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Channel: ふぶきの部屋
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神様のベレー帽

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 平成生まれの人には悪いけど、私達昭和時代、特に

昭和30年代から40年代生まれの人達というのは、今よりずっとずっと

文化的な面に恵まれていたと思います。

舞台芸術を見てもドラマを見てもレベルが高くてすぐれたものを、選ばずに

見る事が出来た時代。

それというのも、今のようにビデオがない時代、しかも地上波しかない時代。

放送局は何度も繰り返し放送してくれたし、劇場中継、歌舞伎、落語、吉本まで

全部を地上波で流してくれていたのです。

学校から帰って来て何気にテレビをつけたら歌舞伎や落語だった・・なんて事も

しょっちゅう。あの「皇室アルバム」ですら、わざわざ選んで・・というより目に入って

きてたものです。

 

漫画文化も同様です。

少年漫画、少女漫画、週刊・月刊とそりゃあもう読むものが多くて。

少年漫画の発展ばかり伝えられる今日このごろですが、当時の少女漫画の

レベルの高さは現代の漫画家が100人かかっても太刀打ちできるものではありません。

「ポーの一族」も「ベルサイユのばら」も「ガラスの仮面」も「日出処の天子」も

「風と木の詩」も「摩莉と新吾」も「はみだしっ子」もみーんなこの時代に生まれて

いるのです。

私達は漫画で歴史や語学を学び、「生きるとは何か」と考えたと言っても

過言ではないでしょう。

(今の20代に「はみだしっ子」全巻読めと言っても無理だろうな・・・・)

 

そして漫画史に燦然と輝く手塚治虫を知らない30代、40代はいないでしょう。

特に40代から50代の人にとって手塚漫画と手塚アニメは、常に身近にあるもので

日常の「当たり前にテレビをつけたらあるもの。コミックスは必ず本屋に並んで

いるもの」だったのです。

特別にファンじゃなくても「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」「リボンの騎士」「不思議なメルモ」

は誰もが知っているアニメだし、「海のトリトン」は失敗作とはいえ、衝撃的に

かっこいいアニメでした。

私達の世代は、日本におけるアニメと漫画の原点が手塚である事を知っています。

多分、身に染みて知っている世代なんですよね。

その「知っている世代」を小ばかにしたような作品が、昨日の「神様のベレー帽」でした。

 

これは「ブラックジャック創作秘話」と副題がついていて、落ち目の手塚治虫が

雑誌に「書かせてくれ」と頼み込み、秋田書店のチャンピオンが「4回限定で」

と受けた所から始まるわけですが

今、色々問題ありの秋田書店が出てきたのは気の毒としか言いようがないのですが

その編集者・大島優子が演じた「手塚作品を知らない編集者」という存在が

まず許せないわけです。

今の漫画に比べると手塚の絵はちょっと古臭いし、内容も難しいかもしれないけど

漫画雑誌の編集者が「手塚?はあ?知りません。読んだことないし」なんてふざけても

言えるはずがない。(大島の本当に「本嫌い」風演技はよかったけど)

しかもタイムスリップして手塚の編集者になる?

小日向が演じていたブラックジャックもどきの仮装に腹が立ち、大島の

「なんちゃって昭和時代ファッション」に違うだろと突っ込みを入れ、草?の

のんびりした手塚に「かなり違うかも」と思い

しかも話がどんどん「ブラックジャック」から離れて、アニメ制作云々と大島の

編集者としての成長物語になっている。

気が付くと「そもそもどうやってブラックジャックは生まれたの?」って話ですよ。

 

手塚治虫が実は医学部出身で、漫画家にならなければ医者になってたかもしれない

事はファンならずとも知っている事。それに虫のコレクションなど、とにかく

細かくて精密な事が大好きな性格である事も、だれもが承知している事です。

医学の知識を生かして生まれたブラックジャック。

じゃあ、何でブラックジャックは無資格医の設定にしたのか?とか、何で法外な

医療費をとるのかとか、ピノコのモデルは誰?とか・・そういう事を視聴者は

見たかったんだと思います。

 

特に反発を招きそうなのが大島優子演じた編集者。

(彼女に罪はないのですが)

出版社に勤めているのにあのへたれっぷりは昭和時代を生きた人から見ると

「甘えんなよ」の一言 

誰もあんたの心の成長を見たいとは言ってない。タイトルは「神様のベレー帽」

じゃないのーー だったらもう少し佐藤浩市演じる編集長との心の交流を

描くべきだったんじゃないのか?間に大島が入る事でぼやけてしまいました。

 

「あまちゃん」がうけるのはなぜか?

それは80年代アイドル全盛期を知っているクドカンの、細かいネタの御蔭です。

私達は「あまちゃん」を見る度に「ああ、そういう事あったあった」と懐かしみ、

小ネタにぷぷっと笑い、「知ってる人しか知らない」ネタを知ってる事にちょっと

得意になったりね。

ましてや第二次手塚治虫ブームを作った「ブラックジャック」についてなら

きっと私達の方がドラマ制作陣より知っているかもしれない。

にも関わらずあの内容の薄さと言ったら。

昭和生まれを馬鹿にしているのか?それともこれは平成生まれ限定ドラマ?

平成生まれには手塚が何であんなに仕事を受けるのか、永遠に理解できないでしょう?

「頭にネタがつまっているから」じゃないの。

ここでやめたらもう仕事が来なくなるかもしれない。世間は自分を忘れてしまう。

そういう恐怖が彼を駆り立てていたんですよ。

「僕の漫画、面白い?」っていちいち聞くのは、自分がまだ世間に認められている事を

確認したいから。

おだてられて木に登るタイプでしょ。でないと落ち込んでうつになっちゃうから。

そういう気持ち、「自分がオンリーワン」が若者には絶対にわからないと思います。

 

結果的に「誰の為に作ったかわからない」ドラマになってしまい。

ネットでは「ジャニーズとAKBの為に作ったドラマ」って言われてますが

それでいいのか?テレビ局 だったら佐藤浩市とか小日向文世とか大物を

使うんじゃないっ 勿体ない。

私達視聴者テレビ局の力関係を見せつけられたくてドラマを見てるんじゃないの。

適材適所でもなく、脚本もいい加減でやっつけで作ったものを見る程暇じゃない。

それは「半沢直樹」が高視聴率をとった事でわかったんじゃないですか?

 


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