Quantcast
Channel: ふぶきの部屋
Viewing all articles
Browse latest Browse all 5842

韓国史劇風小説「天皇の母」156(狂気のフィクション)

$
0
0

皇太子は戸惑いを隠せなかった。

春からこっち、マサコの様子がおかしい事には気づいていた。

アイコの発達が遅れている事が原因なのは明白だった。

しかし、彼はどの事がどうしてそこまで妻の心を傷つけているのかが

理解できないのだった。

人と比べなくてもアイコは十分に可愛い娘だ。歩けなくても言葉を話さなくても

表情で感情はわかるし、やがてちゃんと一人で歩くようになるだろうし。

今、いくら心配したってなるようにしかならない事なのに。

「あなたのせいよ」とマサコは言う。

「あなたの血筋のせいよ。皇室は血族結婚ばかりやってきたから血が濃くて

変なのが生まれるの。私のせいじゃないわ」

彼女のこの言葉には皇太子は非常に傷ついたが、言い返す事が出来なかった。

「もう子供は産まないから」ときっぱり言われた時も

「しょうがない」と心底思った。

 

マサコの娘を見る目は生まれた頃とは明らかに違っていた。

生まれたばかりの頃は「自慢」ばかりしていたのに、今では見向きもしない。

でもそれも仕方ないのかなと思う。

せめて自分だけは娘のよい父親でいたいと思う。

だけど、東宮大夫も宮内庁長官も天皇も皇后も「世継ぎ」を期待している。

「世継ぎ」の重要性はわかっているつもりだ。

自分だって皇室に生まれた人間なんだから。

でも、だからといってマサコに出産を強要していいものだろうか?

もう産みたくないと言っているのに。

日常生活の何もかもが妻を傷つけているようだった。

公務で子供に会えば傷つき、「アイコ様のご様子は」と聞かれれば傷つき

そんな事を言った相手をののしる。

「何のつもりであんな事を聞くのかしらね。嫌味なのかしら?私に恨みでもあるの?」

どうして全身総毛立つ程怒りに満ちるのか、皇太子にはさっぱりわからなかったけど

でもとにかく妻は傷つくから、こちらが配慮しなくてはと思った。

3度の公園デビューにも公務を休んで付き合ったし。

でも、その事を注意されれば「母としての私を否定された」と怒る。

里帰りの時に迎えに行ったら「もう来たの?」と言われるし。

どうやったら彼女が昔のように笑ってくれるのかわからない。

だけど、今はとにかく、彼女の言う通りにしないと。

 

アイコの誕生日に親子3人で参内した。

その時も着替えをしながらマサコは

「何で毎年行かなくちゃいけないの?面倒だし無駄だと思う。バカみたい」と

散々いい募り、それでも何とか車に乗り込んで参内した。

アイコの様子には、両親も非常に心配していた。

「御挨拶」が終わると、さっそく「アイコは元気なんだろうね?」と陛下がお尋ねに。

しかし、その言葉がマサコの怒りをあおったのか、マサコは無視した。

うんざりした顔を横に向けて「だから連れて来たんじゃない」とぼそっとつぶやくのを聞いた。

幸いにして天皇には聞こえなかったらしく

「元気ならいいね」とおっしゃった。

マサコが終始ぶすっとした顔をしているので、さすがにそれはまずいと思って

「もうちょっと笑った方がいいよ」と言ったら、余計に眉間にしわをよせて。

翌日には熱を出してしまった。

皇太子はマサコが熱を出した原因が自分ではないかと急に怖くなった。

医師は「ストレスによる帯状疱疹」と診断したからだ。

ストレス。きっと自分が何等かの形で彼女に無理強いをしていたのかもしれない。

皇太子は深く思い悩み、その末に

「暫く公務から外れては」と言った。

その言葉を待ってましたとばかりマサコはようやく「そうね」と言い、自分の誕生日行事も

キャンセルして「病気」を理由に一日中自室に引きこもり始めた。

そんな時に、よりによって宮内庁長官がアキシノノミヤ家について

「皇室の繁栄を考えると3人目のお子様を期待したい」と言った。

無論、この言葉はマサコの心を大きく傷つけた。

「何よ何よ何よ!アイコじゃダメだっていうの?うちの子が障碍児だから

弟夫婦に産めっていうの?何様のつもり?

私は何?私は用無しなの?ひどいひどい!私は騙されたんだわ」

大声を上げて泣き叫ぶ妻に、皇太子も女官長も東宮大夫も何ともしようがなかった。

マサコ自身が「もう子供を産まない」と宣言した以上、どうしても世継ぎが必要な

皇室は弟夫婦に何とかしてもらうのが筋な筈である。

しかし、マサコからみれば、それこそ「自分は用無し」と言われたように感じたのである。

「違うよ。マサコは必要だよ。アイコは僕達の子供じゃないか。内親王だよ。

この子をしっかりと育てて行くのが・・・」

「育てて何になるの?天皇にしてくれるわけ?」

「それは・・・」

「女だからって天皇になれないとか皇位継承権がないとか今時おかしいんじゃないの?

アイコは皇太子の娘でしょう?将来は天皇の娘になるんでしょう?

その子が何で皇太子にも天皇にもなれないのよ。障碍?そんなの差別じゃないの?

皇室って差別主義なの?」

畳み掛けるように矢継早に言われて皇太子はすっかり言葉を失ってしまった。

「女性差別で障害者差別の、古臭くて無駄なことしかしない皇室の・・私とアイコは

犠牲になるんだわ!日本国憲法は男女平等を説いているのに、ここだけ封建社会なのよ!」

 

そして、マサコはアイコ共々東宮御所を出た。

回りが止めるのを聞かずに軽井沢へ。

一瞬にして置いてきぼりを食わされた皇太子は、まるで呆けたように誰もいなくなった

ダイニングルームの椅子に座っていた。

 

 

 

 

 

 

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 5842

Trending Articles