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韓国史劇風小説「天皇の母」188(時限爆弾のフィクション3)

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12月1日。アイコは4歳の誕生日を迎えた。

幼稚園の受験に合格し、得意満面だった。

皇居に向かう車の中ではうさぎのぬいぐるみの手を振った。

「みんなが喜ぶから」とキャプションがつけられたが、「喜ばれたからしてあげる」

という感覚を4歳の子供が持つとはとうてい思えず、周囲はしらけたものだ。

「病気の時によくして貰ったから今度はしてあげる」というようなエピソードも披露

された事があるが、どれもこれも空々しくてしかも寒々としていた。

「さすがにやりすぎじゃないの?」

と、アイコの誕生日の祝いに久しぶりに一家勢揃いした中華料理屋で

レイコはあざ笑うように言った。

「ねえ、セッちゃんはどう思う?」

隣で黙々と食事を続けるセツコは小さく「私もやりすぎだと思うわ」と言った。

「でもこれはお父様の深いお考えがあるんでしょうから」

セツコの痛烈な皮肉もヒサシには褒め言葉に聞こえたらしい。

グラスを上げて「その通り」と大きな声を出した。

「お義父さんのお考えにはなかなか及びません」と皇太子は笑い

追従するようにレイコの夫やセツコの夫も口角を上げた。

一人当たり5万は下らないこの中華料理店で夕方から夜中まで

どんちゃん騒ぎをするのが好きな一家である。

何かと言えばいつもここに来て、飲んで食べて喋り倒す。

店の迷惑など考えない。当然、費用は全て東宮持ちだから

ヒサシ達の懐は痛くもかゆくもない。

「なかなか大変な事なんですよ。皇室典範を改正するというのは」

ヒサシは多少酔いが回って来たのか舌が滑らかになる。

「一度決まったものを覆すというのはね。しかし、世の中がそれを望んでいるのです。

日本というのはそもそもが旧弊な国だった。そうでしょう?殿下?

そうだろイケダ君、シブヤ君。家父長制度だの男尊女卑など、どれ程の人が

苦労して来たか。

私の母などもね、こういっちゃなんだが、あの時代の女でしたよ。

だからいつも父に怒鳴られ、けられ・・・だけど口答え一つ出来なかった。

うちが貧乏だったのは国の制度のせい。母が虐げられたのは大日本帝国憲法のせい。

全く嫌な時代に生まれたもんだと思いました。

しかし、マサコのお陰で。これは本当の事ですよ。マサjコのおかげで

私は・・今時の言葉では何というのかな。仕返し?いや・・・」

「お父様、それはリベンジでしょ」

レイコが助け舟を出した。

「そうそう、リベンジだった。リベンジ。人生のリベンジ。宮様が女性天皇になれば

泣きながら死んで行った私の母も浮かばれましょう」

「そんな深いお心があったとは」

皇太子はひたすら感心し、杯を傾ける。

「私の人生はどうなるのよ」ぼそっとマサコがつぶやく。

しつこいようだが、マサコの心の中にあるのは

「強いられた結婚」であり「絶対に戻る事が出来ない実家への郷愁」なのである。

彼女は自らが興味本位で皇太子に近づいた事すっかり忘れていたし

そもそもがあっちこっちへ渡り歩く転勤族の家族にとって、どこが「実家」なのか

わかる筈もない。

アメリカなのかソ連なのか、それともコンクリートの家なのか。

「あら、まあちゃんは今幸せでしょう?アイコちゃんはこんなに大きくなったんだもの。

これから幼稚園に入って小学生になって・・・・楽しみよね」

ユミコの言葉にマサコは「でも私は全然楽しくないわよ」と返した。

「今以上に窮屈になるのは嫌」

夫が天皇になり自分が皇后になる。娘が皇太子となりやがて天皇になる。

一生海外旅行が許されない身なのだろうか。

「心配するな。そのうちに外国に自由に行かせてやるから。その為にも

宮様の立場を強化する必要があるんだよ。母親ならそこの所をよく考えて

行動しなさい。誰のおかげでこんな生活が出来ると思ってる?

