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韓国史劇風小説「天皇の母」199(ねずみランドのフィクション1)

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母さん。

暫く手紙を出さなくてすみませんでした。

メールでもいいかなと思うけど、母さんは苦手だし、直筆の手紙がいいというから。

でもこれからはメールにしますね。

色々忙しくて手紙を書く暇がないのです。

それに、少し疲れていて。若いのに変ですか?でも心配しないで下さい。

こういう特殊な仕事をしていると責任が重いんです。

僕のような下っ端ですら。

このたびの妃殿下のご懐妊は、僕たち下っ端の者達をも二分するような

事になってます。慶事だというのにどうしてなんでしょうね。

新しい東宮大夫が着任するなり、皇太子妃殿下の活動が活発になりました。

なんでも彼は、妃殿下の父君の部下だったそうで、妃殿下とも親しいらしいです。

そのせいか、妃殿下がご自分の意見をおっしゃる前に先回りして

手配するんです。

それがもう早いのなんのって・・・・ああ、愚痴です。母さん、すみません。

でも職場では何も言えませんから、少し聞いて下さい。

東宮大夫というのは東宮職の中で一番偉い人です。

定例の記者会見があって、そこで両殿下の動静を知らせたり、両殿下の意志を

伝えたりします。

僕たち皇宮警察の者も、東宮大夫が決定したスケジュールに沿って

警備を行います。

そのスケジュールは数か月前には決まっていて、予行演習を何度も行い

数秒の違いもないように行動するのです。

それというのも、両殿下が動くと信号操作をしてノンストップになるし

訪問先の予定をも変える状態になるので。

国民に迷惑をかけないように・・・というのが両陛下の思し召しですから

とにかくきっちりとスケジュールを立てるのです。

でも、今年に入ってからは予定外が多く、

特にご懐妊がわかってからの東宮家は「思いつき」の行動が多くて。

例えば、ご懐妊がわかった翌日の「盆栽展」

これは殿下が一人で行かれる予定だったのですが、突如妃殿下も

同行されるとおっしゃって・・・・

決まったのが1時間前ですよ。

座席に座ればいいというものではありません。車列も違うし迎える方も変わります。

出来ればもう少し早く教えてくれればと思うのですが

「体調がいいときに積極的におでましになる事は治療の一環である」

という東宮大夫の言葉で終わってしまいます。

「2月のスキー旅行が中止になったんだから文句をいうな」と言われました。

でも妃殿下は病気のはずで。

どうしてスキーに行けるのか不思議ですし、中止になったのが病気云々ではなく

「豪雪の被害が多かった為」というのが、ひどく両殿下の勘に触ったと

聞きました。

本来、天皇皇后両陛下、皇太子ご夫妻、宮家の方々は

国の安泰を願うのがお仕事で「私」というのはありません。

ゆえに、災害などが多発すると静養を取りやめられたりしたのです。

しかし、皇太子ご夫妻は、そういうことでご自分達の行動を制限されるのが

たまらなく嫌なのだそうです。

「権利」があるかららしいです。

高貴な方の権利意識はすごいですね。

 

例えば、先日、突如「上野動物園に行く」とおっしゃって。

警備上の都合があるので、行かれるのなら新学期が始まってからと

申し上げたら妃殿下が激怒されたそうです。

何でも内親王殿下のご教育には絶対に動物園訪問が必要で

しかもそれが幼稚園入園前じゃないといけないというのです。

母さん、僕は子育てをしたことがありません。

子供が幼稚園に入る直前に動物園に行くことが必要なんでしょうか?

僕の上司などは怒りだして、何度か東宮職とやりあっていましたが

東宮大夫が「東宮家の思し召しは絶対」と言い切り、

「ただでさえ妃殿下はご懐妊問題で傷ついておられる。だからせめて

動物園に行きたいというくらいきかなくてどうする」と上司に詰め寄ったらしいです。

その時、上司は

「やっぱりそうなのか・・・」と思ったそうです。

僕にはさっぱりわかりませんが。

3月は3日に、内親王殿下がご入園になる幼稚園のひな祭りがあり

妃殿下と内親王、お二人でおでましでした。

その時もお友達のご家族と予定を大きくオーバーされて、信号機の操作もあり

僕たちは一分一秒に翻弄され、へとへとになりました。

5日には両殿下がおそろいで

ワールドベースボール日韓戦におでましに。

この時も殿下おひとりの予定だったのですが、急きょ、妃殿下の同行が決定。

という事は時間が予定通りに進むはずがなく、

出発から大幅に遅れてしまった為、突如、ほとんどの信号を青にして

走りまくってしまい。

まるで救急車でしたよ(笑)

先回りしている僕達はイライラしながら待っていました。

で、3月初旬の月曜日。つまり休園日に無理無理動物園を開けて

東宮一家は内親王殿下のお友達一家4組と訪問されたのです。

閑散とした動物園に嬌声が響き渡りました。

客がいなくても警備を怠るわけではありません。

両殿下も内親王も気まぐれにあっちこっち移動し、西園への電車にまで乗って

いかれるので、それをおいかける僕たちはいつも走ってばかりです。

休園日だというのに、いつものように出勤させられた職員は苦笑いしているし

売店も開けさせて、子供たちが好きなものをどんどん手にとっていくさまは

ちょっと異様でした。

東宮家は皇族だから仕方ないとしても、お友達一家まで、「皇族」のように

好き勝手振る舞い、それを両殿下が笑ってお許しになっているのです。

内親王が一番興味なさそうな顔で、ぬいぐるみばかり

いじっているのが印象的でした。

動物園で遊びたかったのは実は妃殿下なんでしょうね。

その日は、予定を2時間もオーバーしました。

殿下は売店のビールを開けて楽しそうに飲んでおられました。

妃殿下とママたちはおしゃべりに夢中になっていたかと思えば

いきなり「あっちのオリにいってみない?」と動かれ、よく疲れないものだなと思いました。

正直、動物園からは

「いくら皇太子ご夫妻といったって時間くらいは守って頂かないと。

動物というのはデリケートで、ただでさえ衆人環視の下にいるので

たまには休ませてもらわないといけません。でも、あの方たちは

一つのオリの前で延々とおしゃべりされて。

くわしく観察して勉強されるならまだしも、子供達は好き勝手に走り回って

動物を見るでもなく、売店の食べ物やおもちゃを掴んでいく。

そういう事が許されるんでしょうか」

と言われ、聞いていた僕たちは言葉もありませんでした。

後日、東宮大夫に報告した上司は、逆に

「君は誰に仕えているのか」と叱られたそうです。

「両殿下がそれを望むならそ、白が黒であってもそれが正しい」と言われたそうで。

僕たちは釈然としない気持ちでいたんですが。

 

妃殿下の何がどう病気なのか僕にはわかりません。

でも、確かに他の皇族方とは違います。

立ち居振る舞いも考え方も。

何というか、僕達が小さい頃から親しんでいた皇室とは

違うのです。

仕える僕達は、どことなく奴隷になったような気分です。

しかも毎回、後味が悪いです。

みんないい気分にならないまま、ご本人達だけが楽しんでいるからです。

しかも少しでも批判しようものなら「病気の妃殿下を責める」と叱られてしまい。

心の病気というのはやっかいですね。

とにかく「肯定」しないといけないんですから。

 

そして僕たちは最も疲れる日に遭遇したのでした。

 

 


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