GW,みなさま、いかがお過ごしですか?
飛び石だから休みなんて関係ないわーーと思うけど、でも世の中なーんとなく
連休モードですよね。
さて、今回はまず青池保子を。
青池保子といえば何と言っても「エロイカより愛をこめて」です。
でも私は・・・ちょっとエロイカが苦手だったりして。
あまり読んだ事がなかったのです。
その後、「アルカサルー王城」を通じて、一連の青池作品を読む事になるのですが
そのとっかかりとなった作品です。
「Z」 (昭和54年 花とゆめLaLa)
登場人物・・・Z
エーベルバッハ少佐
ストーリー・・・エーベルバッハ少佐の部下で新人諜報員の「Z」が初仕事から
少しずつ成長していくお話。
「エロイカ」を全く読まずにこの作品を読んだのですが違和感なし。
エーベルバッハ少佐のきびしーい叱責に焦りながら仕事をしていくZが可愛くて
かっこよくて
私、エーベルバッハ少佐は好きだなーーと。
あ、でも今時の子に「NATO」なんて言ってもわからないっか。
そもそも、ドイツが東西に分かれていた事ですら知らないだろうし、ロシアが
その昔「ソ連」と言われ、KGBという秘密警察があった事も。
いわゆる東西冷戦だの諜報活動だーーと言われてもピンとこないでしょうね
いい時代になったもんだと思うべきかしら?
余談ですが「ラスト・タイクーン」に共産主義者が出てきますが。私達の世代にとって
共産主義者といえば「恐怖」の代名詞で
モンローが気軽に会って取っ組み合いをするあんて考えられないのですよ。
そこらへんの雰囲気は「Z」で味わえるかもね。
次は木原敏江です。
木原敏江と言えば「あーらわが殿!」とか「天まであがれ!」とか・・いわゆる
週刊少女マーガレットに連載していた人で。
別マ読者の私には全く縁のない漫画家だったのですが、彼女が
花とゆめLaLaに描いたのがこの作品。以後「摩利と新悟」という名作を生み出すのですが。
そもそも木原作品は非常にミュージカル風です。
池田理代子が古典文学のような格調高さを持っているのに対し、木原敏江は
オペレッタ風というか、紙面に音楽があふれている。
しかも、この当時から「和」へのこだわりが強く和洋折衷的な作風。
プラスドイツ語とドイツ文学に通じているので、読み手は自分がちょこっと
物知りになれたような気分になります
木原作品を読む事でドイツ語と古典に目覚めた人も多いのではないでしょうか。
「日なた日かげへのロマンス」
(1976年 LaLa)
登場人物・・・暁生
こぞ
ストーリー・・・昭和23年軽井沢。施設を抜け出して迷っていた「こぞ」を拾ったのは
暁生。二人は一緒に生活を始める。
こぞは空襲の時に母親を亡くし、それがきっかけで声が出なくなった。
暁生は父がアメリカ人で母は日本人。いとこの風子と駆け落ちして軽井沢へ
きたものの、風子は病気で死んだという過去を持つ。
やがて、伯父が暁生を連れ戻し、アメリカへ返すという。
口のきけないこぞの喜怒哀楽豊かな顔と、暁生の浮世離れした育ちのよさに
すっかりはまったんですが、ラストの衝撃に暫く読み返す事が出来なかった作品です。
「夢幻花伝」(昭和54年 LaLa)
登場人物・・・鬼夜叉(藤若) 表紙
亜火
足利義満
紗王
ストーリー・・・田楽の猿若一座の鬼夜叉は一座と己の出世の為に義満の庇護を受け
花の御所に移り住む。
日々、貴族達の中で苛められつつも必死に頑張る鬼夜叉。
幼馴染で南朝の血を引く亜火とは恋仲だったが、耐え忍ぶ。
しかし、亜火の兄、紗王が南朝を復活させる為に亜火を仲間に引き入れ
