今回は「三原順」をご紹介しましょう。
三原順は「少女漫画」の範疇にはおさまりません。
その独特な世界観と細かな絵と文字の多さについていけなかった人多数。
どの作品をとっても哲学的で思想的。
そして時代を超えて読み継がれるべき作品。
なぜなら、三原の思想は現代の私達にも十分に共感できるものだから。
つまり。彼女の漫画は当時から人間の本質というものについて、深い洞察を
繰り返していたんでしょうね。
自問自答し、漫画に描く・・・・そんな難しさを持った作品群です。
残念ながら三原は亡くなっています。
その死も謎めいているんですが。
「われらはみだしっ子」
(1975年 花とゆめ)
登場人物・・・グレアム(黒髪) → 常に黒しか着ない黒髪・黒い瞳。
右目が見えない。
アンジー(銀髪) → 銀髪に緑の目。松葉づえをついている。
サーニン(茶髪) → ヤマアラシのような茶髪・茶色の目
マックス(金髪) → 一番年下。金髪碧眼
ストーリー・・・喫茶店のマスターに拾われた4人は共に家出人。
グレアムとアンジーはもうすぐ8歳。サーニンは2年半下、マックスは
さらに2か月遅く生まれた。
4人は、自分達だけを愛してくれる「恋人」を探し、待っている。
ある時、マックスの父親が探していると知り、4人は逃げ出す。
「死」をもいとわない程、親元に帰りたくない4人。そこに現れたのは
一人の医師だった・・・彼は「恋人」なのか。
「花とゆめ」でこの話を読んだ時、ラストシーンで号泣しました。
サーニンと一緒になって何度も
「もうマックスやアンジーやグレアムを泣かせたりしないね!
うそついちゃダメだよ!
そんなことしたら ボクあんたをやっつけてやる! ボク強いんだから」
とセリフを言ってました。
当時小学生だった私にマックスがなぜ父親に殺されかけたか、なぜアンジーが
松葉づえでグレアムが片目なのか・・なんて
想像も出来なかったんですが。要するにあの当時からこの漫画は
「親の虐待」を扱っていたという事なんですね
子供と大人の間の感情の温度差が絶妙に表現されています。
これがコミックスになった時、発売日に近くの本屋へ行ったら
なかったんです。
白泉社そのものが本屋さんに認識されていなかったのと、ゆえに
花とゆめコミックスは1書店に1冊しか入荷しなかったのです。
仙台中を探してなくて、一晩泣いて(って・・私、本当に泣きますよね。一晩)
母に頼んで出版社から取り寄せて貰う事にして待つ事1か月
毎日「はみだしっ子まであと何日」と数えていた事を思い出します。
御蔭様で初版本が手に入り、今も大切に保管しているとうわけです。
わりとしつこい性格なのね。私って。
絵柄の可愛らしさ、4人が4人とも違う目の色をして髪の色をして性格さえ違う。
そんな個性にひかれたのかも。
大人として読むと、あらためてその作品世界の深さに驚かされます。
「動物園のオリの中」
登場人物・・・グレアム
アンジー
サーニン
マックス
レディ・ローズ
ストーリー・・・4人は水商売をしているレディ・ローズのアパートに転がり込む。
他人に無関心な街の中で疎外感にさいなまれる4人。
同じアパートに住む子供達とも合わずに喧嘩。
心を慰めたのはサーニンが拾った怪我をした鳥。
レディ・ローズとの生活も少し落ち着いてきた頃、トラブルが起きて
子供達と大喧嘩。アパートはぺちゃくちゃ、鳥はサーニンの背中に
潰されて死んでしまう。
街が動物園として4人がオリに入れられた動物なのか、それとも客なのか・・・
といった皮肉っぽいテーマが語られています。
結局、4人は家出人で捜索されると困るので、いつもアパートに引きこもり。
普通の子供達のように暮らせはしないのです。
その事に寂しさを感じたり、レディ・ローズに気に入られようとしたり、いじらしい。
最後はすっかり人間不信になったグレアム達。
そこにマックスの救いが。
私はラスト、泣いているマックスに見知らぬ女の子がキャンディを一つづつくれる
シーンが一番好きです 涙一杯でにっこり笑うマックスも。
