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ふぶきの脚本講座 -ダメだしグスタフ三世 1

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 二度目の観劇をしてまいりました。

「ル・サンク」を買って、舞台が始まる前に読み込み、それを反芻するような感じで

舞台を見ていたので眠らずに済みました。

凰稀かなめには全く罪はありません。

この舞台の失敗は全てにおいて「原田諒」という座付作家にあるのです。

歌劇団様、原田諒さま、こんな作品ばかり排出していると、今に歌劇団は潰れますよ。

 

 場数が多すぎる

「グスタフ三世」は1時間半の舞台の中で19も「場」があります。

しかも、それぞれ「場A」「場B」となっていたりするので、全部で

30場

いくら何でも多すぎるでしょう。

場の数を減らす為に結合したり省略したりするというのは脚本を書く上で

「基本」中の「基本」

1時間半で30も場を見せられてごらんなさい。

しょちゅう、場面転換があるので、テレビのようにつぎはぎだらけになってしまいます。

テレビならそれでもいいけど、舞台でこれをやられると観客は忙しくなり

見てて飽きます。

それでも小池先生みたいに盆やらセリを上手に使って、流れるようにいけばいいけど

(それでもさらさらしすぎてちょっとなーーとは思う)

ただ筋を追う事だけに観客は集中し、楽しめません。

ここは10場くらいに抑えるのが妥当です。

 

 登場人物に個性がない

グスタフ → スウェーデンの王さま

アンカーストレム → グスタフの幼馴染で暗殺者

リリホルン → 近衛士官

ソフィ → デンマークの王女でグスタフの妻

エグモント伯爵夫人 → グスタフの愛人

ニルス → 山賊

テッシン → グスタフの養育係で侍従

クランツ → 悪役

重要人物としてこれだけの人数が必要。

だけど、これだけの人間関係がまるっきりまじりあう事なく最初から最後まで

終わってしまうというのが問題です。

原田氏としては暗殺者のアンカーストレムをグスタフの親友にせざるをえないだろうと

判断したのでしょうが、間違っています。

脚本には「対立の構造」が必要。

で、あれば、ここはアンカーストレムをクランツの側に持ってくるべきでした。

グスタフに拮抗する「悪役」として対峙させる事で物語はふくらみます。

そして理想と現実のはざまで悩むリリホルンが生きてくるのです。

グスタフは女性には淡白であったと言われていますが、宝塚では

それは通用しないので、ここではきちんとソフィとエグモント伯爵夫人との

3角関係を作り上げるべきでした。

庶民代表の「ニルス」は、物語の中で観客の目線になるべきだったと思います。

 

舞台を見てて、正直

「グスタフって嫌な奴だな」と思いました

だって、意地悪な事ばかり言うし、いきなり専制君主になるし、いい子ぶってるし。

それでも魅力的な人物造形にする事は出来たかもしれないけど、それは

役者の力量。

最後ですから、どこまでも「清く正しくかっこいい」王様であるべきでした。

 

 言葉の間違い

歴史物を書く時は

 当時の歴史的な背景

 独特のセリフ回し

 階級制

を知る事が義務付けられます。

これらは宝塚ですから、資料は沢山あるでしょうし、自分で調べる事だって出来る。

なのに

何だってこんなにセリフの間違いが多いんだ?

 1場Aプロローグ

グスタフ : やっつけるんじゃないよ。僕はこの剣でみんなを守ってみせる!

 思わず「みんな」って誰? ここは「この剣で僕の国民を守ってみせる」というべき。

  しかし、啓蒙思想で将来、めちゃくちゃ平和ボケ・・いや、平和主義になるグスタフが

  剣でみんなを守るなんて笑い話だなあと思います。

 

 2場 舞踏会

アンカーストレムの服装が変では?

一応、グスタフは「ハガー伯爵」そしてアンカーストレムもまた貴族です。

だけどアンカーストレムの服装は「従僕」に見えます。

1場でタメ口をきいてたアンカーストレムとグスタフの関係って何?と思った

観客も多いでしょう

オスカルとアンドレがタメ口で許されているのは、それをオスカルが許している背景があるから。

それと一緒に考えてはいけないと思います。

とにかく「王」と「伯爵」という完璧な身分の上下があるにも関わらず、アンカーストレムが

舞踏会で迷いもなく「グスタフ」と呼ぶのは疑問です。

 

ベルジェンヌ ; まさかスウェーデンの皇太子の世を忍ぶ仮の姿とは。

 皇太子じゃなく王太子だよ?

  ちなみにもっとわかりやすいセリフにする方法としては

 「まさかスウェーデンの王太子殿下とは・・・誰も思わないでしょう」が適当では?

 

 3場

ヨハンソン ; テッシン伯爵。いくら皇太子殿下の撫育官とはいえ、大臣閣下にご無礼ですぞ。

 撫育?傅育官の間違いじゃないの?

