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韓国史劇風小説「天皇の母」60(フィクションです)

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アキシノノミヤ家に内親王が生まれた時、日本中、祝福ムードに包まれた。

丁度、オランダ女王が来日している時に産気づいた妃。

晩餐会で「ご心配でしょうから、ついてあげて」と女王陛下に言われたアキシノノミヤは

大急ぎで病院にかけつけた。

内親王は宮にしてみれば「私ににて可愛い」そうで、そんな親ばかぶりに

国民は共感し、心から祝福した。

天皇・皇后にとっては初孫。そして皇太子とノリノミヤにとっては初の姪っ子の誕生。

「僕も伯父さんかあ」と皇太子はにっこり笑い

「私、赤ちゃんのお世話をしたいわ」とノリノミヤも笑った。

名づけられたのはマコ。

皇族女子はコ」をつけるしきたりがあるが、漢字をそのままに読んでいるようで

実は旧字を使い現代的に読ませるというテクニカルな名前だった。

またお印は「モッコウバラ」

これは野生のばらで、非常に強い。

内親王は来日したブッシュ大統領夫人の腕に抱かれ

「ストロングベイビー」と呼ばれた。

カワシマ家でも初孫の誕生を喜んだけれど、公にする事はなかった。

病院へのお見舞いの順番も一番最後であったし、孫とはいえ皇族であるから

立場を弁えねばならない。

 

そんな国中の祝福ムードの中で誕生したのが親王でなかったことに

ほっとした人物がいた。

それはオワダヒサシである。

ヒサシは内心ひやひやしていた。

もし、誕生したのが親王だったら皇位継承順位が3位になる。

自分の娘が入内する前に親王が生まれてはならない。

継承権2位の親王を産むのは自分の娘だ。

その為に事を急がねばならない。

 

その1・・・外堀を埋めること

宮内庁の職員は現代は各省を回る国家公務員である。

どこからどこへ回るか決定するのは国の仕事。

戦前までの宮内省は天皇の言葉を伝える機関として大きな影響力を

持っていたが、戦後、特に先帝の晩年における宮内庁は

公務員が最後に「ハク」をつける場所となり果てていた。

先例主義における宮内庁の中で、騒ぎをおこしたり改革したりという事は

ご法度であり、全てがしきたり通りでなければいけない。

しかも、政治に関わる事はタブーであるから、トップにつく人間は

自分の発言に常に気をつけなければならなかった。

天皇家が目立ちすぎると右翼や左翼を刺激するので、なるべく目立たないように

批判の矢面に立たないように努力する。

気を遣う仕事のわりには、あまり評価されないというか、一種のお飾りだ。

誰もがあまり行きたがらない宮内庁の中に

外務省から人が異動するようになったのはこの頃。

オワダは自分が属する外務省の人間を宮内庁に送る事で、皇室内の情報を

把握。そして少しずつではあるが、他の職員を懐柔する手にでた。

「皇太子殿下はいまだオワダマサコ嬢を忘れてはいない」

そんな噂が宮内庁の中に飛びかうようになり、それが外務省出身の職員の

口からこぼれれば、無視できない。

せっかくお妃問題を白紙に戻し、もう一度再考しようとしていた所に

そんな噂が流れれば、誰も積極的に皇太子妃候補に推す人間は

いなくなる。

さらに、そんな噂が立つ事で「やっぱり自分はマサコさんがいい」と思い込んだ

のは皇太子。

もはや何が原因でマサコが皇太子妃候補かた外れたか・・・などという事すら

皇太子は忘れてしまっていた。

チッソの孫だから駄目というのは差別ではないか。

あのように優秀な学歴を持つ女性が駄目な筈ない。

性格がどうであるか、相性がどうであるかなどという事は全く考えに

入っていなかった。

あのようjに優秀な学歴の女性が皇室に向かない筈はないと。

なぜなら、皇后がそうだからだ。

初の民間妃となった皇后にとって、血筋や家柄に代わるもの・・優秀な

成績や学歴を身につけていたからこそ、旧皇族や華族に苛められても

完璧な妃でい続ける事が出来たのだ。

大事なのは血筋や家柄ではなく、本人の「優秀さ」なのだと。

 

