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韓国史劇風小説「天皇の母」107(いつもフィクション)

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マサコのマイペースは相変わらずだった。

「世継ぎ」問題は膠着したまま、そういう話をする暇すらない。

結婚3年目。いい加減に何とかしないと皇統の危機が迫ってくる。しかし、微妙な問題なだけに

天皇も皇后も動こうとしない。

それをいい事にマサコは都合が悪くなると「風邪」を持ち出して公務を休み、職員とは口をきかず部屋に引きこもる。

そうかと思えば、海外高級ブランドのバッグを買いあさってみたりと行動に一貫性がない。

(一体、どういう女なんだ?)

カマクラ長官の心の中には怒りがわきあがり、どうにもならなくなってきていた。

一体、日本のマスコミはどうなっているのか。毎日のように「皇室に入ってやった慈悲深いお妃さま」とマサコを持ち上げ

宮内庁を「旧弊でいじわるな場所」として貶める。

「そもそもお子様に恵まれないのも、皇太子夫妻はその重要性を鑑みているのに、一向に動こうとしない宮内庁に

原因があるのです」

と決めつけるように書く。

何をどう動けというのか?何度もこちらが面会を申し込んでも会いもしないではないか。

二言目には「プライバシー」を盾に「話したくない」とくる。

それでいて「相談できる人が側にいない」と嘆いてみせる。これはもう日本人の感覚とは違う。

まるで・・・・カマクラは唾をごくりとのみこんだ。

「かの国のようだ」と。

事大主義という。つまり世の中強い方につくという意味。自分より弱い者には徹底的にいばりちらずが

強いものには媚びを売り、嘘をついてでも自分をよくみせる。

自分の正当性を主張するためには他人を「悪者」にする。

自分が不幸なのは〇〇のせい・・・と平気で口にして、少しでも機嫌をそこねると相手を徹底的に恨み通す。

これでは将来「国父・国母」となれるのだろうか。

本当にどうして皇太子は・・・・・

とはいえ、カマクラも対策を講じないわけにはいかない。

何とか「可哀想な妃」報道を覆す為に、皇太子妃に誕生日の「単独会見」を申し入れたのだ。

 

その一方で、マサコの誕生日会見の1週間前、アキシノノミヤが誕生日会見を開き、何とそこで

週刊誌等に書かれた「愛人問題」についてきっちりと否定、「不満に思う」と言ったのだった。

これについてはカマクラも断腸の思いだった。

皇族に週刊誌に書かれた内容について釈明せよというのはあまりにも不敬な話だったからだ。

しかし、4月のクリントン大統領晩さん会を欠席した事をきっかけにおきた

「アキシノノミヤはタイに愛人がいる」説は独り歩きをして、もはや都市伝説化しようとしていた。

さらに宮に博士号を与えたタイのタマサート大学を馬鹿にするような記事を書いたり、

挙句には「殿下の女好きには困っている(宮内庁関係者)として語らせる始末。

キコ妃は「大事にしたくない」との意向で、怒り狂う宮をなだめたのであるが、

この年の天皇と皇后のちょっと長めの静養ですら「アキシノノミヤの振舞に陛下が心を痛めている為」と

書かれてしまっては黙っているわけにはいかない。

一度は宮内庁が全否定したのに、まるで無視するかのように出てくる記事。

これは裏で何かが動いているに違いない。アキシノノミヤを嫌う連中(そんな連中がいるのか?)

