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韓国史劇風小説「天皇の母」177(崩れ落ちるフィクション)

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母さん、そっちの冬はどうですか?

僕は元気です。

正月休み、ゆっくり帰れなくてごめんなさい。

母さんの雑煮、おいしかったなあ。

東京とはいっても1月2月はひどく寒かったです。

ずっと車寄せに立っていたりすると、母さんの雑煮が懐かしくて。

敬礼している時にすら、そんな事をふいに思い出して。

上司に叱られるんじゃないかとひやひやしました。

 

僕は誇りを持って皇宮警察にいるつもりです。

そりゃあ、キャリア組じゃないから、出世なんて考えちゃいないけど

でも、この制服を着てびしっと立っている時の自分は

こういっちゃなんだけど「かっこいいよな」と思います。

とはいえ、仕事はきついです。

どんな仕事でもそうだと、母さんは言っていましたね。

それはわかるけど、最近は特に「きついな」と思う事が多くて。

僕達の仕事は、自分で考えてはいけない仕事のようです。

常にだれかの支持を仰ぎ、命令系統が正しいかどうか確認し

そして1分1秒の遅れもないように任務を遂行するのです。

少なくとも千代田や赤坂御用地の他の宮家ではそうだといいます。

でも僕がいる場所は。

「待つ」事が仕事です。

ひたすら「待つ」事しか出来ない仕事です。

1月の皇室はとっても忙しいんです。

新年祝賀の儀を始め、いくつもの祭祀、講書始めの儀、歌会始めの儀など

行事が目白押しです。

しかし、ここはまるで火が消えたようになっていました。

時折、殿下が公務に出られる時だけ門は開きます。

それだけです。

・・・と、思っていたら、突如ある日の夕方、妃殿下がお出かけになるというので

慌てました。

何でも六本木で元の上司たちと夕食をとるとかで。

車の手配、各方面への通達。信号操作・・・・僕達は急に慌てて動きだし。

そんなこんなでお出かけになられた妃殿下の帰りは夜中でした。

いつお帰りになるのか。

このまま夜勤に引き継いでいいものか。

もしかしたら朝まで?なんて事を考えながら、ひたすら怒鳴られないように待っているんです。

誰に怒鳴られるですって?

そりゃあ、上司です。

最近のうちの上司はイライラする事が多いらしくて、僕は格好のターゲットになっているようです。

妃殿下がいきなり宮様を連れてドライブに行きたいとおっしゃった時も大騒ぎでした。

母さんは妃殿下を「可哀想な籠の鳥」だと思いますか?

みんなそう思っているんでしょうね。

たまのドライブぐらい・・・って。

でも、国にとって重要な方がいつもいつも「思いつき」で行動されると

正直、僕達は困ります。

しかも、たかがドライブとはいっても、制限時間がないのですからね。

 

予定されていたこともいきなり変更になるので、またもや僕達は

顔色を変えて右往左往します。

最近、一番大変だったのは地方公務のドタキャンでした。

長野スペシャルオリンピックは両殿下にとって非常に大切なものだったと

聞いています。

福祉に造詣の深い皇族にとって、これらの式典への出席は義務。

僕は末端なのでよくわかりませんけど、上司などは

「これがマサコ様の公務復帰の足掛かりになれば」と勢いづいたりしました。

僕達も、間違いがあってはいけないと念には念をいれて警備にあたりました。

けれど・・・待てど暮らせど両殿下は現れないのです。

時間は迫っているし、どうするんだろうと、だんだん血の気が引いて来たころ

いきなり「妃殿下は行かない」と知らされました。

僕は、もう驚いてしまって。

だって出発一時間前ですよ。ここまで来たら普通「取りやめ」はないでしょう?

しかも、急病とかいうならともかく、なんと妃殿下が

宮様をお連れになりたいと言ったのを宮内庁が許さなかったから・・・というものでした。

何でそこまで宮様をお連れになりたいのか僕にはわかりません。

だって長野は冬ですよ。寒いんですよ。

ついこの間まで一家はスキーに行ってたんです。

ああ・・・と僕はそこで思いついてしまいました。

妃殿下は宮様をお連れになる事で、長野スペシャルオリンピック臨席のあと

ご一家で二度目のスキーを楽しみたかったのかなと。

そうでも思わないと僕のような末端のものには理解できません。

でも上司は青ざめて「長野にどう言い訳をするんだ」と怒っていました。

 

母さんは新聞や雑誌をよく読むでしょう?

