今回もやってきましたよーー昔懐かしい少女漫画が。
今回は「ガラスの仮面」の美内すずえを取り上げます。
彼女の作品は膨大で よくぞここまで読み切りを書けたもんだーーと
驚くばかりです。
描いてる時はトランス状態に陥るんだとか。
後に、ちょっと宗教がかって来たのも頷けますよね
発想が豊かでドラマチック。行動する女の子の冒険にはわくわく
させられたものです。
パンドラの秘密 (1972年別マ)
登場人物・・・・エイメ・リーン (表紙)
ストーリー・・・パンドラ島に生まれたエイメは隠すように育てられ、
首にはいつもリボンが巻かれていた。
母いわく「大きくなっても決して人前でこれを外してはいけません。外したら
お前は破滅です」
やがて母が誰かに連れ去られ、エイメは監禁されて死にかかっていた所を
助けられてアメリカ人の養子に。
15歳になりエイメはネロという青年に出会う。さらに予知能力を発揮した為に
疎まれて迫害され、パンドラ島の洞窟に。
そこには見た目が普通ではない人達が生きていた。
エイメはその長であるバルバロイの実の娘であり、彼らを導く巫女だった。
エイメの首のあざはその印。
彼女は能力を身につけて行く。そこにパンドラ島を観光島として開発する
者があらわれ、さらに迫害が増し・・・エイメは最後の力を発揮する。
見た目がどうであれ人間は人間である・・・という痛烈な差別への
メッセージが込められた話です。
「人と違う」事は個性であって欠点ではない。
ありのままを受け入れて共に生きる事が大事。
今では当たり前の思想ですが、70年代当時、まだまだ障害者などに対する
差別が激しかった頃ですから、新鮮に思えたのだと思います。
私はこの漫画を読んですっかり美内すずえにはまり、それから別冊マーガレットを
買うようになり、毎月コミックスをガンガン買い始めた・・・という思い出深い一冊です。
「ジュリエッタの嵐」(昭和48年別マ)
登場人物・・・ジュリエッタ王女(表紙右)
ヘンリー王子(左)
ストーリー・・・ある王国の王女ジュリエッタと血友病の弟、ヘンリー王子。
二人は幸せに暮らしていたが、「黒い狼」という革命家によって
国は滅ぼされ、両親は死刑。祖母と二人は幽閉されたが、命からがら
逃げだし、ある村へたどり着く。
ジュリエッタは髪を切って男の子になりすまし、ヘンリーと共に
村で暮らし始めた。そこに黒い狼が現れ、復讐心と恋心に揺れる。
それを断ち切るようにジュリエッタは弟を連れて真冬の隣国へ亡命。
しかし、拒絶され絶望の中、ヘンリーは死んでしまう。
当時、「血友病」という言葉を知らなくて。
かなり勉強になりました。まるでロマノフ王朝をモデルにしているかのような?
でもジュリエッタの波乱の人生は困難に継ぐ困難で。
とにもかくにもハラハラした記憶が
自分が当たり前に享受していた幸せが、実はとても贅沢な事だったと知る
少女。それでも「以前」を選んで失敗するという過酷な試練物語です。
「みどりの炎」(昭和48年別マ)
登場人物・・・キャロル (表紙)
イザベラ (キャロルの姉)
ストーリー・・・駆け落ちして6年音沙汰なしの姉を訪ねてキャロルはレノアという
町へ。しかし、そこは砂漠化が進むすさみきった街。
姉はやつれはて、義兄は無愛想。
姉が病気になって寝込む。痩せ衰えて行くのに水しか飲まず
やがて「木」になって森に植えられてしまう。
砂漠化した街を救うため、ソロモンという木の一族、その血を
人間に分け与え、人を木にかえて大きな砂嵐から街を守っていたのだ。
秘密を知ったキャロルはソロモンの「花嫁」として生き埋めに。
そこに巨大な砂嵐がやってきて町は崩壊。
あまりにも突拍子のない話に驚き、怖かった記憶があります。
でも今、考えると地球の砂漠化というのは環境問題の中でも大きな課題で
砂に埋もれかかった街を何とか守ろうと、「木」が命を持って人を変えて
いく・・・というのはあながちない話ではないでしょう。
すごいのはこういう考え方を今から40年以上も前に持っていたという事です
「クリスマスの私」(昭和47年別マ)
同時収録されているお話です。
登場人物・・・・・栗子 (表紙)
美英子
ストーリー・・・ケーキ屋の一人娘、栗子は憧れのクリスマスパーティにも行けず
家業の手伝いに大わらわ。
お嬢様の美英子様がクリスマスパーティを開くのに、行けず、ケーキの
配達に。
でも帰りに財布を落とし、美英子様の家に「財布を落としたみたい」と
訪ねて行くと「財布は知らないけどパーティにはでてらっしゃいよ」と
有無を言わさず美英子様のドレスを借りて憧れのクリスマスパーティに。
でも、なぜか少しも楽しくない栗子。
やがてパーティの客が美英子を金持ちだからと表ではいい顔をして
裏では悪口を言っているのを聞いてしまう。
財布を盗んだのは美英子で、本当は裏表のない明るい栗子と仲良しに
なりたかったのだ。
どんな女の子でも一度はゴージャスなクリスマスパーティに憧れるものでは?
大きなツリーのある大広間。ドレスアップした自分。シャンパンとお菓子とプレゼント。
お友達と品よく楽しく豪華なパーティを楽しみたいと庶民の栗子も思うのです。
美英子様と知り合う事で夢がかなった筈なのに、なぜ楽しくないのか。
最終的に栗子は庶民である自分がどんなに幸せか知るのです。
隣の芝生は青く見える・・・というテーマがにじみ出てお勧めです。