「だから旗ふるの」
登場人物・・・リフェール(アンジー)
ボビー
グレアム
サーニン
マックス
ストーリー・・・グレアムとアンジー、互いに性格が違うけれど下の二人には
気遣いする。その方法を巡って喧嘩し、アンジーは一人、小島へ。
はぐれてしまったアンジーは3人が探しに来てくれるかどうか不安を
抱えつつ、自分の過去を振り返る。
アンジーは実は女優死亡の母の私生児で、従兄弟のボビーの家に預けられて
いたのです。アンジーという名前はフランス語の「アンジュ(天使)」から来てて
母がそう読んでいたから。
地下室に閉じ込められていたサーニンを救いだし、名前を聞かれて
「アンジュ」って答えたのにサーニンは「アンジー」と聞き間違えて今に至ると。
たまに母親が来るのを命をかけて待っていたリフェールが小児麻痺になるシーン
それから母に捨てられた時の悲しさは、今にして思うとひどい話で
でも意外とよくある話でもあるんじゃないかと思い
(病気で歩けなくなった子を捨てるんですよっ 母が)
その傷ついた心を癒したのは仲間の3人だったんですね。
「雪だるまに雪は降る」
登場人物・・・マイケル(サーニン)
エヴァ
ストーリー・・・雪山のロッジでバイトしている4人。そこに被害者意識が強くて
高ピーなエヴァが来る。彼女はわがままを言い続け、それをサーニンは
黙って従う。しかし、本心ではエヴァの母親に
「もっというべきこと、言いたい事をいうべきだ」と思っている。
実はサーニンはロシア人の祖父とイギリス人の父の元に生まれ
祖父と父の仲の悪さに母親が板挟みになっている家庭で育つ。
母はどちらにも逆らわず、自分の中に引きこもりサーニンにすら
優しくする余裕をなくし、やがて自殺。
ショックで言葉がでなくなったサーニンを父親が地下室に閉じ込め
サーニンは窓から入ってくる鳥達に言葉を教わる。そしてアンジーに
救われた。
エヴァは自分が体が弱いから誰も自分の意見に逆らってはいけないといい、
それを聞いている母親はそんな風に産んだ自分を責めて、あえて何も言わずに
エヴァにやりたい放題させている。
サーニンはそんあエヴァの母親に自分の母を重ね、自分の中に引きこもって
無関心になってしまった母を責める、「何も言わないなら雪だるまの方がまし」と。
この作品は、読んだ時は意味がわからなくて。
でも今はわかります
人と言うのは無関心を装う事で自分を守るものです。
でも度がすぎて引きこもり、家族すら見えなくなる危険性も・・・・・
子供の目線から見たらこんな悲しい事はなかったなあと。
「ようきなオバケ」
登場人物・・・ミア(表紙)
オバケ(表紙上の少年)
ミシェール (犬)
ストーリー・・・パパが賭けに買って連れてきた犬のミシェールはミアに
全くなつかない。その夜、ミアの元にオバケが現れ、毎夜
ミア・オバケ・ミシェールと一緒に遊ぶようになる。
しかし、ある日、パパは賭けに負けてミシェールを元の飼い主に
返す事に。
そこに現れたのは。
明るくてメルヘンチックなお話です。オバケが実は元の飼い主だった・・・と
いうオチが何とも愛らしく。おすすめの一品。
「涙のクラウン」
登場人物・・・ジュディ(6歳)
スティーブ(ジュディの兄)
クラウン(うさぎ)
ストーリー
6歳のジュディにとって「おにいちゃま」は生活の全てです。
おにいちゃまはとーーってもジュディちゃんに優しいので。
そのおにいちゃまに彼女が出来たみたい。
ジュディは戸惑い、泣き・・・・
おにいちゃま 「朝ですよジュディちゃん すみやかに起きましょうねジュディちゃん」
ジュディ 「はーい おはよう おにいちゃま」
このシーンが大好きで。なんせ歯磨きからお食事、家に居る時はどんな時でも
おにいちゃまとジュディちゃんは一緒なんです。
まるで我が家のジュニアとヨンジュナのごとく。
でもそんなお兄ちゃんもお年頃になった時の悲しさ。それはうさぎの「目の色」で
表現しているんですよねーー
本当に可愛らしい一品です。