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韓国史劇風小説「天皇の母」149(客観的なフィクション)

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前略。

おふくろ、元気ですか?俺は元気でやってます。

毎日、日勤もあれば夜勤もあるけど頑張っています。

制服、やっと体に馴染むようになりました。やっぱり皇宮警察の制服は誇らしい。

これで嫁がいればいうことないだろうな。

制服で合コンに行きたいけど、そうはいかないのが悩みです。

夏には休みをとります。一応、国家公務員だからそういうのはきっちりしてる。

とはいえ・・・今年は帰れるかどうか。

 

と、ここまで書いて俺はペンを置いた。

今時、直筆の手紙なんて古臭いよなと思う。

パソコンで打てば・・メールでもいいか。でも。何となく手紙の方がいいような気がして。

なぜって、手紙ながら書いた文字の裏を読んでくれるような気がするから。

きっとおふくろは俺の字がきれいか汚いかで今の精神状態を判断するだろう。

誤字脱字もチェックされそうだ。

公務員なんだから字を間違ったら恥ずかしいって・・・おふくろの顔が目に浮かぶ。

さすが教師だよなと思いつつ、ちょっとうざいんだけど。

でもいいじゃないか。

おふくろの希望通り公務員になったんだから。しかも警察庁。

皇宮警察だぜ。

警察官僚とはいかなかったけどな。

きっと誇りにしてくれてるよ。そう。きっと。

おふくろの目に浮かぶのは制服姿の俺が颯爽と両陛下の警護をしてる姿。

職場では「先生の息子さんって警察官なんでしょう?すごいわ。警視庁?

それとも官僚?」

するとおふくろは頭を振っていうんだ。

「そんな御大層なもんじゃないのよ。やっと受かったんだもの」

「どこに?」

「皇宮警察」

「皇宮警察?すごい。両陛下の護衛をしているの?」

「まあ・・そうなんじゃないかと思うわ」

「素敵」

とか何とか言われちゃって。そのうち、見合い話あたりを持ちかけられて・・・・

そしたらいいなと思ったり。

何だってこんな妄想を朝からしているんだ?俺。

おふくろには苦労かけたし、こういう形でしか親孝行出来ないけど

俺が実は東宮御所なんだって言ったらなんていうか?

「皇太子殿下の護衛?それはすごいわ」って言うだろうな。

おふくろにとっちゃ両陛下も皇太子も同じに見えるもんな。

 

「おい、今日のビオラコンサート。妃殿下はドタキャンだぜ」

いきなり無線が入って俺はどぎまぎする。

慌てて警護の体制を取り直す。

皇族の警護というのは分刻みだ。

いつ殿下が東宮御所を出発して目的地まで何分・・・それを100メートルごとに

警護して時間を測る。ほんの少しの予定外も許されないのだ。

だからまあ、やりやすいって事もある。

杓子定規な警察官というイメージがあると思うけど、皇宮警察と言うのは

その最たるものだろうと思う。

決められた事を決められた通りにやる。それが一秒も狂わないように見事に

やりとげる。それが仕事なんだ。

 

でも・・・俺がここ。つまり東宮御所に配属されたあたりから事情が変わってきた。

特にひどくなったのはゴールデンウイーク頃かな。

何で長期の休みに皇族が静養に出るか知ってる?

