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韓国史劇風小説「天皇の母」49(ふぃっくしょん)

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「どうしていけないのですか」

珍しく声を荒げていたのはアヤノミヤだった。

相手は両親・・・即位したばかりの両陛下だった。

兄の厳しい声にノリノミヤも思わず兄を見つめ、その顔をまじまじとみつめた。

「カワシマキコ嬢は素晴らしい女性です。それはおたあさまやおもうさまも

ご存知でしょう?

何度もこちらに連れて来たじゃないですか。その彼女と結婚してはいけない

理由はなんでしょうか?」

皇后はお茶のカップを指で遊びながらため息をついた。

「一つは先帝が崩御されたばかりというのがありますよ。それからカワシマ家は

皇室に入るには難しいと侍従たちから聞いています。さらに東宮がまだ結婚して

いないのに弟が先に結婚するというのは長幼の序から外れています」

「逆になんでアーヤはそんなに結婚を急ぐの?」

即位したばかりの天皇は皇太子時代と変わらない穏やかな調子で聞く。

「アーヤはまだ大学院生だし、カワシマさんも大学生。急ぐ必要はあるのかい?」

「ええ」

アヤノミヤは思いつめた調子で言った。

「10月には僕はまたイギリスに戻ります。そしたら暫く帰って来られません。

その前に婚約をしたいのです。そうでないと・・・」

(そうでないと誰かにとられてしまう)なんて言える筈ないんだけど・・・

最近、彼女のとの交際が雑誌に出たりテレビで報道されたりして、カワシマ家への

マスコミ取材が集中するのも時間の問題だ。

そうなったら大変な事になる。だからその前にきちんとけじめをつけたいと思ったのだ。

「お兄様はここ3年以内に結婚する予定がおありですか?」

弟のあらたまった口調に皇太子はどきりとして口ごもる。

「いや・・今は・・・」

オワダマサコとの結婚話はあれっきり宙に浮いている。

それでもどこからともなく「何とかしますから」という声が聞こえてくるのだけど

具体的にはなにもない。なんせ、彼女はまだイギリスにいる。

「今現在、お兄様に婚約者ないし結婚を前提とした相手がいる、もしくは

決まる予定があるなら待てます。でもそうでないなら何としてもこちらを優先して

頂きたい。彼女は皇室にふさわしい女性です。僕が保証します」

いつの間に・・・と皇后は思った。

何だか面白くない。昔からやたら冷静な次男坊ではあったけど、それがここまで

熱くなるのが女性問題とは。

母親としては納得行かない感情だった。

「マスコミが取材攻勢をかけてきたら彼女に迷惑がかかります」

アヤノミヤは切り札のようにその言葉を口にした。

本当は一時だって別々にいたくない、イギリスにだって連れて行きたい。

それが出来ないならせめて・・・・若さという情熱はすさまじいエネルギーを

発するのだった。

「わかった。正式に宮内庁を通じてカワシマ家の調査をさせよう」

「陛下」

皇后はいきなりの天皇の言葉に驚きを隠さなかった。

「でも、それで駄目だといわれたら諦めるね」

天皇の言葉はぐさりとアヤノミヤを刺す。

「はい・・・」

もう逃げ場はなかった。

 

子供達がおやすみなさいの挨拶をして出て行くと、天皇は深いため息をついた。

「皇太子が結婚していたらなあ・・・30にもなるというのに、まだ例の女性に

拘って。あんなに頑固だったかな」

「皇太子は一途なんでしょう。アヤノミヤも」

「しかし、アーヤの方が目は確かかもしれない」

「陛下。皇太子だってちゃんと先を考えておりますよ。今は少し夢中なだけで。

アヤノミヤだってそうですわ。時間が経てば」

「私はそうじゃなかったけどね」

天皇の微笑みに皇后は思わず顔を赤らめる。

「あの時とは時代が・・・」

「みなそういうんだよ。私達も歳をとったという事だ。ミーはアーヤが誰かに

とられそうで嫌なんだろう?」

「まあ、そんな事はございませんけど」

「即位の大礼には皇太子妃がいる事が望ましいが、どうやらそれは望めそうにない。

なら筆頭宮家だけでもきちんとした形で残さないと今後が心配ではないか?」

大葬・即位・・それは皇族が一生に一度経験するかしないかの重要な儀式。

せっかく、そのチャンスがあり経験をつむ事で、皇族としての自覚が生まれ

あらためて意識を持つ・・という事を考えると、現在皇太子妃がいないのは

本当に困る事だった。なぜなら次の天皇・皇后だからだ。

大葬も即位も経験しない皇后が誕生する・・・ゆゆしき問題といえるかもしれない。

「そういう意味でもね、もしカワシマ家がいいならね」

「陛下の深いお心はよくわかりました。明日にでも話をしましょう。学習院常盤会

にも言って成績表などを取り寄せましょう」

それでもまだこの頃は皇太子の結婚についてはのんびりと考えていたし

成年式を迎えたノリノミヤの将来も明るいものと楽観していたのだった。

 

 


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