1964年生まれ。1988年入団。デビュー作は1994年花組「サラン・愛」
大劇場デビューは1996年月組「プレスティージュ」
最近はすっかり「ファントム」「雨にうたえば」の演出で知られるようになりましたが、一応ショー作家です。
なぜ中村のサブタイトルに「僕は赤い靴を持っている」と書いたかといえば、この先生の作品はひたすら「踊りまくる」ことがテーマだからです。一旦、赤い靴を履いた娘が止まれない様に、それぐらい踊らせてしまう・・
そこにテーマもストーリーもへったくれもない。曲がよくて踊ればみんな楽しいんだよって感じのショーなので、見ている時は楽しいけどその後印象に残らない。
最初の頃はロケットを最初と終わりに2度入れて自分なりのアピールをしていたようですが、最近はそれをやめてるみたい。
・プレスティージュ(1996年月組)
テーマ曲が印象的だったけど、よくよく見ると、色々なショーからの切り抜きが目立ちました。特に「パパラギ」や「ノバ・ボサ」とかね。それでもデビュー作品としてはまとまっていたと思います。
・ラ・ヴィール(1998年雪組)
前年の轟悠お披露目の「レ・シェルバン」に続き続投。「レ・シェルバン」はひどい作品でしたが「ラ・ヴィール」はまだまし?1場面1場面が長く、轟悠VSその他大勢という図式で進んでいくショーで、後半になればなるほど群舞で踊りまくる。ロックの後にテンプレーション?ジャズが長い等々、見ててだれるシーンもあり。
その後、花組の「ザ・ビューティーズ」(2000年)と宙組の「ダンシング・スピリット」(2001年)があるけど、どちらも記憶なしというか、中村作品ってショーの中の目玉がないんですよね。そういう意味では酒井澄夫とよく似ている部分があると思います。
・LUCKY STAR(2002年星組)
綺麗な黄色の星がついている衣装が印象的で、とにかくいい曲に乗って最初から最後まで踊りまくるというショーで、さすがの香寿たつきもフィナーレの頃には大階段を上がれない程疲労していたとか。さもありなんと思うショーです。
ここでは彩輝直がキラリと光る事で、あんな派手な衣装が似合っているのはやっぱり彩輝のみって事ですね。宝塚的なスターでした。香寿たつきはやっぱり職人でしたし、夢輝のあはせっかくの見せ場が途中でぶつりと途切れてる感じでファンとして不満だらけ。
それからのショーも全部見ているんだけどあまり記憶に残ってないのです。スカステで放送しても録画していないという事は好きじゃなかったのかなと。
(2010年月組「Rhapsodic Moon」
花組「ラブ・シンフォニー」(2012年雪組「Shining Rhythm!』・・・あまり・・・記憶なし。2013年月組Fantastic Energy!』は北翔海莉ばっかり一生懸命に踊っていて怒った記憶が。
ただ2014年雪組「MY DREAM TAKARAUKA」はこれまでのただ躍らせるという傾向から少し「普通」化したというか、ちゃんと壮一帆のさよならに合わせて作られていて感動しました。
また2015年花組「Melodia -熱く美しき旋律」も明日海りおが本当に頑張って踊っていて・・・いや、やっぱり最後の黒燕尾がサウンドオブ・ミュージックの曲が一番よかったです。これぞ明日海りおって感じでしたよね。
2017年雪組「Dramatic “S”!』は大劇場で見た時はそれほど面白いと思わなかったのに、全ツで見たらめちゃくちゃ面白くて、トップが変わるだけでこんなにショーも変わるのかと驚いた記憶があります。ダンスだけでなく「歌唱力」にも力を入れているという事ですよね。
1969年生まれ。1991年入団。1997年月組「NON-STOP」でバウデビュー。
これは久世星佳のさよなら公演の一つで最初から世界観がよその演出家と違って観客目線だなと感じた覚えがあります。真っ白の衣装が大好きで暫く多用してましたよね。
小さい頃から宝塚を見てて多分ヅカの歴史に詳しいし、宝塚とはどんなものかよくわかっていると思います。木村信司や植田景子が宝塚は自己主張の場とする一方で、藤井大介は「宝塚は晴れの日のお祭り」だと言っています。
直近は2018年雪組「Gato Bonito!! ~ガート・ボニート、美しい猫のような男〜』
