと。

2007年「バレンシアの熱い花」ではラモンにぴったりで、でも貴族の方はちょっと・・・

「SECOND LIFE」ではピアノの弾き語りを披露して多才ぶりを発揮。

役柄としても落ち着いてきたというか、定着してきたなあと。

ただ、この頃から北翔の立場はどんどん微妙になっていきます。

そう思い始めたのは2009年「カサブランカ」のルノー大佐。

まさかまさかのふとっちょルノーか!と。

勿論、この役は彼女にしかできないものすごくやりがいのある役で、今でも代表作の一つ

だと思っています。

だけど、いかんせん路線というわりに二枚目の役が来ない、悪役も来ない・・・

悠未ひろが別格で存在感が増していたし、蓮水ゆうやや七海ひろき、十輝いりすなどが

台頭してて、背の高い男役に囲まれてちょとt大変そうでした。

「シャングリラ」の弟役は名演でしたよね。

でもショーでも段々センターから外れているような気がしたし、

「誰が為に鐘は鳴る」のアンドレアスは学年にふさわしい役とは言えませんでした。

この頃から「みっちゃん。可哀そう。こんな扱いを受けるならいっそ専科へ行った方がいいんじゃ

ないかなあ」と思っていました。

 

その通り、北翔は専科へ異動。

そして専科へ行くと同時に、吹っ切れたみたいに実力を発揮し始めたのでした。

雪組の「JIN」の勝海舟を皮きりに、花組「オーシャンズ11」のラスティは目覚ましい活躍ぶり。

月組「ルパン」では北翔しかまともな男役はいないのか?といった感じだし

ショーでも踊らない龍真咲を蹴落とすみたいに一人で踊りまくっていたし。

北翔海莉の魅力は、出演した組の組子を虜にして、成功体験を得る経験が出来る事と

言いましょうか。

それが発揮された作品の一つが

2013年の「THE MERRY WIDOW」で、下級生が多い月組を見事にまとめあげ

一つにして、名作を作り上げました。

私達、観客には主役を始め、一人ひとりが楽しんで頑張っているかわかるんです。

北翔と共演した組子たちは間違いなく持ち上がって楽しんで目いっぱい頑張っていました。

それは2015年の花組「風の次郎吉」でも同じで、私はスカステしか見ていないのですが

やっぱり集中力が違うなあと思ったものです。

そのノリのまま星組に来てトップスターになった・・・・という感じです。

柚希礼音が退団して、ちょっと揺れかかった星組の軌道修正をしてくれたという感じです。

トップになってからというもの、初日や千秋楽の挨拶には、しつこいほど

スタッフへの感謝の気持ちを述べる彼女からは、その昔の「勘違いみっちゃん」の

姿は消えていて、本当に大きく成長したんだなと思います。

だけど一方で、何でそこまでスタッフへの感謝を述べるのだろうかとも思い。

「私達はここにいるのは沢山のスタッフの皆さんのおかげです」

くらいは誰でもいいますが北翔の場合、

「照明さん、音声さん、オーケストラのみなさん・・・・」と延々とスタッフの仕事の

羅列が続いたりするんですよね。

松戸市貸し切りの時もご挨拶の中で

「将来タカラジェンヌになれなくても、宝塚の舞台を見る事で、照明や音声さんなど

スタッフの仕事に興味を持ってくれたらいいなと思います」

と話していました。

その時に「え?何でそんなことをいうのかしら」と思った記憶があります。

 

彼女自身、努力に努力を重ねたジェンヌですね。

今やピアノやサックスまで弾きこなし、歌唱力にしてもダンスにしても完璧です。

きっと色々な苦労をして影で泣いている人達を沢山見て来たんだろうと思います。

スタッフの仕事はなかなか評価されないし、報われないし・・・・

そういう人たちと自分を重ねてみているのかなとも思います。

という事は、北翔自身

「本当はトップになれないで終わった筈の自分」を自覚しているという事になります。

そう、北翔海莉は、本来はトップスターになる器ではなかった。

もしほんの10年前、15年前なら確実に専科で終わっていたスターなのです。

それは技術的にどうだとかいうものではなく、生まれ持った「華」の違いですよね。

悲しいけど宝塚は実力社会というよりは「華」を競う社会で、

男役としてどれだけの「型」を身に着けつつ、でも似合う役を与えるのは

脚本家&演出家の役割、その中にぽんと乗って行ける人がトップスターなのです。

北翔が「カサブランカ」で演じたルノーや、「トラファルガー」で演じた

ハミルトン、そして「エリザベート」のフランツ・ヨーゼフなどは、技術が必要な

役ではありましたが、決して真ん中のラインに立つ為に必要な役ではなかった

という事です。

逆に、このような役で妙に評価されるとますますトップへの道が遠のくとでも

いいましょうか。

彼女の役回りは、本当のところ、専科でトップを立てつつ、マイナスを補う役

だったのかもしれません。

そうはいっても、専科の中では目立ちすぎるのも事実で、素直に脇役になって

くれない問題もあります。

専科としては目立ちすぎる、トップとしての華には欠ける・・・・北翔海莉は

そんなやっかいな自分を認識していたのだと思います。

その結果、星組のトップスターとして落下傘するという所で手を打ったような

感じがありますね。

たまたま柚希礼音の退団があった事が、彼女にとっては幸いしました。

本音をいえば月組のトップとして降りて欲しかった・・・・

今の月組こそ北翔の力が必要だったのにと思うのですがね。

 

外の世界における北翔海莉は滑舌のよさと演技力、歌唱力で順風満帆に見えます。

ただ、老け役に回される事も多いかなと。

やっぱり「先生」的な役回りをしてほしい、これからのタカラジェンヌを作っていく

様な仕事をしてほしいというのが私の本音です。

 

 印象に残った役は 

1位・・・「THE MERRY WIDOW」のダニロヴィッチ伯爵

  → こういうコミカルでコメディで時々真面目になる薬がぴったり。

    この役が「こうもり」のファルケ博士に繋がったのでしょう。

2位・・・「カサブランカ」のルノー大佐

   → この役は彼女にしか出来なかったろうと思います。

 3位・・・「風の次郎吉」の次郎吉

  → 北翔は本来、江戸物が似合うタイプです。

    しかもやくざっぽくてべらんめえ調が似合う。もう少しこの手を見たかったです。

4位・・・「エリザベート」のフランツ・ヨーゼフ

 → 私の中で歴代フランツナンバー1はあくまで高嶺ふぶきなのですが、北翔の場合

   実在の人物のようなリアル感がありました。

   それは歌もセリフもしっかり聞こえていたからに他ならないのですが。

5位・・・「ガイズ&ドールズ」のスカイ

 → あくまで紫吹淳との比較なんですけど。アメリカ人というより江戸っ子みたいな

   スカイでしたけどね。

今後、彼女がどのような活躍をするのかわかりませんけれど、

宝塚歌劇団の中で模範的な技術を示してくれた人として記憶に残るでしょう。

退団してから、彼女の偉大さが脳裏によみがえるのではないかと思います。

険しい道は続きますが、どうか頑張ってほしい。

愛をこめて、彼女に「とみい」のピーナッツサブレを送ります。


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