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韓国史劇風小説「天皇の母」87(行くよフィクション)

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オオウチタダスとは一体誰なのか・・・ハシモトは慎重に考えねばならないと思った。

元宮内庁職員からの内部告発という事になっている。

けれど、宮内庁に聞いても「内部告発だなんてそんな」と戸惑いの言葉しか返ってこない。

「でも、この間、ソノさんという作家の方から問い合わせがあり、侍従職として正確にお答えしました」

みせてくれた雑誌をハシモトは開いた。

彼女は理数系で統計好きらしい。皇后とは親交があるのだろうか。

ページをめくっていくと、その詳しい内容にハシモトは思わず感嘆のため息をもらした。

「最初からこっち(宮内庁)でもこういう反論を出していれば、皇后は倒れなかったのでは」

「宮内庁はよほどの事がなければ雑誌の記事に反論は・・・言論の自由が阻害されたといわれますし」

「よほどの事だよ!皇后が声を失ったんだ!」

「・・・・結果論で」

戦前の宮内省はよかった。身も心も皇室に仕えようとする人物がたくさんいた。

身を挺して守ろうとした。それはマニュアルでもないし押し付けでもない。

まさに忠実な皇室の藩屏だったのだ。

なのに今は、官庁からの回し者ばかりで、何もかも官僚的というか、融通がきかないというか。

それはそうだろう。今の宮内庁には外務省などという朝敵がわんさかいるのだから。

外務省は本来日本の国益を守る最前線にいなくてはならない省なのに、やれチャイナスクールだ

ロシアンスクールだと左翼系の派閥ばかりつくりおって。

その最前線にいるのがよりによって皇太子妃の父親だ。

その父親の口利きなのか、裏で何が動いているのかわからないが、とにかくそっち方面の職員が

増えた事は事実。

だが、ハシモトはまだそれが一大勢力になりつつある事は知らなかった。

 

ページをめくる。

「皇后ミチコさま批判再考」とタイトルがうってある。

一々検証したのだろうか・・・・

「もともと宵っ張りのご性格なのだが、赤坂御所にしばしばお友達を呼んで深夜までお話をされる。

そこで侍従や女官、仕人や女儒、大膳らはお客様がお帰りになるまでサービスに務める」

「午前1時や2時に「カップラーメンを作って下さいとか林檎をむいてとご下命があったりする」

→ 「天皇が学友を招いたのは6回。皇后はゼロ。そのうち2回は皇太子と秋篠宮。深夜まで合奏などをしました」

宵っ張り?カップラーメン?一体誰の話をしているのか・・・・これは皇后の事ではない。

じゃあ誰の? ハシモトの脳裏に一人の女性の姿が浮かんだ。

東宮職の職員がこぼしていた事・・・・皇太子夫妻は寝る時間が別々で朝食も一緒じゃない。なぜか。皇太子妃は

宵っ張りだから。公務先の居眠り。

「吹上新御所の建設で先帝が愛した自然林が丸坊主になりました。総工費56億円の贅沢御所。

新御所は迎賓棟を有している。来賓用の宿泊室や浴室も備えた部屋」

そこであのハマが信じられない発言「迎賓という意味では迎賓館があるのに御所の中に作る必要はない」

→ 実際に迎賓部分はなし。赤坂御所は規模は小さくなっているが書庫だけは大きくなっている。

  新御所は宮内庁長官を始め関係者がどこに建てる。どんな設計にするなどを決めた。天皇はご存じない。

  そもそも新御所の敷地は先帝が若き頃、ゴルフ場にする為に伐採。しかし盧溝橋事件後、国民と苦楽を共にすると

  いう意味で建設を中止し、木を植えた場所。

「建設中も皇后から次々細かい注文を出され工事関係者は工期の遅れを取り戻すのに大変な思いをした。

建設中に一番熱心だったのは皇后」

→ 天皇・皇后が現場を見たのは数回にとどまっている。

加瀬英明「あの新御所には疑問がある。皇太后と一緒に住むべき」

→ それは規模的に考えられない。侍従職・皇后宮職・皇太后宮職と別々の組織があるのにそれが全部一つの

  オフィスにはいることは出来ない。

「オクジリ島の地震後の見舞いが遅すぎた」

→ 7月12日地震発生・・・・7月27日、閣議決定などを経て見舞い。日帰りで天皇はその後執務。

「皇后は公務で述べる言葉や飾る花までこまごまと指示する」

→ 皇后が公務で読む文書に手を加えたのは一度だけ。飾る花については日本いけばな協会が担当。

  でも皇后は日本の花を大事にされ、アドバイスすることも。

 

要は皇后は天皇を支配し、すべて指図しているといいたいのだろう。

新御所は贅沢で公務でヨーロッパを巡った事も「フルムーン」だと揶揄された。けれど実際のデータでは

贅沢どころか事細かな配慮による質素さが浮かび上がってくる。

確かに皇后は細かい性格だ。完全主義者だ。それは長年見てきたハシモトがよく知っている。

何もそこまでという部分も多々あった。でもそれは全てにおいて自己防衛だったのだ。

民間から皇室に嫁ぎ、守ってくれる人は夫ただ一人という状態において、「妃」という地位を確立するためには

後ろ指をさされないように頑張る必要があった。

それが時にはやりすぎて、側近から苦情として出てくることもあったかもしれない。

それを誰が責められようか・・・・・

皇后より輪をかけて完全主義者なのは実は天皇だ・・・と彼は思った。

(もしかしたら夫婦で演技しているのではないかと思う事もあるなあ)と思う程に。そういう意味では似たもの夫婦で

相性はぴったりなのではないか。

そこまで完璧主義者に育てられた3人の子供達。

そのうち、皇后にとってもっともプレッシャーがきつかった時に生まれたのが皇太子だ。

元々がおっとりした性格だし、先々を考えるはしこさのないヒロノミヤに皇后が随分いらついていた事は知っている。

何に対しても消極的で無関心な部分を悩んでいたことも。

それをかばってきたのはハマオで、皇后荷対して少し感情的なしこりがあるのも確かかもしれない。

だからって・・・・こんな・・・・

側近中の側近にまでこんな事を言われている孤独な二人。

これはあとをひくな・・・・ハシモトは直感でそう思った。

傷ついても跳ね返せるほど二人はもう強くない。そういう年齢はとっくにすぎてしまった。

 

それにしても・・・・こんな事を書くオオウチタダス。

皇室内部について相当な知識を持っているのだろう。加瀬のように「皇后と皇太后が一緒に住むべき」

などと非常識な事を言わないだけに余計に腹がたっている。

(そもそも皇太后が住むのは「大宮御所」と決まっている。今上は皇太后の為を思って環境を変えないように

古い吹上御所をそのまま大宮御所にしたのだ)

しかし、ボロを出している部分。「カップラーメン」と「宵っ張り」「贅沢」キーワードはこの3つのようだ。

もしやこれはとんでもない所からの陰謀なのではないか。

ああでも、どうやって確かめたらいいのだろうか。

まて。いつからこんな風になった?このバッシングが出始めたのは皇太子が結婚すると決まってから。

外務省?まさか・・・・

背中に寒いものがしたたりおちるのを感じた。

  


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