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初心者の為の宝塚講座 3

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 植田紳爾・・・宝塚歌劇の大御所

→ 1933年生まれ。1996年―2004年まで歌劇団の理事長。現在は特別顧問。

直近は『宝塚ジャポニズム〜序破急〜』(星組・2013年・台湾公演、中日劇場)『宝塚をどり』(月組・2014年)

いわゆる初演版「ベルサイユのばら」「風と共に去りぬ」を作った人という事で宝塚と言えば植田紳爾・・と言われています。

「ベルばら」のヒットに関して、彼は自分の手柄のように思っているかもしれませんが、私は演出を担当した長谷川一夫の手柄だと思っています。

平成の最初に再演された雪組版以降、どの「ベルばら」をとっても素晴らしいと思った事はありません。セリフはどんどんおかしくなるし、型ばかりが独り歩きしているからです。

「風と共に去りぬ」に関しては一路真輝版がまとまっていたかと思います。

アトランタ脱出をばさっと切り捨てた所がいいというか。植田先生には妙な度胸があって時々観客をびっくりさせるのです。

しかしながら「ベルばら」にしても「風共」にしても観客があらかじめ「原作を知っている」という前提で作られるので、途中から始まっていたり、重要な部分をはしょったりがしょっちゅうでした。

つまり植田紳爾が大事にするのは「場」であってストーリーではないのです。これは古典歌舞伎や大衆演劇によくみられる手法で、ストーリーの整合性よりも、出演者の特性を生かして、ど真ん中で大見得を切らせて目立たせるという方法をとるのです。

橋田寿賀子と似たような感覚の持ち主で、登場人物が出てくる時はドラが鳴って颯爽と登場するとか、ストーリーをわからせる為に、延々と説明セリフを付けるとか、そういった部分が若いファンに嫌われてしまうのです。

だから植田紳爾がもし「エリザベート」を作ったら

「私があなたを見たのはまだ小さい頃で、その時から一目で心を奪われそれからずっと見守って来たけど、この度の結婚に関しては断固反対します」

みたいなセリフが延々と続くだろうなあ・・・・・と。

だけど、いい部分もあります。それは退団者にとても優しいことで、破格の役をつけてくれることです。例えば「ソルフェリーノの夜明け」での彩吹真央と未来優希の役はこれがさよならでよかったなと思えるものでしたし。

という事で古臭いと言われる植田作品の中でも見るべきものがあるのでご紹介いたします。

・紫禁城の落日 → 平成元年 日向薫サヨナラ作品。ラストエンペラーの話で、一度聞いたら忘れられない「花白蘭」が名曲ですが、「終戦の詔」の口語訳を麻路さきにさせ、ラスト、溥傑が「兄上」と呼ぶシーンが秀逸でした。

・「国境のない地図」 → ベルリンの壁崩壊を描いた作品で、初舞台性の口上を劇中劇でさせ、らすと、親子の再会で幕・・という絶妙な幕切りを演出。何よりピアノが上手な麻路さきの個性を生かした作品を作った事が素晴らしい。

・ソルフェリーノの夜明け → 赤十字を作ったアンリ・デュナンをテーマにした舞台でした。セリなし、盆なしで作られています。1幕の重みを大事にして作られた舞台です。

このように秀作を世に出している植田先生ですが、それでも彼の罪をチャラにする事は出来ません。それは彼が理事長時代に行った新専科制度での組替えです。

2001年に行われた新専科制度の目的は「2番手―3番手の肩叩き」であったと認識しています。

いきなり外部出演させられた人もいたし、もっとも悲劇的だったのは雪組御曹司の安蘭けいが星に移動し、雪組で二番手だった香寿たつきが星のトップに、星で二番手だった絵麻緒ゆうが雪のトップになった事。(しかも1作)

また花組の匠ひびきの1作退団、花組瀬奈じゅんの月組トップ就任や、とにかくファンを翻弄しましたし、何よりも植田先生が強く望んでいた「宝塚らしさ」を逆に破壊してしまい、組カラーがあいまいになり、手本となる男役不在によるレベルの低下を招きました。

この頃、やたら植田先生は「宝塚らしさ」という言葉を使っています。90年代にデビューした作家たちが軒並み自己主張の強い作品ばかり作るようになったからです。

90年代の作品を見ると、恋愛物より作家の思いばかりが表面に出る、問題作が多かったと思います。

柴田侑宏・・・男のわがままは許される系

1932年生まれ。1998年月組、真琴つばさ主演「黒い瞳」から脚本のみになり演出は謝珠栄が担当。直近の新作は2015年、星組柚希礼音さよなら作品「黒豹のごとく」で2018年に「凱旋門」が再演予定。

柴田ファンは今も昔も多く、その理由は男女の恋愛物語の秀逸さにあると思います。

しかしながら、実は柴田作品っていつも同じストーリーだってご存知でしたか?ほぼ同じストーリーをその時々のトップにあててキャラを変えているだけだったりするんです。

でも宝塚ってそれでいいんじゃないかなと思います。

柴田作品に出てくる男性はどこか身勝手だし、セクハラっぽい部分もあるけどそれが許されてしまうのは、見る側にある「M気質」を存分に満足させてくれるからではないでしょうか?