皇太子殿下のお陰ですよ。殿下なしのマサコなど想像できません」

その言葉に皇太子は気をよくしたのか、にっこりと笑って紹興酒を一口飲んだ。

「宮様が私の孫というだけなら平凡でいいのです。レイコの子供のようにね。

しかし、宮様は殿下のお子です。将来の天皇のお子。だから皇太子にならなければ

いけないのです。わかりますね」

「ええ。僕もそう思います」

「だからこそ、イメージ大作戦ですよ。嘘をつくわけじゃない。宮様の現在

持っている能力を最大限に引出し、それを宣伝するんです。天皇家といえども

そこらへんは他の国の王族と変わりありませんな」

「まるで北の将軍様みたいね」

またもぼそっとセツコが言ったので、マサコは顔色を変えた。

「ちょっとどういう意味よ」

「別に言葉以上の意味はないけど」

「一緒にしないでよ。格が違うでしょ」

「やめないか」

ヒサシが怒鳴った。

「全くお前たちはいい歳をして・・・・お前の躾がなっとらん」

ヒサシはみなの目の前で妻を罵倒した。セツコはこっそり横を向いて舌をだし

マサコは母が貶められている事に気づきもしなかった。

「マサコ、何をやってもいいから私達の作戦に水を差す事だけはしないでくれよ。

前にも言ったが来年になれば新しい東宮大夫を入れてやる。そしたら誰も

お前を批判出来ないからな」

飴と鞭の使い分けが上手なヒサシの言葉にマサコは黙ってしまった。 

アイコに誕生日がやってくると、次はマサコの誕生日である。

あんなに夜中まで飲んで食べた事をすっかり忘れてしまったように

マサコは部屋にひきこもった。

通常なら行われる筈の記者会見など無視だ。

その代わり、奇妙な一文が公開された。

いわゆる「東宮職医師団の見解」である。

東宮職の医師達とオーノの共同執筆と言われたが、実際にはオーノ一人で

書いたものであったし、中身を見るとそれが本当に「医師」としての見解なのか

それとも「医師の感情的見解」なのかわからなくなる。

文章は3つに分かれていた。

「病名と治療方針」と銘打たれた文は

「すでに発表しております「適応障害」という診断は、国際的に広く使用されている

アメリカ精神医学会の公式の診断分類『精神疾患の診断・統計マニュアル

第4版改訂版DSM―IV―TR』に基づいて行ったものです。

DSM―IV―TRによれば、適応障害は、「はっきりと同定される社会心理的ストレス因子に反応して、

臨床的に著しい情緒的または行動的症状が出現することである」と定義され、

うつ病や不安障害などの他の精神疾患の診断基準は満たさないが、

著しい苦痛を伴うものであるとされています。

適応障害はストレス因子(またはその結果)がなくなれば6ヶ月程度で解決するとされてはいますが、

慢性のストレス因子などが原因になっている場合には長期間続くことがありうるとされており、

妃殿下の場合は後者に相当すると考えております。

治療に関しては、環境に働きかけてストレス因子を軽減することが最も重要であり、

精神療法(カウンセリング)を行いつつ、補助的に薬物療法を行い、

気分転換なども活用することが望ましいとされており、

妃殿下の治療もその方針にそって行ってきております」

次は「現在の御病状」として

「妃殿下ご自身は、治療に対して非常に前向きで医師団の指示を守ろうと努力していただいており、

ご病状は着実に回復されてきております。

また、こうした治療では、ご家族など周囲の方々のサポートが非常に重要ですが、

皇太子殿下が常にあたたかく、そして力強く支えて下さっていることが

最も大きい要素になっているものと拝見しております。

内親王殿下との間にしっかりとした心の交流がおありのことや、

天皇皇后両陛下に温かく見守り支えていただいていることも、

治療の大きな助けになっております。

 ご回復の兆候としては、その時々の心身の具合に応じて上手に考えや気持ちを切り替えられ、

柔軟に活動に取り組まれるようにもなっておられ、ご関心のある学問領域の書籍や雑誌を

お読みになる機会も少しずつ増えてきていらっしゃいます。

また、様々な行事にも徐々にご出席いただけるようになっていらっしゃいます。

薬物療法に関しても、妃殿下のご努力もあって、服用量を減らせてきております。

しかし、その一方で、現時点ではまだご体調には波がおありで、

心身のストレスがご体調に影響を及ぼしやすい状態も続いております。

そのために、頑張って行動しようとされてもその前やその時に強い緊張を感じられたり、

後でお疲れを感じられたりすることがあります。

したがって、妃殿下はご公務をまだ本格的に再開できないことを心苦しく感じていらしゃいますが、

医師団としては、続けてご公務をしていただけるまでにはまだ回復されていらっしゃらないと

判断しております。

今後さらに回復していっていただくためには、発症に影響した環境面のストレス因子を

積極的に取り除き、ご活動の範囲を広げていっていただくことが大切になります。

以下に、今後の課題に関する医学的な立場からの見解について述べさせていただきます」

最後は「今後の課題」として

「妃殿下は、皇族としてのご自身の役割や皇室の将来を真剣に考えていらっしゃいます。

したがって、医師団としては、今後そうしたお気持ちを大切にしていただきながら、

