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柴田 侑宏氏 死去

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いつかは来ることと思っていましたが。

 宝塚歌劇団の元理事で演出家の柴田 侑宏氏が19日に死去

 享年87歳

 

ヅカファンの間では柴田先生は「神」のように崇められています。「ベルサイユのばら」を作った植田紳爾氏よりずっと愛されていると思います。

その理由は、作品の内容がわかりやすく、常に男女の愛憎劇を描いて来たからではないでしょうか。

柴田先生が活躍していた昭和40年から昭和の終わりまでというのは、歌劇団は毎月新作を上演していました。よほどのことでないと「再演」というのはなかったんです。しかも海外ミュージカルも今ほど上演されてはいませんから、座付き作家達が死に物狂いで作品を書いて発表していた時期なんですね。

勿論、その当時は4組しかなかったし、東京に来ない公演もあって海外公演も少なく、今よりスケジュールもゆったりしていた頃。

それでも新作を産み続けるのは並大抵のことではありません。

そこで・・・多分、柴田先生は自分の作品にパターンをつけたと思います。

 復讐物・・バレンシアの熱い花・炎のボレロ・・ヴェネチアの紋章など

 主人公が何かのきっかけで相手に復讐を誓い、なしとげる。

これの変形版が「国家・領地を守る」系の「珈琲カルナバル」「霧のミラノ」「忠臣蔵」など

 悲恋物・・・琥珀色の雨にぬれて・うたかたの恋・凱旋門・情熱のバルセロナ・激情など

 絶対に出会ってはいけない二人が出会い、数日で恋に燃え上がるが結果的に死で幕を閉じる

 主人公が悪役・・・アルジェの男・赤と黒・チェーザレ・ボルジアなど

 性格がねじ曲がっていたり、育ちが悪かったり、そんな男が光の前に左折する話

 日本物・・・新源氏物語・あかねさす紫の花・花の業平・白い朝・川霧の橋など

 山本周五郎への傾倒は激しく「小さな花がひらいた」なども入ります。

 

ある程度のパターンを持っていて、その中に各組のトップをはめ込んでいく。トップの特徴によって役柄が変わるわけですね。

 

でも上記のどれにもはまらない新境地というものありました。

「仮面のロマネスク」「黒い瞳」「ガラスの風景」があります。

 仮面のロマネスク(1997)・・・原作はラクロの「危険な関係」でフランス革命末期、「愛」を取引道具にした男女のいけない関係を描いています。これは雪組の高嶺ふぶきのさよなら公演でしたが、彼女の個性にぴったりで好評でした。

 黒い瞳(1998)・・・演出を謝玉栄氏に依頼した初の作品。プーシキンの「大尉の娘」が原作。個人的にスピード感が出たと思ったし、男同士の友情がよく描かれていたなと思いました。しかし、柴田先生的には演出があまるお気に召さなかったようです。

 ガラスの風景(2002年)・・・これは香寿たつきのさよなら公演でした。珍しく探偵ものだなと思った記憶があります。これもまた主人公が悪の中に入る作品でもあるかもしれませんが、謝先生の演出で幻想的な舞台になりました。

 

このように、柴田先生は晩年まで意欲的に創作に取り組み、最後は柚希礼音のさよなら公演「黒豹のごとく」(2015)まで作品を排出し続けました。

 

きっとヅカファンの間で人気投票したら

 あかねさす紫の花

 バレンシアの熱い花

 琥珀色の雨にぬれて

 うたかたの恋

 黒い瞳

 仮面のロマネスク

 激情

などは常にランク入りするのではないでしょうか。一人の作家の作品でこんなにも歴史に残るものがあるとは素晴らしいです。

私も個人的に「花の業平」「仮面のロマネスク」「黒い瞳」は大好きです。

だからこそ、何でもかんでも全ツに入れないで欲しい、本当に役柄が似合う人にやって欲しいと思っているんですけどね。

「うたかたの恋」「バレンシアの熱い花」などはトップのプレ全ツや、2番手の全ツなどに気軽に使われてしまうことにちょっと嫌な気持ちではあったのですが。

 

今ある宝塚作品のイメージを作り上げたのが柴田先生だといえるでしょう。

そういう意味では、柴田先生を失った宝塚の今後が本当に心配になります。

座付き演出家は「宝塚らしい」とはどういう事なのか、あらためて考えて欲しいと思います。

心からご冥福を祈ります。

 

 


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