土曜日の住友VISA貸し切りに行ってきました。実は3回目です。
普通は「抽選で受かった人」が見に来る筈の公演で、やたら業界系の人を
見ると、わかっていても嫌だなと思います。
おまけに2階席、埋まってないし・・・・・
NOBUNAGA 下天の夢
まず、脚本としてはすごくよく出来ています。
はっきり言ってさよなら公演にここまでの作品をオリジナルで持ってきて
貰う事自体が素晴らしく幸せな事だと思います。
織田信長の生涯を独自の視点で描く。
実はポルトガルが日本を植民地にしようとしていた?あるあるーーってな感じ。
あまりにも独断専横な信長に、ちょっと疑心暗鬼な光秀や秀吉ら家臣の
心の動きもわかりますし。
特に、ロルテスらによって信長に反旗を翻した秀吉達、帰蝶の死、そして
信長の歌のシーンは今年一番の名シーンですよね。
馬鹿でかい像のハリボテも松風なみに可愛らしかったし。
沢山の出演者をそれなりに意味を持たせて出演させ、ストーリーを完結させる
という意味では、すごいなあと思うばかり。
(ただ1点・・・「とどめを討つ」じゃなくて「とどめを刺す」だよ)
だけど、悔しいのはこの信長という役柄を演じきれなかった龍真咲です。
昔なら真矢みき、今なら大空祐飛にさせたい役ですのに。
この作品における織田信長は、新人公演の暁千星も言っているように
回りとの絡みがほとんどなく、いつも真正面向いてしゃべっている役です。
心の中を表現するセリフがあまりなくて、身内の不幸にも冷徹。
泣いたり叫んだりするわけでもなく、人のセリフを受けては先を行く・・みたいな
唯我独尊で、そこが回りの誤解を生みやすいわけで。
例えば浅井長政にあった時
「妹はどうだ?」と聞きますが、妹に関する感情はそれっきりなんです。
でも、そのセリフの中に妹を思いやる「何か」がなければいけない。
「なぜわしを裏切った?」と聞く時も、そこに悲しさか切なさをにじませないといけない。
帰蝶になかなか会わないのは「怖い」という。自分が彼女の親の地を
滅ぼした事で妻が本気で起こっていたら、絆が絶たれるかもしれないし。
妻木を殺した事に対する言い訳をしないのも、観客に対して
「それは仕方なかったのだ」と思わせないといけない。
そういう諸々の演技が龍真咲は出来ていないのです。
いつも、両手をばあっと広げて大振りで、「、」「。」がないかのように
セリフをしゃべるので、何を言ってるのかわからない。
へんてこな節回しの歌はメロディがよくわからない。
新人公演の歌を聞いて「ああ、そういう曲だったのか」と思った程です。
大野先生としては、歌が得意なわけでもダンスが上手なわけでもない龍を
主役にして、物語を作るとき、とにかく真ん中に立たせる、像の上に座らせるなどで
何とか見せ場を維持しようとしたと思うんですが、かえって「棒」に見えちゃって
かっこいい部分は全部帰蝶に奪われたなと思いました。
その帰蝶は信長の妻なのに夫婦らしいシーンが一つもなく、それなのに
ラストは夫を庇って死んでしまうという結構理不尽な役柄。
娘役トップがやるにしては粗末だなと思いましたが、仕方なかったのかも。
ロルテスはこの物語の中で最も理解できない人物で、一体何がしたいのか?
全く必要のない役であったと思います。
この人がいなかった方が話がスムーズだったのでは。
外国人にするならどうして弥助にしなかったかなと。
光秀と秀吉は現実にはありえない程美しくて、生真面目な光秀と
チャラい秀吉が対照的な魅力でした。
妹・妻木が殺された時の光秀のセリフ「せめて理由を」みたいな一言に
兄としての悲しさを感じましたし、みんなが盛り上がる中で一人そうなれない
瞳に専科へいく凪七瑠海の悲しさも感じました。
ラストシーンの刀をばさっとやって龍の幕が落ちてくるシーンも
素晴らしく豪華で、さよならムード満点だったんですけど・・・
泣けなかったなあ。
龍真咲・・・今回の役はいつも真ん中で立っているだけ。
1対80人みたいなシーンばかりで、これこそが今の彼女の
立場を物語っているのかなと思いました。
帰蝶が討たれてから死ぬまでのシーンに歯を見せて笑うなよ・・
セリフと表情が正反対にならないといけないのにと。
どこまでも未熟さが目立ってしまい、腹が立つばかりでした。
愛希れいか・・とにかくかっこいい帰蝶で、見せ場もかっさらって、月組の
真の女帝になったなあと感慨無量。
珠城りょう・・・黒塗りになると、あまり存在感がなくて。次期トップのわりには
恵まれてないなと思いました。
そもそも珠城は芸達者で重厚な役柄が似合う人の筈。それがここまで
小さくなっちゃっていいのか?と。
お披露目には変わるんでしょうか。
凪七瑠海・・・相変わらず演技は上手ではないんですけど、全身からにじみ出る
「やさしさ」が好きです。
光秀としては面白味のない演じ方だなとは思うのですが・・・・
美弥るりか・・・美弥るりかも本来なら真面目な役が似合う二枚目なのですが
今回は浮気性で軽い秀吉に挑戦。うまかったとは言えませんが、
ラストシーンの美しさが神がかり的なのでよしとします。
沙央くらま・・・コミカルで軽くて弱い御公家さん的将軍家をとても上手に演じてくれました。
すっかり専科の風格で、舞台を引き締めてくれますよね。
朝美絢・・・元々顔が綺麗だし、小柄だし、女役はよく似合っていました。
暁千星・・・前回までの棒読みがなくなった事はよかったです。成長著しくて
目を離せない存在なのですが、今は演技力をつける事がもっとも大事。
男役としての色気をいかにして表現するか。
ぜひ麻路さきを見習ってほしいです。
あとは蓮つかさが非常に目を引きます。地味な顔立ちなので、この先の出世は
どうかと思いますが、名バイブレーヤーの道を行くのではないでしょうか。
千海華蘭のオルガンティノもなかなかよかったです。
FOREVER LOVE
藤井先生としても作るのが大変だったのではないでしょうか。
トップコンビをほとんど一緒に出さず、デュエットダンスもなく、
目線も合せない様にするっていうのは。
結果的に、愛希れいかが中心になって男役を侍らせ、主題歌を歌い・・・
という誰の為のショーなんだかわからなくなってしまった印象。
年長組の男役3人にドレスを着せてもどうかと思うし。
ラストになるにつれ、龍真咲がつなぎで出てくるような印象もありました。
ここも見せ場は全部愛希れいかにとられた感じ。
それも仕方ないっか。
今後の月組は急に若返る事になりますよね。
どんな風になっていくのか様子をみたいと思います。