姫ちゃんとお友達とみて来ました
小池ワールドの力技
きっと他の演出家は思うに違いありません。
「俺だって(私だって)あれだけの予算を着けて貰えたらすごいゴージャスな作品を作ってやれる」と。
それくらい破格の予算がついている事は衣装をみてもセットを見ても一目瞭然。
映像もすごいし、いやはやさすが小池先生です。
小池先生の最近の原作付きといえば「るろうに剣心」「銀河英雄伝説」ですけど、過去2作品に比べたらかなり成功した方だと思います。
よくもまあ、あの大作をここまでまとめたもんだとその力技には驚愕するばかり。
1幕目はちょいだらだら系ではありましたよねーーナレーションを子孫4人に任せて時間を追う事に必死になっていたような気がします。
エドガーと赤ちゃんメリーベルが捨てられて大騒動が起こるまでがだらけたかな。
さらにまさか「メリーベルと銀のばら」をすっとばしてあっさりヴァンパネラにしちゃうなんて・・・そこだけは解せないっていうか、原作知らずの人には何がなんだかわからなかったんじゃないかしら?
しかもエドガーはメリーベルの体が弱いのは全部「自分のせい」と責めるんだけど、これまた原作知らずの人には何でかわからないと思います。
1幕目の終わりは「時間がないから強引にまとめてみました」系の雑さが見えました。なんせ原作のストーリーの山場が舞台化するには小さいし、本当の意味のクライマックスはラストのエドガー以外が全部消滅してしまう部分ですから。
しょうがないので「アラン・トワイライト」の一言で終わらせたって感じですか?
2幕目も最初は降霊術の話で何となく退屈。出演者が感極まるとすぐに上手か下手に走っていくワンパターンも見えました。
アランの家を描くのもやっぱり雑な印象があり、それよりもとにかく終盤へ持って行く方が大事だったのかなと。
小池作品の欠点は「人の描き方が浅薄」と言われることで、それは今も昔も全然変わっていません。でも今更彼に「人物像を深く描いて下さい」と言ってもむりで、それをやったらスペクタクル感を失ってしまいますものね。
「ナポレオン」の時も思いましたけど、これだけストーリーを次から次へと追っていくだけの芝居になると、本当に退屈極まりない展開になる筈なんですが、それでも音楽や映像や、ダンスや歌で見せていく力技は他の人にはまねできない事だと思います。その点は尊敬しますけど。
姫ちゃんとお友達からの質問
二人とも原作を知りません。特に姫は我が家に全巻あるにも関わらず読んだ事がなく(怒)(っていうか、うちには70年代の名作漫画が揃っているにも関わらず全然興味を示してくれない娘に失望しちゃう。まともに読んだの「はいからさん」だけじゃないの)
で、その二人からの質問です。
ヴァンパイヤじゃなくて何でヴァンパネラなの?
えー?日本で初めてヴァンパイヤって言葉を使った作品は手塚治虫の「ヴァンパイヤ」ですか?
70年代に子供だった私達は「吸血鬼」といえばドラキュラを想像していましたので、「ポーの一族」に出て来たヴァンパネラという新しい吸血鬼には小躍りしてロマンを感じたものです。以来、私の中では「ヴァンパネラ」は正式名称で「ヴァンパイヤ」は略称だと思っていました。
ヴァンパネラは血を吸うんじゃないの?エナジーってなあに
エドガーはよく「エナジー」という言葉を使いますが、これも萩尾望都が作り出した言葉で吸血鬼=首にがぶっなんてみっともない姿をさらすんじゃなくて、指先からエナジーと呼ばれる「血=気」を注入するっていう事でしょうかね。
ヴァンパネラってしょっちゅう人を襲って血を飲むんじゃないの?
「ポーの一族」ではいわゆる「儀式的」なシーンでは血を吸う・・という事はありますが、滅多に人を襲う事はなく、自制しつつ薔薇のお茶で日々生きています。
「リデル森の中」ではみなし子リデルは沢山食べるのにエドガーもアランも食べない事を不思議に思うシーンがあります。
オズワルドって誰の子孫なの?
エドガーとメリーベルはオズワルドパパとメリーウェザーという愛人との間に生まれた子供なので捨てられたのです。ヴァンパネラは子孫を残す事が出来ませんので、これはオズワルド系の子孫という事になります。
どうしてキング・ポーと老ハンナ・ポーは最初から歳をとってるの?
これがもっとも大きな疑問点らしいですが、実は私もわかりません(笑)
エドガーがメリーベルについて「自分のせいだ」というのはなぜ?
エドガーがメリーベルをヴァンパネラにしたのですが、濃すぎる血と人間界への未練のせいで相手を弱めてしまうという事が発覚。
以後、メリーベルはしょっちゅう貧血で倒れる事に。
そんな彼にシーラは「あなたの血は変だから」というんですが、のちにアランもメリーベルと同じような体になります。
ヴァンパネラが恐れるものは聖書と十字架と?
メリーベルは十字架が怖いと言っていたし、エドガーも聖書が怖いと言ってましたが、後にエドガーはそれらを克服します。気の持ちようって事ですね。
ヴァンパネラに死はないの?
「シルバー・ローズクロニクル」では傷を負った凰稀かなめが「暫く眠る」って言ってましたが、基本はどんな傷を受けても死ぬことはありません。シーラが亡くなったのは気が落ちこんだせいでしょう。
いわゆるヴァンパネラに「死」はなく、それは消滅で残るのは砂・・・・
だから一番最初の「ポーの一族」でポーツネル・シーラ・メリーベルが消滅するシーンは哀しかったし、最終回でエドガーとアランが一切の言葉もなく消滅していくのはあまりにも悲しくて今もって読めません。
舞台では老ハンナ・ポーの消滅の仕方がもっとも原作に近いでしょう。あとは・・予算の関係だったんでしょうかねーー
今の花組だからやれた作品?
誰もがそう思っていると思います。
明日海りおのエドガーはこの世のものとは思えない程美しいし、アランも原作通りだし、何よりシーラの美しさと言ったら!着ている衣装がどれも素晴らしくて目が離せず、大階段を下りてくる仙名彩世の胸元の色気のある事ったらありません。
男性ファン必見ですよね。
トップコンビが「親子」を演じるという異色な取り合わせでしたけど、これがぴったり。どう見ても仙名彩世は明日海のお姉さまかお母さまにしか見えない。
ゴージャスな大人の雰囲気の女性の配偶者としてはどうしたって瀬戸かずやの方が似合うかもしれないけど、私は断然鳳月杏を推しますね。
今回、クリフォード先生を演じた鳳月杏のかっこよさったらありません!正直、柚香光をしのぐオーラを持っていると感じました。
比べて柚香光は以前よりましになったと言われていますが、2番手としてはあまりに弱い。アランを演じるにしても1幕目はわがまま少年、2幕目はいきなりいい人ってそんな変貌ないんじゃないの?もうちょっとアランは複雑な人物だよーー
明日海のエドガーは本当によく頑張った結果ですよね。「おいでよ」っていう言葉が耳から離れない程に。とはいえ、腐女子的にBLとして弱い。
朝海ひかると貴城けいだったらもっとすごかったような気がするんですけどね。
メリーベルの華優希は大出世。あんな髪型とドレスに憧れるなあーーと今更。
この所、革命続きだったからこういう作品はほっとします。