より望ましい形でご公務に復帰していっていただくことが重要であると考えております。

なお、ご公務の内容に関しては、皇太子殿下が先の御誕生日にお示しいただいた方向で、

東宮職で具体的に検討していただくのが望ましいと考えております。

とくに現在は、妃殿下はご回復の過程にあり、妃殿下のご体調をうかがいながら

その時々で可能なものをお願いしながら、焦ることなく徐々に復帰していっていただきたいと

考えております。

ご公務と並行して、ご成婚前の知識や経験が生かされるような形での

ライフワーク的なお仕事やご研究をされ、

それをご公務に生かしていっていただくことが、

今後大変重要になると考えております。

また、妃殿下が、ご自身の体験や知識を生かしてお力を発揮できるご活動を

今後積極的に行われることは、ご回復にとってはもちろんのこと、

改善された後にも心の健康を維持されるために重要です。

育児とご公務の両立も今後の重要な課題です。

妃殿下におかれては、ご流産に続くご妊娠、ご出産と初めての育児に関連した心身の

お疲れが残られているご出産後間もなくから地方のご公務が始まり、

その後も地方行啓を含めた多くのご公務が続かれ、

それがご病気の引き金になったものと考えられます。

とくにご公務のためとはいえ、深い愛情を感じていらっしゃる内親王殿下と

すごされる時間を思うようにとれないことに、妃殿下はとても心を痛められたものと考えております。

妃殿下は、ご公務の前にはご予定の調整やお出かけのご準備など、

ご自身でされなくてはならないことが多くおありです。

その一方で、ご家庭内のお仕事のほかに、東宮職から相談を受けながら

東宮内部の様々な懸案事項の処理などのご決定をされなくてはならず、

対外的なご公務以外にも非常に多くのことをされなくてはなりません。

したがって、今後のご公務に関しては、妃殿下が育児などご家庭で果たされる役割や、

妃殿下のライフワークになるようなご活動、ご研究とバランスをとりながら選んでいただけるように、

東宮職で慎重に検討していただきたいと考えております。

こうしたご公務やご研究に加えて、日常生活の中で興味を持って楽しまれることを

積極的に行っていただくことも大切です。

これまで妃殿下は、ご公務などのお仕事を大切にしたいというお気持ちが強く、

私的なお楽しみを控えられる傾向がおありであったために、

意識されないうちに心理的な閉塞感を強く感じられるようになられたのではないかと考えられます。

しかも、妃殿下はお立場上自由な外出がかなわないために、

必然的に情報遮断や感覚遮断の状態になられ、それ自体がストレスになるだけでなく、

ストレスに対する抵抗力を弱められることにもなりました。

そうした状況を改善するために、医師団は、私的外出や運動を可能な範囲で行って

いただくようにご提案してきました。

妃殿下は最初、ご公務がおできになっていない状態で私的な楽しみをもたれることに

躊躇される面がおありでしたが、

こうしたご活動を通して心によい刺激を与えていただくことが治療的に重要であるとの

医師団の説明をご理解いただき、ご協力いただいております。

こうしたことはご病状の改善に役立つだけでなく、心身の健康を維持していただくためにも

重要であると考えております。医師団は、この一年あまり治療に携わらせていただきましたが、

妃殿下がこれまでに直面されてきたストレスは、

医師団の想像以上に強いものであったということをあらためて実感しております。

今後は、上に挙げた課題の改善に加えて、

日常の生活でのプライバシーの確保やご負担の少ない取材設定の工夫など、

ストレス要因の軽減についても改善を進めていただくことが、

妃殿下が心の健康をさらに取り戻していかれる上で不可欠であると考えます。

治療の成果が上がるまでにはなお時間が必要ですので、

東宮職をはじめとして妃殿下の周囲の方々の協力がとても重要です。

幸いなことに、多くの人たちが妃殿下のために、

そして皇太子殿下や内親王殿下のために、

力をあわせてお手伝いをしていこうという気持ちを強くお持ちです。

医師団としては、そうした方々のお力を借りながらさらに治療を続けていく所存です。

特に、妃殿下におかれては、

ご公務に伴う心身のご負担は、私的なご活動の場合に比べて格段に強く、

次第に私的なご活動がおできになってこられることが

そのままご公務につながるものではありません。

妃殿下は元来精神的健康度が非常に高くていらっしゃり

順調なご回復の過程におありでもあり、これまでのような前向きのご努力によって、

たとえ時間がかかっても回復していかれるものと医師団は考えております。

現在はまだご回復の過程でいらしゃることを十分にご理解いただき、

静かに見守っていただければありがたいと考えております」

「これは・・・・・」

それを読んだ誰もが驚き絶句した。

何と解釈すべきかわからなかった。

それほどにこの医師団の見解は衝撃的であったし、さらにいうなら

完全に「錦の御旗」と化したのである。

 

 

 


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