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韓国史劇風小説「天皇の母」57(あらフィクション)

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世の中は相変わらずキコちゃんブームが続いていた。

若くて可愛らしい宮妃の誕生は国民にとって大きな癒しになっていた。

あっちこっちの公務に引っ張り出され、ちょっとドジってしまう所も「可愛い」と評判。

どこかへ慰問にいけば一緒に泣いてしまうような未熟な妃。

でも夫婦仲はすこぶるよくて、どこへいっても幸せそうな二人は

回りから微笑ましくとられられていた。

皇室には次々行事が控えていた。

即位の大礼、大嘗祭、そして立太子の礼。新しい皇室が本格的に動き出す

時だったのだ。

戦争を引きずって一生涯「大元帥」のイメージを崩さなかった先帝。

けれど新帝は「日本国憲法を守り・・・皆さんと共に・・・」と民主国家の象徴として

役割を果たそうとしていた。

とはいえ、庶民にとっては「また皇室ファッションが楽しめる」くらいの意識しか

なかったのだが。

 

皇室で重要な儀式が続く中、マサコは帰国早々北米2課に配属され

本格的な仕事を始めた。

とはいっても、ヒサシのおかげで自分に意見する上司など一人もいなかったし

新人は禁じられているマイカー出勤も堂々と行っていた。

マサコにとって「規則正しく生活する」というのが、こんなに大変だとは思わなかった。

公務員だから、とにかく毎日同じ時間に出勤し、同じ時間に昼休みをとり

同じ時間に帰る・・・帰宅が遅くなる事はあっても早くなる事はない。

そういう生活に驚いたのだ。

学生時代は出たくない講義があれば休めばよかったし、風邪をひいたといえば

大体「お大事に」といってくれて終わった。

でも、仕事となれば話は別。

休みたくでも「何でどうして?いつ出てこられるの?」と来るし、そういう事を

一々説明するのが面倒。

昼休みも何できっちり1時間なんだか・・・自由になるのはトイレにいく時だけ。

仕方ないので、休みたくなったらトイレに駆け込むようになった。

文句など言える筈もない。

だって自分には父がいるんだから。

「マサコ、仕事はきっちりやれよ」

と父は言った。勿論だ。だって自分は将来父のような外交官になるんだもの。

ちゃんと外交官になって大使になったらお父様は自分を認めてくれるかも。

けれど、そんな希望は働き始めてわずか数ヶ月で挫折した。

仕事が面白くないのである。はっきりいって意義を見出せない。

北米2課といえば聞こえがいいが、マサコに与えられ仕事は事務処理。

それも初歩の初歩。

自分で大臣に意見が出来るわけではないし、アイデアを申し出ても相手にされない。

まだ新人だから重要な仕事を任せるのは回りの目があって出来ないのかも。

でもそれなら父が意見してくれる筈なのに、今回は何もいってくれない。

もしかして耳に入っていないの?と思って、相談したら

「もう少しきちんと仕事が出来るようになったら」といわれた。

やりがいのある仕事をしただけなのに、コピーをとったり書類を回したり。

マサコのやる気はどんどんそがれていき、トイレにこもる回数も増える。

そのうち、段々気持ちも沈んできた。

上司も同僚も誰もかれも自分を理解していないような気がした。

私はもっと仕事が出来る。

私はオワダ家の娘なのだ。それなのに同期と同じレベルの仕事に甘んじる

必要性があるだろうか?

外務省は女性差別が激しい場所なのかもしれない。

私は普通の男より勉強だって出来るし仕事だって・・・・差別だとしたら許せない。

世の中、男女雇用均等法時代なのに。

「そうでしょ?お父様」

「そりゃそうだな。国家公務員に男女差別があってはいけないな」

「でも私、差別されているの。この間なんか、1課の人があまりに私に失礼な

態度をとるから・・だって1課のじゃなくて2課のコピー機を勝手に使うのよ。

だから「勝手に使わないで私に断って」と言ったの。そしたらすごく嫌な目つきで

はあ?っていうのよ。はあ?って。信じられる?

コピー機っってカウントされてるの知らないのかしらね。

私達の2課ばっかり使うと思われたら困るから言ってるのに」

「わかったわかった」

ヒサシはうんざりと娘の言葉を聞いていた。

このまくしたてるような言い方とどうでもいい事に拘る性格。

何とかならんか。ユミコそっくりだ。これがレイコやセツコだったら

ここまで変な部分に拘ることはないのに。

 

マサコは父に胸のうちを吐き出すと少し気が楽になった。

でもそのうち、自分がこの先、外務省という場所でやっていけるのかどうか

不安になり始めた。

いうべきことを言ってるだけなのに、みんな「そんなに杓子定規に言っても」

といってとりあってくれないし、仕舞いには

「オワダさん・・・そんなに考えすぎない方がいいわよ」と言われた。

言葉通りうけとったマサコは自分が孤高の戦士に思えてきた。

そんなとき

「オワダ君は正しいよ。うん。絶対に正しい」と言ってくれる人が現われた。

ちょっとした酒の席でもぶちあげたマサコの言葉をにこにこ笑って聞いて

くれる人。

「いや、僕の妻も君みたいに頭がよかったらな」

彼はそういって笑った。まるで父のような包容力に溢れた微笑だった。

「自信を持つといいよ。君はあのオワダさんの娘なんだし。ハーバードも出て

他の人とはレベルが違うんだから」

「そ・・そうかしら」

「ああ。これからの女性はばんばん仕事をして人の上に立たないと。

早くおいついておいで」

その言葉にマサコは一目で恋をした。

 

 

 

 

 

 


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