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韓国史劇風小説「天皇の母」191(2時間47分のフィクション 1)

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「出来上がりましたよ」

汗をふきながらたすきを外した侍女に押し出されるようにして

二人の内親王が両親の前に出た。

マコもカコも赤い着物を着ている。

マコは恥じらうように笑い、カコは得意げに袖をふりふりしていた。

「さあ、宮様方、よい子になさいませ」

「もう子供じゃないもん」

カコはぷうっと頬を膨らませた。

キコは「カコちゃん。そんな言葉遣いはいけません」と言いながらも

娘達のあでやかな着物姿にため息をついた。

内親王は物心がつくと、「御地赤」と呼ばれる赤い着物を仕立てるしきたりだ。

それを来て正月や天皇誕生日などに参内する。

この日はまさに天皇誕生日だった。

朝から夫妻は、一度参内して祝賀の辞を述べた。

さらに祝宴やら茶会やら、それぞれの行事に出席し、一度宮邸に戻って来てから

再度、娘達を連れて参内し、その後は成年皇族のみの夕食会になる。

「着物というのはいいね。おてんばもしとやかに見える」

宮は笑った。

「それ、どういう意味なの?お父様」と睨んだマコもまんざらではなさそうだ。

4人は笑顔で車に乗り込み、半蔵門を超えた。

 

控室にはクロダ夫妻も来ていた。今日の夕食会に出席するためだ。

「まあ、マコちゃん、カコちゃん、とても可愛らしいわよ」

サーヤはにこにこ笑って姪達をここぞとばかりにほめちぎる。

昔からそうだったけれど、彼女は姪には甘いのだ。

「女の子は可愛いね」とヨシコも笑顔だ。

そんなに久しぶりではないけど、会った限りは話が尽きない。

みなでさんめきあっているところに、ドアが開いて、皇太子一家がが入ってきた。

沈黙が包み込む。

それに気づかない皇太子はにこにこと

「みなさん、来てたんだね」といい、さっさと自分の定位置に座る。

マサコはアイコを抱いていた。

アイコは無表情でどこを見ているかわからなかった。

「ごきげんよう」

サヤコとキコがあいさつし、娘達もそれに習う。

「あら、真っ赤」

マサコは一言だけそう言った。

内親王達は一瞬「え?」という顔をしたけれど、それ以上は何も言わなかった。

アイコは赤い着物がとても珍しそうで、触りたいと思ったのか、マサコの

手から逃れようとした。

「ちょっと、暴れないで」

マサコは怒ったが、アイコは「いや」というばかりで必死にもがく。

「きっとマコ達の着物にさわりたいのね。大丈夫ですよ」

キコが優しく言った。

アイコは母から降ろされると、一目散にマコとカコの着物に触ってみる。

正直、内親王達は「嫌だな」と思ったのだけど、顔に出してはいけないと思い

我慢していた。

アイコは振袖を引っ張ったり、生地をなでたりしていた。

そのうちに時間が来て、子供達だけ天皇と皇后の前に出される。

アイコを先頭にマコとカコがそれに続いた。

「本日はお誕生日おめでとうございます」

口上を述べたのはマコ。最年長だから。カコはマコにならって同じセリフを言い

しっかりと頭を下げた。

しかし、アイコはぽかんとして眼は泳いでいた。

天皇も皇后も追及せず、退出するように合図をする。

マコとカコは踵を返して歩き出そうとした。

その時、珍妙な光景が場を凍らせた。

アイコがカコの着物に抱きついたのだ。

「え?」

一瞬、カコは何が起きたのかわからず、よろめいた。

それにおされてマコも一緒によろめき、3人はどすんと床に倒れこんだ。

「マコちゃん!カコちゃん!」

皇后は驚いて駆け寄る。様子をききつけた女官達も飛び込んでくる。

天皇は「早く起こしてやりなさい」といい、そのごたごたを聞きつけて控えていた

皇太子夫妻、アキシノノミヤ夫妻、クロダ夫妻も入ってくる。

アイコはカコの着物にしがみついたまま、離そうとしなかった。

「いやーー」というばかりで、しっかり袖を握りしめている。

マコは立ち上がったがカコは立ち上がれず、ひたすら

「お願い。ちょっと立たせて」と言っている。それでもアイコは全体重をかけて

カコに馬乗りになっている。

「宮様。およしください」

女官が二人がかりで引き離そうとするのを、どんと体当たりしてアイコを抱きしめたのは

マサコだった。

「うちの子に何するの!」

みなは唖然として固まった。

「カコちゃんが倒れたからよ。トシノミヤが突然しがみついて」

皇后が珍しく声を荒げたが、マサコはそれ以上に声を大きくして

「着物なんか着てくるからじゃない」と叫んだ。

みなは一瞬「は?」という顔になった。

皇太子は薄笑いをうかべ

「アイコは着物が珍しいんです。だから触ってみたかったんだね。いや、着てみたい

と思ったんじゃないかな」

といった。

「だったら御地赤を作ればよろしいでしょう。そういうしきたりですよ」

「それは・・・」

「だったらそうだって教えてくれてもよかったじゃないですか」

マサコはなおも食って掛かった。

実は何度も東宮家の職員は御地赤の注文については聞いているのだが

無視して来たのはマサコだった。

「アイコは洋服なのに、この二人だけ派手な着物を着てたらアイコが傷つくに

決まっているじゃありませんか」

マサコはマコとカコを睨み付け、いつの間にか涙目になっている。

「あれーーあれーー」指さして叫びながら、何とかカコの着物にたどり着こうと

するアイコはマサコの手の中でもがいていた。

「そんなこと!」といいかけたカコをキコはバシッと手でおさえた。

「とにかく両陛下の御前です。子供達を下がらせましょう」

止まった時間が動き出すように、女官に支えられながら立ち上がったカコと

マコは退出して行く。

「アイコ様も」と女官が手を差し出す。

「私が連れて帰ります」

とマサコはアイコを離そうとしない。

「でも、これから夕食会ですので」

「私が連れて帰るの。この子はあたしじゃなきゃだめなの」

マサコは譲らなかった。

「そもそも控室で着物に触らせたりするから。あなたのせいよ。そんな事したら

子供がますます興味を持って離れられなくなるってわからなかったの?」

責め立てる皇太子妃にサヤコが「両陛下の前ですよ」とたしなめた。

マサコは聞こえないふりをしてアイコを抱きしめまま目に一杯の涙をためている。

「とりあえず、マサコはアイコを連れて東宮御所に帰った方がいいでしょう」

皇太子はおろおろしてそういった。

「では夕食会は不参加という事で」

侍従の一人がそういいかけると、皇太子は慌てて首を振った。

「いや、マサコはすぐに戻ってきます。ね?戻ってくるよね?」

マサコは「私なんかいない方がいいんでしょう」と低い声でつぶやく。

「そんな事ないよ。君が戻って来るまでまっているから。ちゃんと待っているから」

もはやだれも何も言えない環境だった。

マサコはなだめられてようやく立ち上がり、アイコと一緒に退出して行った。

このされた一同は、とりあえずぞろぞろと食堂前の控室に入った。

夕食開始の時間はとっくに過ぎていた。

 

 


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