困ったのはフジモリ宮内庁長官だった。

あまりに皇太子にせがまれ、しかも「オワダさんじゃなければ結婚しない」

とまで言われてしまい、途方にくれてしまう。

自分が在任している間にゴタゴタは嫌だった。

ただでさえ、天皇の中国訪問の是非が問われている昨今。

皇太子が「報われない恋」に身を焦がし、反対した宮内庁が悪者にされ

ひいては天皇まで悪者にされたら皇室のイメージが著しく落ちる。

戦前なら家柄が伴わなければ妃候補にすらならない・・・という考え方を

現天皇自らが破ってしまったのだ。

今の天皇が「チッソの孫だから認めない」と言っても説得力がないのは

事実だ。

そんな時代の到来こそ、オワダは待っていたのだ。

 

「天皇の中国訪問が実現すれば、日本と中国との関係に新たな一面が

開かれる」

オワダは本気でそう思っていた。

戦前、日本が中国に行ったあらゆる残虐な仕打ち(彼にとって中国と自分の

祖国は同一だ)

この謝罪を永遠にする事こそ、一番重要な問題。

天皇が中国へ行くという事は、それすなわち「謝罪の旅」になるだろう。

日本は公に中国共産党政権を認めることになるのだから。

そうなればチャイナスクール出身の人たちが権力を握ることになる。

 

その2・・・皇室内に味方を増やす

矛先はタカマドノミヤ家。

ミカサノミヤの末子でいわゆる「皇室の端っこ」であるタカマドノミヤ家は

アキシノノミヤ家の誕生に複雑な思いを隠しきれなかった。

3人の娘を抱え、皇族費だけで生活をするのは何かと大変であったし

宮家でありながら最も一般人に近い格下である事に一種の負い目を感じて

いたのだが、そこに若々しい筆頭宮家の誕生である。

タカマドノミヤ家は「文化交流」の仕事・・・主に外務省から来る「皇室外交」の

お飾りに担ぎ上げられていた。

特に韓国と日本の交流には積極的に使われ、サッカーのワールドカップの

時には皇族で初めて韓国入りを果たし、大いに話題になった。

本人は単にサッカー好きであり、特に外務省と繋がりをもって暗躍したという

意識はないようだが、日本と微妙な関係の韓国に親近感を持つ親王は

オワダにとって赤子の手をひねるように扱いやすい。

「文化交流、とりわけサッカーにおける日韓の架け橋になるタカマドノミヤ」

というステイタスは大いに気に入ったらしく父や兄がさめた視線を送る中、

タカマドノミヤ家は少しずつ外務省に取り込まれていった。

宮家にとって皇族費以外の「テープカット」収入は大きなものだったが、

今後、それをアキシノノミヤ家に奪われる可能性もある。

それを危惧した親王は、大公路線として皇太子の「恋」を応援する事にした。

なんせ皇太子は自分を「兄」のように慕ってくれている。

そんな皇太子の為にお膳立てをする事は難しくはない。

それゆえに数年前の最初のデートの場を提供したのだ。

今、消えかかったお妃候補にまたオワダマサコが浮上し始め、タカマドノミヤは

着々と自分の出番を待っていた。

 

宮内庁・皇室内に「お妃最有力候補はオワダマサコさん」の

雰囲気が漂い始めた事に天皇は不信感を抱いていた。

どこからそんな噂が飛んでくるのか。

けれど、気が付くと、それは確定事項のようになっている。真偽を調べようと

しても誰もが知らぬ顔をする。

フジモリはただただ「皇太子殿下のお考えが・・」というばかり。

「諦めたんじゃなかったの?」

「はあ・・そうと思っておりましたが・・・東宮侍従長のソガに言わせますと

殿下は色々な方とのお見合いを経まして、ますますオワダさんへの

思いを確実にしていらっしゃるという事で」

「東宮はどうしてしまったんだ」

天皇は頭を抱え込んでしまった。

昔から一度思い込むと中々翻せない性格ではあったと思う。

でも、今回の執着は異常だ。

誰かがそそのかしているのではないか?

「そそのかすなんて・・ありえません」

フジモリは汗をふきふきそう答えた。

みかねた皇后が助け舟を出す。

「陛下、長官を責めても仕方ありません。ここは東宮侍従長によく事情を聞き

また皇太子の意見を尊重すべきではありませんか」

全てにリベラルな性格の皇后の考えは、ある意味天皇と同じで。

ゆえに強く出られない弱みがあった。

 


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