アキシノノミヤを貶めたい、抹殺したい連中・・・・まるで古代の王家のようではないか。

古くから讒言や告発で命を失ってきた皇族や貴族は多いのだ。

誰もが知っている菅原道真は有名。皇族で言えば大津の皇子、そして長屋王。

それぞれ血筋もよく能力も優れていた。ただ・・・後ろ盾がなかっただけだ。

今のアキシノノミヤ家もすっかり同じだ。外戚であるカワシマ家は学者の家柄で政治的に疎い。

今の時代は、個人の資質が大きくものを言う。

幸いにしてアキシノノミヤ夫妻は誰からも好かれる性格で友人も多い。

しかし・・・・大きな勢力の前では。

そんな時に「自分で言うからいいよ」と宮は言ったのだった。

恐縮しつつカマクラは受け入れた。

その時の宮の悲しそうな顔。ああ・・・殿下は宮内庁に失望しておられる。

我々は殿下をお守り出来ないでいる。しかし、殿下はそんな自分達を責めない。

今の皇室では全てが東宮寄りになりつつある。

両陛下ですら皇太子夫妻に苦言を呈せずにいるのだ。

皇太子はもとよりマサコ妃の味方。考えてみればマサコ妃にはたくさんの味方がいる。

そんな幸せを幸せと感じられない彼女は不幸である。

一方のアキシノノミヤ夫妻は孤立無援状態であった。

カワシマ家は「真実はやがて明らかになる」だから動かず静観せよ・・・との仙人気質だし

味方だったチチブノ宮妃はもういない。せいぜい宮邸を提供されて、来年やっと引っ越しが決まった程度だ。

キク君もヒタチノミヤ夫妻も静観を決め込んでいる。

独身時代の宮のやんちゃぶりが尾を引いているのか・・・そうではない。やはり今上の家庭というものから

一歩引いて「我々は関わる気はない」という姿勢を貫いているのだ。

親の代から続く心理的な確執が、皇室のバランスを崩そうとしている。これではオワダ家の思うつぼではないか。

そんな状態をわかっているのだろう。宮は宮内庁に期待しない。

どこまでも控えめで自分で考えて行動しようとする。

その表れが記者会見だった。

誕生日会見はいつも通り夫妻で揃って行われた。

記者の質問に宮は

「私も週刊誌を読みましたが、根も葉もない女性問題について」とちょっと笑った。

「いろいろ広がってしまったわけですね。そういうことは全くないことですし、火のない所に煙がたったというか

非常に想像力が豊かな人がそういう記事を書いたんだと思いますけれども、

完全に事実と異なる報道がなされたという事には」

ここでアキシノノミヤはちょっと語気を強めた。

「不満を持っています」

記者達は黙った。

アキシノノミヤはさらに、クリントン大統領の晩さん会を欠席してタイへ行った事に関しては

「この件については両陛下の了解を頂いております。またタイへの研究旅行については1年以上前から予定が

組まれておりました。しかし諸般の事情で延期が続き、準備をしてくれたいた人々に迷惑がかかって

しまったという事。それでああいう結果となりました。宮中行事は全ての皇族の日程を考慮しているわけでは

ありません。皇族全体を対象としたものと、特定の皇族に限定した行事がぶつかった場合、後者を優先すべきだと

思います」

とした上で「ただ・・・宮中晩餐を欠席してタイに行った事の是非に対しての記事であれば議論は大切であると思います」

 

キコは黙って聞いていた。

ただただ宮に寄り添っていた。先ほどまで幼いマコやカコに関する話の時はいつものスマイルだったのに

今は、表情を硬くしつつも現場の空気を和ませようと必死な印象だった。

記者達はもうそれ以上突っ込みようがなかった。

見事な受け答えだった。

誰もが罪悪感を背負いつつ、それでも自分達を攻撃しない宮の態度に感服したし、深刻な話を笑いに変えてしまう

ユーモアにも驚いた。

(俺だってさ・・・嫌だけど、企業側の人間でさ)

などとつぶやき、会場を後にする記者もいた。あんな風に清廉潔白な態度でいれたらどんなにいいだろうか。

でも悲しいかな、雇われている身としては上司に「書け」と言われたら書かずにはいられない。

それが悲しき宮仕えなのである。

それでも、真正面から切り込んできたアキシノノムヤの態度は皇族としては異例であったし、誠実で見事な態度だったと

誰もが認めざるを得なかったろう。

 

それでも・・・・・「何で半年前の話を蒸し返すのか。その裏には・・・」と週刊誌はまたも書き立てたのであるが。

 


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