またセリフのかっこよさも心に残りますよね。

名作は多々あります。

 

・誰がために鐘はなる → 

1978星組。鳳蘭主演。NHKのぶつ切りのしか見ていなく、宙組を見て全体的な流れがわかったという感じです。

鳳蘭版の方は戦後の雰囲気がありました。

負傷したジョーダンが一人残るという時。マリアを呼んで「一緒には行けない」といいます。

「君が行ってくれれば僕も行くというわけだ・・・別れるんじゃないからさようならは言わないよ」のセリフで涙腺が緩み、アウグスティンが武器を置いて

「じゃああばよ・・ロベルト」

「さようならアウグスティン・あの・・坊主頭をよろしく頼むよ」

「チキショウ!戦争なんか下らねえ!あばよ!ロベルト!」

この「戦争なんか下らねえ!」のセリフで拍手が起こるんですけど宙組版では拍手は起こらず。また、最も名場面だったジョーダンが意識を失いそうになるシーンは、床にそのまま座り込んで銃を構えていました。

「来たな・・ようし。気を失って倒れるまで撃ち続けてやるぞ」で幕。

これが宙組版ではへんてこな台の上に乗っかって独白がセリフになり・・という改悪ぶり。木村信司には頭に来ました。

元々初演当時も専科ばかり出演していた作品を21世紀に上演するには無理があったような気がします。アンセルモの美吉左久子、パブロの沖ゆき子、ラファエルの洋ゆり、アウグスティンの但馬久美、ローサの高宮沙千、大路三千緒のピラールは誰も真似できませんでした。

 

柴田作品で私が実際に見て秀作であったと感じた作品は

・仮面のロマネスク → 

1997年。高嶺ふぶきのさよなら公演でした。当時は専門家によりラクロの「危険な関係」を舞台化したにしては綺麗すぎるとの評が相次いでいましたけど、今思うとヴァルモンとメルトゥィユの役は高嶺ふぶきと花總まりにぴったりの作品であり、他の人がどんなに頑張っても追いつけないものと思います。

それまで実力派の杜けあきや美しさと歌唱力の一路真輝に比べると、イマイチ個性がないように見えていた高嶺ふぶきの「色悪」ぶりを引き出したという点で素晴らしいんですよね。

ここの名セリフは「彼女を捨てればいいんだろう!」というヴァルモンです。

・黒い瞳 → これは1998年の月組で風花舞のさよなら公演でした。名場面としてニコライとプガチョフの語らいの場面で、正統派の真琴つばさと野性的な紫吹淳の個性が際立ち、また戦争から捉えられていくプガチョフの何ともいえない哀愁が素晴らしかったです。

「よう・・先生・・・先生!」と言って処刑されるプガチョフには涙を誘われます。

また、千紘れいか演じるエカテリーナ女王はヒロインの風花を食ってしまう程の実力を見せつけました。それよりなによりも不思議だったのがロシアでヒロインがあまりにも薄着だった事で(汗)

・凱旋門 → 2000年。映画を見た事がなくて当時は「月影瞳がイングリッド・バーグマンの役をやるの?」と驚きました。ショーもつまらなくて、1000days劇場ではあまりお客が入らなかった記憶があります。

全体的に暗いトーンでしたけど、それぞれのサブキャラが生かされていたような気がします。とはいえ、実は香寿たつきが演じたボリスがあまり印象がないので2018年に再演されるのが心配です。またあの作品はフィナーレがついていて、それが本当に綺麗だったんですが、多分、今回はカットかなと。当時、大劇場版と東京ではラストシーンがちょっと変わっていたと思います。歴史好きな人にはお勧め。

ここで面白かったのはパリから追放されたラヴィクが戻ってみるとジョアンがしっかり浮気をしていた事で、いきなり「あなたが悪いのよ。あなたのせいです」って言うんです。このセリフには思わずラヴィックと一緒に「え?」になりました。

 

・花の業平 →2001年。宝塚大劇場。年末の東京公演では香寿たつきお披露目。このポスターには匠ひびきが入っていますが実際には休演でした。 2001年。星組で上演。この作品には専科として次期トップの香寿たつきと実質二番手の絵馬緒ゆう、そして専科の初風緑や、組替え組の安蘭けいに鳴海じゅんなどが入り、星組を見ているような気があまりしなかった事を覚えています。

ただ、オープニングの華やかな感じと業平と高子の燃えるような恋愛が当時のトップコンビ、稔幸と星奈優里にピッタリで、香寿たつきの基経の悪役ぶりがものすごくてベストキャスティングでした。

それだけに東京のお披露目で香寿たつきが業平になると発表されたときはがっかりしてしまったし、やっぱり全体的に大劇場版には及ばないと思いました。

 

・あかねさす紫の花→ 1976年初演。当時は大海人皇子が安奈淳で中大兄皇子が榛名由梨でした。

1995年に雪組で再演。一路真輝が大海人皇子で高嶺ふぶきと轟悠が役代わりで中大兄皇子でした。

再演率が高い作品ですが、個人的には2002年の博多座花組版が好きです。

内容がまとまっているというか、だらだら感がないというか。

ここでの名台詞は

中大兄皇子「狂ったか大海!」でしょうね。

 

 

・ガラスの風景 → 2002年星組。香寿たつきさよなら公演。

不思議な雰囲気に包まれた作品です。謝珠栄先生の色が濃くて柴田作品とは思えないですけど、主人公が一癖あったり女性側が既婚者だったり。まあ、その辺りが柴田っぽい?でもまさか探偵物で来るとは思わなかったので異色作です。

 

他にも「川霧の橋」「うたかたの恋」「琥珀色の雨にぬれて」「忠臣蔵」などの名作があります。 

 

 


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