だからこの時の中止についてのマスコミの書いた文章は

こんな感じではありませんでしたか。

「「適応障害」と診断され療養中のマサコさまは

最近は回復傾向にあり、今回の訪問を強く希望。

実現すれば1年3か月ぶりの地方公務となり、SOの競技を観戦される

予定だった。

しかし、宮内庁によると医師団は

「地方に異動したうえで公務にあたるのは負担が大きすぎる」と

当初から懸念しており、同日午前、訪問は時期尚早と最終的に判断。

ご夫妻も同意された。

発熱やほかの病気など、体調の急変が原因ではないという」

「マサコ様については医師団が「移動を伴う地方公務は負担が大きい」として

慎重な姿勢を示し、出発日まで体調を見極めていた。

東宮大夫によると、マサコ様は

「これまで大切にしてきた障害者の行事でもあり、なるべく早く公務に復帰したい」として

出席の気持ちが強かったが、ここ数日間「お疲れの状態」が続いており、医師団は

欠席が妥当と判断した。

 

医師団というのがどこにいるのか僕はわかりません。

でも僕が知る限り、妃殿下はつい1週間前まで楽しくスキーをしていたのであり

その後も「お疲れ」に成程、外には出られなかったと断言します。

 

結果的に誰が叱られたかといえば、気の毒な東宮大夫です。

「回りに迷惑をかけた」と宮内庁長官からお叱りを受けたのです。

そしてそのお叱りは当然のごとく、末端の僕達にも降りてきて

「もっと早く出欠を把握できなかったのか」と、ありとあらゆるところから

文句を言われてしまいました。

モチベーションが下がって行くのを肌で感じる今日このごろです。

目出度い筈の殿下のお誕生日もはらはらのしどうしでした。

皇居に参内するのは3人なのか1人なのか、

お祝いにかけつけた人達が帰る頃には顔がくらくなっているのが気になったり

両陛下のお祝いが急きょなくなったり。

何もかも妃殿下の「お気のすむまま」になってしまいます。

 

3月に入ってまた奇妙な事が起きました。

僕達は江戸川のスケートリンクについていくように言われました。

宮様への教育にスケートがいいと思われたかなんだかで

江戸川区のスケートリンクを貸し切るんです。

ええ、まだシーズン中で一般のお客も多い時期ではありますが

皇族だから仕方ないと誰もが僕達の姿をみると、そそくさと消えていきます。

でも、三月の始めだったと思いますが、いきなり殿下が御一人で

スケートにいらした時は驚きました。

妃殿下と宮様は体調不良という事だったんですが、まさか殿下一人でとは。

その1週間後には、今度は神宮のスケート場にご夫妻で。

宮様はお留守番です。

一体、スケートをしたいのは誰なのか?と思ってしまいます。

僕はひねくれ者でしょうか。

 

確か海外青年協力隊の面々が東宮御所に上がり、帰りに

興奮した様子で出て来たのを覚えています。

ちらっと会話を聞いたのですが

「マサコ様とアイコ様が庭で遊んでいたなあ。俺たちをみたら

そそくさといなくなって」

「やっぱり気まずかったんじゃないの?」

「適応障害って、意外と元気なんだな」

「心の病の人に冷たいよ」

「結局あれ、サボリだろ。サボリ。いいよなあ。皇族は」

などという言葉の中には馬鹿にした響きがあって

僕は悲しくなりました。

 

あの長野のドタキャンの時、妃殿下が

「大切にしてきた公務だから出席したい」と希望されたというのは嘘です。

微塵もそんな事、思っちゃいない。

だってあの時、妃殿下は宮様を同行出来ないと言った事に

腹を立てられたのですから。

そして、「体調に考慮して」接見しなかったのに、庭で遊んでいた所を

見られた妃殿下。

みな、「ご体調はどうなんでしょう」などと言いながら、内心では

「あれ、サボリだろ」と思っているんですよね。

僕が尊敬し、愛する皇室がどこかへ消えて行きそうです。

・・・・・

はやりこの手紙は出せません。

僕にも最低限の良心はあるので。

 

 

 


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