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韓国史劇風小説「天皇の母」65(フィクションでした)

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「皇太子様、あるいは皇后陛下から直接言葉を頂いたらあるいは・・」

こんな言葉が雑誌に載った。

キャリアウーマンの道を着々と歩み始めているマサコさんを諦めきれない皇太子。

でも直接プロポーズなりお願いがあればあるいは・・・という思わせぶりな記事だ。

「え?オワダさんってまたお妃候補にあがってるの?」

外務省の北米2課では、この記事を読むなりひそひそとささやき声が

あちらこちらから聞こえてくる。

「だってあの人、結婚したくないって言ってるじゃないの」

「そうそう、あんな家には行かないとか言ってたのに・・・まだお妃候補って」

「皇太子があきらめきれないんだろ」

「もはやストーカーよね」

「でも、あいつにストーカーする奴なんているか?俺は御免だなあ」

「蓼食う虫も好き好きよ。本当の彼女を知らないから結婚したいと思えるの」

「でも、本当に皇太子妃になったら目上だよ」

「あーあ、頭下げなきゃいけないのか・・・・」

「頭下げてでも北米2課から出て行ってくれるならありがたい。皇太子頑張れ」

「北米2課というより外務省からでしょ」

「そうそう、何かって言うとすぐに「おとうさま」を持ち出すからなあ」

マサコがトイレから戻ってきたので、みんなは一斉にばらけた。

「仕事しないでダベリングしてていいの?」

マサコはにやりと笑いながら言った。

「そうよね」と答えながら(30分ごとにトイレに行ってるそっちはどーよ)と

思っていたが口には出さない。

オワダマサコに手を出すとあとからとんでもない「しかえし」が来るという

もっぱらの噂だった。

例の不倫のカレシもイラクへ飛ばされてしまったし。

 

「あの・・・オワダさん。また皇太子妃候補にあがってるのね」

恐る恐る聞いてみる。するとマサコは得意そうに笑った。

「そうなの。何でかしらねーーお断りしているのにね」

「お断りしているの?」

「ええ。だって興味ないもの」

そのわりには、本当に嬉しそうだし、このところのマサコの専横ぶりを

みていると、もしかして本気で皇太子妃になろうとしているのかも。

「でも結婚したい気持ちはあるんでしょ?」

「そりゃあ。結婚って一種のステイタスじゃない?一生独身の負け犬には

なりたくないわ」

負け犬の遠吠え・・・・かあ・・・最近流行の言葉だ。

「じゃあ、結婚しても外務省は辞めないの?」

「うーん・・辞めないと思う。だってこの仕事は天職だし」

どこから来るんだろう・・・その自信。ああ、親か。

その時は何となく苦笑いしていた同僚達も、やがて「お妃候補」が本格化

しているとみおるや、みな彼女には近寄らないようになった。

 

週刊誌や雑誌にはまた

「宮内庁長官が直接オワダ氏に会ってマサコさんを正式なお妃候補として

考えて欲しい」とお願いに行ったと書かれた。

「マサコに言ってみますがお断りするかもしれません」とオワダ氏は答えたと。

「マサコは結婚そのものが考えられないのです」とも。

フジモリが直接ヒサシに会った事はすぐに天皇・皇后の耳にも入った。

「一体これはどういう事でしょうか」

皇后の厳しい問いにフジモリは汗を拭きながら答えるしかなかった。

「はい。皇太子殿下の強いご意向があり、オワダさんをもう一度お妃候補に

して正式に申し込みを」

「聞いてない」

天皇は静かに言った。

「聞いてないよ。どうして私の知らない所で話が進むのか」

「お話していないという事はないと思いますが・・・」

「フジモリは私が聞き違えたとか、聞いていたのに忘れたとか・・思っているの?」

「いえ、決してそのような事は。しかし陛下。皇太子様のご遺志は強く

何が何でもオワダさんでなければ嫌だとおっしゃり、それを聞いた宮内庁の

職員が色々根回しを始めているのです・・・」

「何を人事のように」

皇后はさらに厳しい顔つきになった。

「オワダ家に直接行ってお願いしたのは長官であると、ここに書いてあるでしょう」

「はあ・・・やむにやまれず。この件に関しては外務省が深く関わっており

ヤナギヤ氏なども動いているようで私としては逆らうわけにはいかず・・・

そもそも殿下のご遺志が」

「そんなに彼女に執着しているのですか」

皇后はため息をついた。

「はい。もし、ここで変に両陛下が反対を唱えたりしたらどんなスキャンダルが

起こるかわかりません。これまた噂ですが、皇太子殿下とマサコさんはその・・・

すでに・・・というような話もありまして。それを知ったオワダ氏が非常に立腹

しているとの情報も」

「何だって!」

天皇は声を荒げた。

「これじゃまるで美人局ではないか。仮にも皇太子の結婚だぞ。それを

こんな風に既成事実を積み上げるような、脅すような形で進んでいいものか」

「あの・・陛下はチッソのお孫さんという事でオワダさんはふさわしくないと

お考えですね。でもチッソの孫であるという事は今時の結婚では障害には

ならないのではないかと。法的に。むしろそのような箏で反対なさると

差別であると国民から言われかねません」

「オワダ家は3代前が不肖であると聞いている」

「それも理由になりません。戦後、身分制度はなくなり日本人は誰もが家柄などを

気にせずに結婚する自由を得たのです。その象徴的な例が・・恐れながら

皇后陛下で」

皇后は絶句し、思わず椅子に座り込んだ。

「フジモリ、皇后をたばかるのか」

「とんでもないことでございます。私達国民はみなあの時のショウダミチコさん

の皇室入りに大賛成いたしました。時代が変わったと。華族制度がなくなり

皇室に民間妃が入ることで「法の下の平等」が実現されたのですから」

いつの間にかフジモリは地雷を踏んでいたようだった。

天皇も皇后もそれきり貝のように口を閉ざしてしまったからである。

 

一方で水戸の有料老人ホームに暮らすヒサシの両親は、息子達と暮らせない

ことに不満を抱きつつも、孫たちがみな高学歴でキャリアの道を選んでいる

ことに非常な満足を得ていた。

これこそが「恨」をはらすという事なのではないか。

貧しい家の中で必死に勉強をさせてきた子供達。そして見事にみな東大に

入り、しかもヒサシの娘は皇太子妃候補にすらなっている。

しかし、オワダ家のルーツが何であるかと尋ねられたら、息子は何と答える

のだろうか。新潟には墓すらまともにない。

この先、誰かが建ててくれるのだろうか。

一抹の不安がよぎる。もし、オワダ家が純粋な日本人でないとわかったら。

いや、そうなったら同胞の力を借りればいい。

日本にはすねに傷持つ「新日本人」が多々いるのだから。

 


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