90年代デビューの演出家が次々失速していく中で藤井大介のみが、今も昔も変わらずヒット作を出しているので、当然歌劇団としてはさよなら公演、お披露目公演、全ツにコンサートとあれもこれも「藤井頼り」になってしまい、最近はかなり息切れしているような気がします。それでも藤井大介以上のショー作家がいない限りは走り続けなくてはならず、いつか披露しきって枯渇するんじゃないかと心配しています。
藤井大介作品の特徴は、初期においては白い衣装。なんでここまで白に拘る?っていうくらい白が好き。それと必ずANJU振付BLシーンが出てくる。過去作品へのオマージュも強い。トップスターのイメージを具現化するのが上手な所です。
あまりにもその作品数が多いので私が見た限りで紹介しますけど。
まずバウでは1999年月組「から騒ぎ」で、初風緑の単独主演作品としてめちゃくちゃ面白い作品でした。
2000年に大劇場デビュー宙組「GLORIOUS」を発表しますが、これは姿月あさとのさよなら公演。ゴスペルを中心に非常に明るくて元気なショーでした。下級生がマイク1本を歌って繋いでいくシーンもあり、目新しさもあったのですが、個人的にはうるさくてうるさくて。騒音にしか聞こえない。
騒音にしか聞こえなかったショーと言えば、2013年雪組「CONGRATULATIONS 宝塚!!』もあり、時々こういうポカをやるというか、若いんだなあと思いつつ、お年寄りも見るんだよ・・・と心の中で思ってます。
2001年星組「イーハトーブ夢」は藤井作品の中でも名作中の名作であり、夢輝のあや柚希礼音などのキャラとストーリーが一体となり、恐ろしく感動を呼びました。今でも日本青年館の廊下でぼーーっとしてしまった事を思い出します。
2002年花組「Cocktail―カクテル―」は匠ひびきのさよなら公演でした。ショーの中にサザンや長渕剛が出てきて驚き。今じゃ初心者向けに見せるお手本みたいなショーです。
2003年雪組「JOYFUL」は朝海ひかるのお披露目公演で、クラシックとゴスペルの融合で盛り上げ方が上手で特にフィナーレの朝海と舞風の結婚式のようなシーンが大好きです。
この年、樹里咲穂のコンサート「JUBILEE-S」これはありがたい事に最前列で見る事が出来たのですが、藤井大介はそもそもスターの名前やキャラをもじる作品が得意なんだと思った最初の作品です。それは後に2012年星組「REON」でピークかなと思うのですが。
2007年宙組「FANTASISTA」は大和悠河のお披露目公演。星とか宙とか宇宙系に強い作家でもあります。
2008年月組「Apasionado!!(アパショナード)」は正直、瀬奈じゅんより大空祐飛版の方が好きで・・・やっぱり娘役不在ってショーに影響があるのかと思いました。
ただ2011年星組「ノバ・ボサ・ノバ」で、やっぱりこれは草野先生演出の方が好きです。藤井先生だとこれはもう南米の香りがしないんですよね。2014年の「TAKARAZUKA花詩集100」も実際の花詩集を見ているわけではないけど、それを超えてはいないなと思ってしまうんですね。作りが平凡というか、藤井色を出し過ぎというか。どこかで個性を出そうとしてそれと過去作品がマッチングしないという部分もあるんです。
近年の傑作は2012年花組「CONGA!」でこれは本当にすごいショーでしたね。熱気があふれていてこれぞ藤井大介という感じです。
また同じ年の星組「Étoile de TAKARAZUKA(エトワール ド タカラヅカ)」も正座をテーマに非常によくまとまって、音楽もダンスも素晴らしい作品でした。過去作品のメドレーも楽しかったですよね。
2014年宙組「PHOENIX宝塚!! -蘇る愛」もテーマ曲の歌詞が凰稀かなめの生き方そのもので、かなり共感した記憶があります。
でも2016年宙組「HOT EYES!!」は80年代歌謡曲でジャニーズのノリで楽しませてくれました。本当に今でも一番好きなショーかもしれないなあ。でも花組の「SXCITER」に似てなくもないですけど。
だけど、一方で2015年星組「DEAR DIAMOND」はお気に入り柚希礼音のさよなら公演あというのに、見事にアイデアが枯渇した感じだし、2016年月組「FOREVER LOVE」も藤井作品らしくなかったし、2017年花組「SANTE」に至っては「カクテルの二番煎じ」のようで、ああついにアイデアが・・・と。
もうあまり働かせないでほしい。もうちょっと時間をかけてショーをつくる環境を与えて欲しいなと思う今日この頃です。
再演率がめちゃくちゃ高いのですが、安売りしなくてもいいのにと思います。