義満暗殺をたくらみ、その流れに巻き込まれた鬼夜叉は・・・・
これって、いわゆる鬼夜叉&亜火&義満の三角関係の話なんですよ。
通常、一人の女性を巡って男二人が争うならわかるんですが、美少年一人を
巡って女性と男性が対立する構図というのは非常に珍しい。
珍しいけど違和感がない。
鬼夜叉に対する感情が亜火と義満では性格が違うからでしょうかね
このお話の中に「伊勢物語」が出てきます。
「筒井筒 井筒にかけしまろが丈 老いにけらしな妹見ざるまに」
(あなたが恥ずかしがって家から出てこない間に私はこんなに背が高くなり
立派な男になりました)
「くらべこし 振り分け髪も肩すぎぬ 君ならずして 誰かあぐべき」
(私の髪もこんなに長くなりました。あなた以外に私の髪を上げてくれる人はいません)
この二つの歌が物語の芯となるのですが、「歌」というものがこんなにも
雅なものなのかと初めて知りました
こんな風にさりげなく昔の歌や物語を教えてくれるのも木原作品の特徴。
後々、「紫子」「大江山花伝」が宝塚歌劇で上演されましたが、私としては
「夢幻花伝」の方がずっと歌劇として面白いだろうと思っています。
なんせ私の中で「世阿弥」といえば鬼夜叉=藤若なもんですから。
「愛しき言つくしてよ」(昭和52年 LaLa)
登場人物・・・インゼル虹比古(表紙左)
パウル彩比古
那智(表紙右)
靖子
マクシミリアン
まゆら
ストーリー・・・ババリアの名門・ブラウバッハ家に生まれた双子のインゼルとパウル。
母は日本人で名門舞踊一族「笛吹流」
ドイツで暮らしていたが、ある事がきっかけで母はパウルを連れて日本へ。
母に捨てられたと思ったインゼルは舞で母とパウルに復讐を誓う。
やがて、母と彩比古を連れ出したのが那智の父であると知った
インゼルは・・・・・
この話の中の母・まゆらの「恋」の気持ちが、当時の私には理解できなかったのですが
今ならわかります。
舞踊の家に生まれたまゆらが事故で足をダメにして、その時、慰めてくれたのが
ブラウバッハ家の当主。彼といると安らいでそれを恋を思ってドイツまでついて
いったものの、本当に恋をしたのは弟のマクシミリアンの方だった。
疑いつつも波風立てないように努力していた夫、でも妻と息子が日本へ帰って
しまった事で心のタガが外れてしまい、やがて心中をはかり、そこでマクシミリアンは
インゼルを助ける為に目を失う。
日本に帰ったパウル彩比古は笛吹流の若手舞踊家。
インゼル虹比古はバレエダンサー。
育ちも性格も全く正反対の二人が日本舞踊とバレエを通して対立するというのが
面白かったです。
大元をたどれば二人の母である「まゆら」への3人の男の愛情が主題なんですよね。
隠れた主役のまゆらさん・・・・すごすぎです。
タイトルの「愛しき言つくしてよ」ですが万葉集から
「恋ひ恋ひて逢へるときだに 愛しき言つくしてよ
長くと思はば」
(恋しいあなたにやっと会えたの。優しい言葉のありったけを言って頂戴
二人の仲がいつまでもと思うなら)
から来てます。なんとロマンチックな歌で。
これともう一つ、古事記が出てきます。
かの有名なヤマトタケルの歌
「大和は国のまほろば たたなずく青垣 山ごもれる やまとしうるはし」
が出てきます。
物語の中に和歌や古典をさりげなく取り入れるという手法はありそうで
なかなかなかった事。
そういう意味では木原敏江は非常に稀な才能を持っていたんですよね。
この「愛しき言つくしてよ」もヅカにふさわしい内容だなあ・・・と思いつつ。
誰か書いてくれないかしら?