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十五の君へ

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 なんてキザなタイトルでしょうか?

でもこういうキザなタイトルっていつでも打てるわけじゃないし。

春に免じてお許し下さいね。

十五の君へ

きっと今頃、卒業式も終えて、受験も終わって4月までの束の間の平安を満喫している事でしょう。

やっと卒業したよーーと思う一方で、4月からの新しい環境になれるかどうか不安だったりしませんか?

未知なる高校生活。中学校とどう違うんだろう?

お友達が出来るかな、勉強についていけるかな、また大学受験は・・・なんて先々の事まで心配したりして。

十五の春は暖かい空気の中で、ざわざわとする、ちょっと複雑な心境でしょうね。

 

私の十五の春は、真っ暗闇でした。

当時の自分を振り返ってみると、勉強に全く気がむかなかった事。毎日音楽を聴く事やドラマを見る事にばかり

集中して、3年間部活だけを生きがいに送っていた中学生活です。

勉強の仕方もわからなくなりましたし、成績が悪い自分に対してのコンプレックスもひどくて。

だから受験に失敗したのは当然の事なのです。

なのに、落ちてみればやっぱり悔しくて悲しくてどうしようもなくて。

滑り止めの私立の女学院は、広瀬川を見下ろす場所に建っており、私好みの木造の礼拝堂や明治時代からの

校舎を持つ、ロマンチックな建物で、一目で気に入ってしまったんですけど、

さすがにこの時は何もかもが気に入らないといった状況でした。

何で「成績」で人を区別するんだろう。15歳なのに見事にランク付けされて、公立に受かった人達に

見下されて生きる3年間を思った時、本当に絶望のどん底に落とされました。

当時、私が所属していた演劇部の顧問の先生が「お前たちは人より先に挫折を味わった。挫折を知った人間は

強い。これをばねにして次は成功しよう」と言ってくれました。

その時私は、「うん。絶対に3年後は私の方が幸せでいる」と誓ったものです。

それでもね、学校に慣れるのに1年以上かかりました。なんせ私立ですから、さまざまな家庭環境の子たちが

やってくる。私がいた中学は全校生徒500人の小さな学校で、成績は常にナンバー3に入るような所で

生徒達の思想も似たようなものでした。

でも高校では、それこそ下校と同時に化粧して出かけていくような子がたくさん!制服のスカート丈を長くしたり

鞄を潰したり。私にはとうてい理解できない世界でした。

普通に生きているのに「あいつはいい子ぶってる」と言われて苛められて、3年間は孤立してたなあ・・・・・

公立に入った子は入学と同時に大学受験に向かってまっしぐら。

でも私の学校が情操教育に力を入れてくれたおかげで、随分と知らない事を教えて貰いました。

日本史とクリスティが大好きになって、3年間はほぼ毎日本を読んでました。

1年の時、担任の先生に「将来、小説家になりたい」と言ったら、その先生は授業中にこっそり私の机に

「イエスの生涯」(遠藤周作)

「サンダカン8番娼館」

「されど我らが日々」(柴田翔)

を読むようにとメモをくれました。律儀に3冊読みました。キリスト教の学校で聖書に毎日触れていたものの

イマイチ聖書がよくわからなかった私には随分勉強になりましたね。

日本史の先生は東北大学の院からバイトで来てた先生だったんですが、彼が貸してくれた「女性の日本史」

という本で、視野が広がったような気がします。

進学校ではない学校の中で受験の専門家みたいだったその先生のおかげで大学に入れたのかも。

学校の図書室には「別冊太陽」がたくさんあって、明治時代のローブデコルテの女性たちの写真が一杯あって

そういうのを見るのが大好きでした。

明治天皇が亡くなった時に出版された「ご大喪写真帳」を見つけて、その中の妃殿下方の美しさにびっくり。

私が皇室に興味を持ったのはこの写真帳の御蔭かも。

 

そんな風にね、高校の3年間にはその後の人生の岐路になるような経験がたくさん待っています。

世の中の矛盾や理不尽さを感じるのもこのころで、常に苛立ったり怒ったり、感情が不安定になるのも

このころ。

初恋もあるかも・・・・彼の人生が自分の人生のように思う事もあるでしょう。それだけに若すぎると

反対されて傷tくかもしれない。

でも、これからの3年間をどう生きるかが、その後の人生において非常に重要な事なんです。

毎日耳をダンボにして、目を大きく見開いて、世の中の動きや出会う人々の心の動きを感じて下さい。

疑問があったら誰でもいいから質問して答えをみつけて下さい。

哀しくても辛くても絶望しないで回りに助けを求めて下さい。

耐えられないなあ・・・と思ったら「ふぶきの部屋」に愚痴をこぼす。

ただ一つ、やってはいけない事があります。

それは「流される」事です。物事を常にまっすぐに受けると自分が傷つく。だから、取り合わないで流されて

生きよう、「まあいいじゃん」で終わらせよう・・・人はすぐそんな風に思ってしまうものです。

でも、それは40代以降の人達がやる事で10代の仕事ではありません。

大変でも10代は、物事をまっすぐに受け止め考え、そして答えを見つけていくものです。

 

我が家のジュニア君も姫ちゃんも15の春は大変でした。

環境に馴染めずに病気ばかりして。

「何で学校へ行くんだろう」

「何で入学したばかりなのに大学受験の話をするの」

そんな風に悩んだジュニアは部活もやらず、学校へ行く以外はほぼ部屋に閉じこもっていました。

姫は微熱ばかり出して「出席日数が・・・」「成績が悪い」と言われて心配しました。

回りは何もできずおろおろするばかり。

でも二人は多分、乗り越えたんだろうと思います。

まだ、ジュニアは迷いの中にいるのかも。でも彼なりに「親から独立」した気分で頑張っているのかな。

姫は生き生きと休まずに働いています。

二人に15の春を聞いてみても多分「覚えてない」というでしょう。

今が楽しいから・・・・なんだと思います。

だから、今はただ希望を持って春を迎えて下さい。


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