それは御所や東宮御所の使用人に休みをやる為さ。そして御用邸を

預かる人達に仕事を与える為だ。

どこの御用邸だって、皇族が来るっていうからぴかぴかに磨き上げるし

心もこめようってものさ。

そういうわけで、今年のゴールデンウイーク、皇太子夫妻とアイコ様は

那須の御用邸に予定通り入った。

でも、実は御用邸に行くの行かないのって最後までもめたんだよ。

誰がぐずったのか知らないけど、二転三転して予定が変わるから、その度に

俺たちは振り回されてあっちこっちの下見をさせられたってわけ。

で、やっと出てくれてほっとしてたら、今度は一歩も御用邸から出ないと来た。

暇なのはいいさ。俺たちは詰め所でただぼやーーっとしてるだけでいいけど。

だけど上司はそうはいかなかった。

毎日気難しい顔して、誰かと打ち合わせしてはため息ついたり、

必死に電話で話してたり。

そのわけはすぐわかった。

皇太子一家はとにかく予定外の行動ばかりするって事さ。

「今日はお出ましの予定はない」と言っていると、昼ごろ突如、外のレストランに

行くと言い出したり、美術館あたりを予約していればドタキャンする。

スタンバイしてた俺たちは、突如予定が変わるので引き上げたり、慌てて

飛び出したり。

少しは予定通りに行動してくれよ・・・結構きついんだぜ。予定外ってさ。

春の那須はすごく寒い。寒いけど空気は澄んでいるし、緑は一杯だし

俺は好きだな。気分がふさぐって事はないと思う。

でもこの時の皇太子夫妻は終始笑顔がなかったなあ。

喧嘩でもしたんじゃないのか?というくらい、夫婦で離れて歩いてさ。

でも、俺たちにはどうでもいい事だったから、あまり気にもせず、ただただ仕事に

支障が出ないように願っただけ。

でも、那須から帰って来てからも、やたら「予定外」が多くて。

ぶっとんだのは、いきなりみなとまち公園とかいう所に一家で行くって

言い出した時だ。

みなと町公園?どこだ?そりゃ。俺たちは思わず地図を開いた。

都内の、マンションが立ち並ぶ・・・砂場とブランコと滑り台があるだけの

普通の・・・普通すぎる公園だ。

そこに平日の真昼間に行くというんだから、そりゃ驚いたのなんのって。

俺たちは慌てて先導車を出して。でも、目立っちゃいけないというので

普通の車を用意して。

俺には分からなかった。日本一恵まれた地位にいて、広い庭がある人達が

何で普通の公園に行きたいと思うのか。

隣の芝生は青く見えるって事かな。

しょうがない。俺たちは制服を脱ぎ、私服に着替えて。でもイヤホンをして

目立たないように・・・・目立たないように警護した。

それはSPの奴らも同じ。

平日ののどかな住宅街の公園には、いわゆるママ達が子供を連れて

沢山来ていた。

その光景を見た時、正直げげっとなったな。

だって、この一般人を排除するわけにはいかないんだぜ?

付近に住む主婦と子供達という図式は見えたけど、誰一人身元確認したわけじゃ

ない。テロリストが紛れていたってわからない。

もし何かあったら責任は誰に?

身を守ろうにも、日頃の「危機」とは無縁そうな主婦たちを蹴散らす事なんて

俺には。

そんな俺たちのハラハラを後目に、皇太子一家は先導する車に見守られながら

金のアルファードに乗ってお出かけだよ。

公園についたら、挨拶もなくいきなり車を降りて、まっすぐ砂場へ。

妃殿下は最初、アイコ様を抱っこしていたけど、やがて砂場に降ろした。

アイコ様はあの年齢特有なのかな。

ぼやっとして関心があるんだかないんだかわからないような顔をして

砂場のへりにちょこんと座る。

そりゃあ、毎日女官に囲まれていたらぼやっともするかな。

近くで遊ぶ子供達に比べると妙に元気がないような気がした。

いや、そんな事より無防備に近づいてくる子供達を、一体どうしたものかと

俺たちは判断に迷う事ばかり。

やがて、皇太子夫妻だという事がわかった主婦たちは妃殿下に話しかける。

その物怖じしない、おそれをしらない主婦パワーには驚いた。

しかもタメ口だよ。

「可愛い、いくつですか?」

「うちの子は3歳だけど・・・アイコ様は1歳半?おとなしいわ」

とか普通に会話しながら、自分の子供達をアイコ様に近づける。

アイコ様は、誰が寄ってこようと関心がないようにみえたけど、それを妃殿下が

背中を押して、砂場に座らせる。

砂でお尻は汚れたけどお構いなし。普通の子はそれでいいけど

宮様は皇族だよ?いいの?

俺たちは信じられない気持ちで眺めるばかり。

さらに信じられない光景が・・・・・皇太子殿下が缶ビールの蓋を

・・蓋を・・ぷしゃっと開けたんだ。

泡があふれているのをおいしそうに飲み始める皇太子。

うそだろ?皇族が外で飲み食いするなんて。しかも酒だよ?酒。

皇太子がうわばみなのは知ってる。

上司も何人か御相伴にあずかった事があるとかで、

「殿下はいくら飲んでも酔わないぞ。しかも何種類もの酒の味を知ってる」と

そりゃあ羨ましそうに言ってた。

安い酒を週に1度か2度しか飲めない俺たちに比べると、皇太子は日本中から

名酒を集めてくるし、飲み放題だし。

それくらいストレスが多い生活をしているんだろうとは思ったけど

目の前でおいしそうにビールをのむ皇太子を見て

「普通のおっさんだな」と思ってしまった。この不敬な考えを許して下さい。

だってさ。ビールだよ。ビール。皇族ならワインとか思うだろ。普通。

なのに平日の昼間。主婦と子供しかいない場所でビール飲んでるなんて

ホームレスか定年すぎのじいさんだけだぜ。

そんな夫を振り返りもせず、妃殿下は必死に宮様を遊ばせてた。

子供同士だから喧嘩みたいになる事だってある。

本来は俺たちが宮様に不敬な行為をする輩を退けなくてはならない。

でも、今回は赤ちゃんたちだから・・・何も出来ない。

でもさ。正直思ったね。公務はいいの?