   撫育 → 可愛がって育てる事

  傅育官 → 身分の高い人に付したがって大切に育てること

ヨハンソンのセリフはテッシンがクランツ達の裏の心を見透かしている事に対して怒っています。

ゆえにここは

「テッシン伯爵。いくら王太子の傅育官だったとはいえ言葉が・・・・」くらいにしとけば。

 

侍従 ; たった今、国王陛下がお隠れあそばされました。

 いきなりの時代劇炸裂。洋物で「おかくれ」(死ぬこと)は使わないでしょう。

  それに、侍従が出てきて喋るというより、鐘がなるとか音楽をいれるかして

  「国王陛下、崩御」と言うのがドラマチックかな。

 

 5場

ニルス ; 生易しいこと言うんじゃねえよ。

 は?意味不明。

これは

キム ; だけど、何だか気が咎めるな。王様の葬儀に向かう連中から金を巻き上げるのは。

     に対しての答えなんですけど、ちょっとおかしいです。

    山賊が「気が咎める」だの「王様の葬儀」だのって難しい言葉を知っているかどうか。

この場合は

キム; だけどちょと悪い気がするな。ここを通る奴はみんな、王様の葬式に行くんだぜ。

    じいちゃんによく言われたっけ。死んだ奴には敬意を表さなきゃいけないって。

ニルス ; あまっちょろい事言ってる場合か。こっちは生活がかかってるんだ。

すっきりしません?

 

 5場B

グスタフ ; 父上の葬儀に間に合わず、申し訳ありません。

ロビーサ ; 仕方ありません。亡き陛下も喜んでおられましょう。こうしてあなたが

        無事に戻ってきてくれたのですから。

 一瞬、「葬儀に間に合わなかった事を喜んでいるのか?」と思ってしまいました。

  へんてこな倒置法を用いているからですね。

 

グスタフ ; 父上の葬儀に間に合わず・・・(泣く)

ロビーサ ; 陛下は病床で、いつも繰り返し繰り返し

       グスタフはどんな事を学んで帰ってくるだろうかと・・おっしゃっていました。

グスタフ ; 母上。

ロビーサ ; これからはあなたがこの国の王。任せましたよ。

 

それと・・・・「ソフィアの入内」という書き方は変じゃないですか?

せめて「輿入れ」にして。「入内」は日本の皇室に嫁ぐ時。

 

 7場A

クランツ ; 国王陛下がご独身というわけにはまいりませんからな。

 「ご独身」?こんな言い方があるんですか?

クランツ ; 国王陛下が独り身というわけにはまいりませんからな。

 

 7場B

ソフィア ; ですが、父上のご命令ですから致し方ありません。わたくしは王家の娘ですから。

 人に対しての会話ではへりくだるのが普通。

ゆえにここは

ソフィア ; 私はデンマーク王家の娘として父の命に従ったまでですわ。

 

 11場A

レオノーラ ; 陛下も王妃様には、いまだ心をお開きにはなっておられないご様子。

         あなた様はデンマークの姫君なのです。

        そこまでお心を掛ける必要はございませぬ」

 わかります?このセリフの回りくどさ、

  「心をお開きになっておられない」

  「心を掛ける」

  意味を間違って使っているような気がします。

 レオノーラの言わんとするところは何となくわかるんですけど、それを言うなら

レオノーラ ; そのように陛下の身を案じていらっしゃるとは。なぜでございましょう。

ソフィア ; 私はスウェーデンの王妃です。

 

 11場B

リリホルン ; 陛下、どうか、我が命に代えて償う事をおゆるし下さい。

グスタフ ; 愚かな事をするな。悪いのはお前ではない。

 まず「じゃあ、一体誰が悪いんだよ」と。

  それと「我が命に代えて償う」なんて回りくどくてわかりにくい言い方されても

  全然心に響かないでしょう。

  リリホルンは父と兄の立場を守る為(?)グスタフを裏切り、良心の呵責に耐えきれず

  自殺しようとしているのです。

リリホルン ; 陛下、私は生きる価値のない人間です。このまま死なせて下さい。

グスタフ ; そなたをそこまで追い詰めたものの正体を暴いてやる。そしてそなたを救ってやろう。

        だから死ぬな。

 

 12場B

テッシン ; このひと月と間というもの、王妃様は夜ごと、

      この聖堂にお籠り遊ばされておいでです。

       ただひたすら陛下のご無事を祈って。

グスタフ ; それはまことか。

テッシン ; どうか王妃様のお気持ちをお分かりになって差し上げて下さい。

 この二重敬語うざいっ なんでも「お」を使えばいいってもんじゃないし、お願い事には

   「どうか」をつければいいってもんじゃないっ

テッシン ; このひと月、王妃様は夜ごと、この聖堂に足を運ばれ、陛下の無事を祈って

       おいででした。

グスタフ ; それはまことか。

テッシン ; はい。本当です。王妃様のお気持ち、陛下ならおわかりですね。

 

        

 

    

 

 

 


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