ヒロノミヤは心の奥底に色々なものがたまりたまっていくのを感じていた。
今まで自分の生活や待遇に不満を持った事はなかった・・・・というより、不満を
封じられていた。
「人より恵まれているのだから不平不満は言ってはいけない」
「常に国民の手本となるように行動しなさい」
「将来の天皇としてふさわしい行動を心がけるように」
両親も回りも口にこそ出さないけど、、そういう考え方を強制しているように思える。
なんと言っても祖父はその鏡のような人。
公平無私そのものの態度。よけいなものは身につけない。
祖父も父も「研究」に命かけているし。
そういう高尚な人間ではない。自分は・・・・と、思ってしまう。
だから、彼としては色々なことを我慢してきたという自負がある。
なのに、今又、結婚に関して
「オワダマサコさんはチッソのことがあるのでいけません」と
はっきり言われてしまった。
チッソの事じゃないだろう?
問題なのは、怪文書だ。
宮内庁に送られて来たという怪文書。
そこには、オワダマサコの素行不良の証拠がずらずらと書き述べられている
らしい。宮内庁が最も問題にしたのはハーバードでの男性関係。
アジア系の恋人がいたとか、トップレスの写真があるとか。
事実かどうか確かめる事もせず、そういう噂があるというだけでダメだと。
でも、これは陰謀なんじゃないか?
あんなに美人なんだもの。恋人の一人や二人いたろうし。
自由なハーバードでは青春を謳歌していたに違いない。
それが罪だっていうのだろうか?
っていうか、本当に男性関係があったと言えるのか?どこに証拠が?
なのに駄目な理由は「チッソのことがあるので」とはぐらかす。
何もかも自分に対する嫌味というか陰謀に思える。
怪文書のせいで破談になるなんておかしい。
もしかして宮内庁の中には自分を陥れようとする勢力がいるんじゃないか?
誰が何の為に?
オワダマサコに関しては天皇も絶対に反対だという。
天皇が生きている間はオワダマサコを妃候補に上げる事は出来ない。
イライラする。腹立たしい。でも、それを回りにどう表現していいかわからない。
そんな事を考えているとき、弟宮も悩んでいた。