っていうか、俺たち、こんな事の為に雇われてるのかな。

こんな事、おふくろには言えないよ。

だっておふくろは日教組の洗礼を受けてる世代の教師だぜ。

おれがこんな所で警護にあたっていると知ったら「税金の無駄遣い」だと

怒るだろうし、息子がどこで働いているかを忘れて

「皇室なんかいらない」と言い出すかもしれない。

 

そういう意味ではちょっとがっかりしたんだけど。

それでも無事に終わってよかったよ。

しかしっ!無事じゃすまなかったんだ。

次の山梨への視察はいきなりの妃殿下ドタキャンで、車は変わるし

先導車のタイプも変わる。

迎える方も椅子の配置やら何やら全てこっちと打ち合わせのしなおしだって

ぶーぶー言ってた。

そうかと思ったらその数日後。

今度は俺たち皇宮警察の音楽隊50周年式典を夫婦でドタキャンときた。

これには俺の上司も怒ったね。

いや、上司だけじゃない。皇宮警察も千代田も赤坂も・・・東宮大夫も

宮内庁長官も怒った。その怒りは下っ端の俺たちにまで伝わってきたほどだ。

だってそうだろ?

皇宮警察は皇族を警護する為の組織。

その音楽隊は儀仗の時に音楽を演奏したりするんだぜ。

国賓が来た時、それらの演奏がなかったらどうするよ?

そんな音楽隊が50周年。

両陛下もお祝いに来て下さるって言うのに、皇太子夫妻が堂々と

「行きませんから」で終わったら・・・・・

じゃあ、それで仕事はないのかと思いきや、違った!

なんと、また、あの、みなとまち公園に行くと言い出した。

もう呆れるのなんのって。

何だってそんなに公園に行きたがるんだ?

何でも妃殿下が宮様に「普通の子供ような経験をさせたい」とお望み

なんだってさ。

東宮侍従長も東宮大夫も怒って反対したけどきかなかったって。

こっちは大慌てさ。

だって、どこから情報がもれたかわからないけど、公園には前回とは

くらべものにならない程のママ達と子供が集まっていたんだから。

俺たちは必死に「妃殿下に近づかないように」って言った。

言ったけどそんなもん、きく人達じゃない。

あっという間に皇太子一家の回りは人だらけ。遠くからみたんじゃ

確認できない程人が。

俺は、とにかく焦って人の波をかきわけて砂場に直行。

「ぎゃーー」って声がしたから何事か?と思ったら・・・・子どもと宮様が

おもちゃをの取り合いをしているじゃないか。

皇族が一般人の子供とおもちゃの取り合い?想像できる?

しかも、その様子を笑ってみながら宮様にかわっておもちゃを取り上げたのは

なんと妃殿下。

見てはいけないものを見てしまったような気がした。

そんなの甘かった。

今度は皇太子が主婦に囲まれて、その子供を抱っこしているじゃないか。

「夜泣きは大変でしょう?うちのアイコもね」と・・・まるで主婦のような

会話をしている皇太子殿下。

これがいわゆる「イクメン」とやらなのか?

皇族としての威厳はおろか、男としてのプライドを捨て去ったような顔だ。

だってそうだろ?

この日だって平日だったんだから。昼間から男が公園にいる筈なく。

両陛下だって公務中だぜ?

いわばそれをサボって公園に遊びに来たわけで。

ああ・・・情けないなと俺は思った。

俺には関係ない。与えられた仕事をするだけさ・・・と思っても

何だか体中の力が抜けていくような疲れが押し寄せたね。

こんな仕事・・・こんな仕事・・・誇りを持って「皇宮警察です」って言えるか?

サボりの片棒なんてさ。

それでもぼやぼやしている暇はなかった。

さすがに人が多くなりすぎて、上司から「即刻退避せよ」の指令が飛んだから。

SPが素早く動いて、皇太子と妃殿下に「お時間です」と耳打ちした。

俺たちjは人をかきわけて道を作った。

皇太子は素直に車に乗ったが、妃殿下と宮様は嫌だとかなんとか。

「まだ遊んでいるのに」とかなんとか。

そんな事言ったってさ。ここは庶民の公園なんだから。

やっとの思いで妃殿下たちを車に乗せた。

 

あの場には沢山の主婦がいてビデオを撮ってた人がいた。

フィルムを取り上げる事だって出来たけど、さすがにそれはなあ。

でも、それがテレビに映ると、妃殿下は激怒した・・・・と言われている。

上司が「そんな事いうなら公園になんか行かなきゃよかったんだよ」と

吐き捨てるように言ってたけど、相当なお叱りだったらしい。

それだけじゃない。砂場にはガラスが撒かれていたそうで。

宮様にけががなかったからいいようなものだけど。

こんな思いは二度と御免だ。

 

おふくろ。

俺は元気です。

やりがいのある仕事について幸せです。

毎日、皇族方の顔を見る事が出来て光栄です。

おふくろもたまにはこちらに来て下さい。

生の制服姿を見せてあげたいです。

ではでは。草々

 

 

 


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