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韓国史劇風小説『天皇の母」67(フィクションだって)

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1992年の10月は天皇・皇后にとって忙殺される月だった。

山形国体の開会式に出席の後はいよいよ中国訪問が待っている。

日々の忙しさにただ身を任せているような状態だった。

このチャンスを逃してはならなかった。

皇太子は未だに両親や皇族方が彼女との結婚に反対している事を知っていた。

しかし彼にしてみればそれは「偏見」であるし、自分こそがその「偏見を打破して

新しい皇室を作り上げる先鋒にならねばと思っていたのだ。

そんな皇太子に入れ知恵をしたのはヤマシタ東宮侍従長、ヤナギヤもフジモリも

一枚噛んでいた。

彼らは言葉巧みに「プロポーズの事実は絶対にマスコミに知られてはなりません」と

言う。

「先にそんな事がしれたら大騒ぎになりますし、どんな横槍が入るかわかりません。

極秘裏に絶対にわからないような日を選んで結構せねば」

ミステリアスな言葉を言われて皇太子の心は舞い上がった。

「どうすればいいの?」

「3日、両陛下は山形へ行かれます。出発されたら極秘に新浜鴨場にご案内

します。そこにマサコさんも来ていますから、そこでプロポーズをされては

いかがでしょうか」

新浜鴨場。千葉県にある外交官接待施設だ。綺麗な庭もあるし、鴨肉も

食べられるし・・かなりロマンチックな場所だ。

「うん。それでいいよ」

皇太子は二つ返事で承諾した。

 

一方、オワダ邸ではヒサシが考え込んでいた。

彼の頭の中にはただ一つのこと「オワダ家の出自」をどうするか・・・このことだけが

あれやこれやと浮かんでくる。

いずれ早晩、宮内庁はオワダの歴史を調べることになる。

そしたら先祖が不明、墓が不明である事がわかってしまう。

その時、誰の力を利用したらいいのか。

無論、エガシラ家の問題もあった。

チッソ問題の他に家柄の話だ。家柄家柄家柄・・・ああ、全く皇室というやつは。

家柄がなんだ、血筋がなんだ。

頭が悪いくせに。自分で努力もせずに税金で暮らしやがって。

日本一恵まれた家庭じゃないか。絶対に破産しないんだからな。

そんな能天気な脳内お花畑の皇室をズタズタに傷つけてやりたい衝動に

かられる。

俺たちが貧乏のどん底で這い上がるようにして大学を卒業し、家柄や血筋が

利用できないハンデを背負いながら、汚い事までやって今の地位を築いた

というのに、皇族はただ「皇族」というだけで尊敬される。

全く莫迦な話だ。

しかし、その莫迦な家に娘を嫁がせてさえしめば、ヒサシは「皇太子妃の父」

だった。将来は「皇后の父」だ。将来の天皇の義父で祖父に。

それを考えると笑いが止まらない。

先祖が不明なのに、そんな家から皇太子妃が出る。皇后が出る。天皇が

出るのだから。

レイコやセツコの縁談もこれで安泰になる。

オワダ家は社交界に重要なパイプを持ち、それが政治と結びついて

将来は総理大臣以上の絶対権力を持つのだ。

 

「いいか、鴨場に言ったら必ず皇太子はプロポーズするだろう。そしたら

答えは保留しろ。あとはこちらに任せるように」

「じゃあ、結婚しなくていいのね」

「そうじゃない。答えを引き伸ばすだけだ。二つ返事で受けたらいかにも

皇族と結婚したがっているように見えるだろう。この結婚は皇太子が無理に

押し付けたものでなくてはならない。三顧の礼を持ってお前は迎えられるのだ」

「面倒なのね。何だか実感がないわ」

マサコはつまらなそうに答えた。

連日マスコミに追いかけられるのは気分がいいけどうんざりするし、

東宮御所みたいに堅苦しい場所へ行くのも自慢できるけど肩が凝る。

いくらお父様の為とはいえ・・・

「でも結婚したらお父様は私を認めてくれるかしら?男の子でなくても」

それえがただ一つの希望だった。

 

 


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