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キャベツ巻き次第

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常々、娘が嫁に行く時に持たせたいと思っている漫画がありました。

それは市川ジュンの「懐古的洋食事情」シリーズです。

市川ジュンの作品は当ブログの中でも沢山取り上げて来ました。

上品な作風がとてもお気に入りだったんですが、1976年「白い炎」あたりから、「女性の権利」をテーマに作品を書くようになりました。

戦前戦後の参政権の話とか、性差別の話とか、それらも全て上品にコーティングしてますから読みやすいのですが。

1985年から始まった「陽の末裔」などはその最たる作品と言えるでしょう。

「懐古的洋食事情」が始まったのは1987年で「陽の末裔」の脇役達が活躍したりするとても楽しいお話。

で、なぜこれを「嫁ぐ娘」に送りたいかというと、このシリーズの中には現実の結婚生活や夫婦の在り方などのお手本が入っているからです。

その一部を紹介しましょう。

 「昭和元年のライスカレー」

元モガ(不良娘)の愛子さんが見合い結婚した相手は竜平さん。

(当時は一度も会わずに結婚)

彼の為にどんな料理をしようか、自分の実家、彼の実家と渡り歩いて料理を習うけど彼は全然満足しない。

ある日、銀座で絡まれている所を夫に発見され、愛子さんが元モガである事がばれる。そこで竜平さんは「二人の味を作りたいと思っている」と告白。

早速二人でライスカレーを作り始める。

 昭和初期のライスカレーはたまねぎを茶色になるまで炒める所から始まる。お互いを知らない二人の共同作業。いいですよね。

 

 コロッケに明日はない

子爵家の緑さんは生方さんという実業家と婚約。

それまで女性が「家事」を担う事を知らなかったので、とりあえず生方さんの職場に行って「何がお好き?」と聞いてみる事に。

生方さんいわく「コロッケです」っていうので、緑さんは頑張ってクリームコロッケを作って差し入れ、所が生方さんは「ぼくはじゃがいもの方が好き」というので、緑さんはびっくり。改めて自分でじゃがいものコロッケを毎日作って家族に食べさせ、でも頑張りすぎて倒れちゃった。(料理なんてした事なかったのにやたらすごい集中力を見せたので)

それに対し生方さんは「仕事を早く終わらせて二人で何もない所から作っていきたいと思っていたのですよ」と告白。その一言で緑さんはありのままの自分を受け入れてくれると思って幸せな結婚をするのです。

 子爵家のお嬢様は「結婚」といってもただ寄り添っていればいいと勘違いしてたんです。そしたら「家事全般は女子の仕事ですので」と言われ、びっくりして慌てて料理を習おうと思ったんですね。

 コロッケがいいと言われたらコロッケだけを作り続ける所がお嬢様。

 最初は高級なクリームコロッケを作りつづけ、次はじゃがいものコロッケを作り続け・・・そういう純な所がいいのかなあ。

 

 キャベツ巻き次第

長与公爵家の実子様は庶民代表・長谷川淳さんという詩人とご結婚。

アパートで二人きりの生活になりました。

長谷川さんは詩人だけど掃除・洗濯・料理・家計管理全部出来ちゃうエキスパート。

最初は実子さんはそれにうっとりしてたけど、次第に「私は何もしえあげられてない」事を発見。

実家の夜会に出席してごちそうに華やかな衣装を見ても胸がときめかない。

私の幸せは長谷川さんとの生活にあるという事はわかってるけど。

少しずつ家事や買い物を習うけど、なかなかうまくいかない。

でもある日、仕事が忙しくなった長谷川さんは実子さんに構っていられなくなった。

実子さんは一大決心して市場に買い物に。

おばちゃんやおじちゃんたちに「いい家のお嬢様なのに偉いね」と褒められつつ、何を買ったらいいのかわからみて質問。

そしたら「キャベツがいいわよ」と言われ、でもどうやって料理するの?」と聞いたら「モダンな奥様だからキャベツ巻がぴったり」と言われて、色々レシピを教わり、約半日かけて夕食が完成。

味はともかく長谷川さんは「君は社交界だけじゃなくてここでも華形なんだね」といい、ラブラブな生活は続くのでした。

 「リベラル派ですの」と言ってた実子さんのお母様も、実は家事を教えていなかった。だから夜会で顔を合わせると「何でも詰めて持って帰りなさい」とフォロー。実は心配でならなかったのです。

でも実子さんは豪華な食事を食べずにアパートへ帰り、夫が作ったカレーを食べるという庶民派。

 

 東京ハヤシライス異聞

大賞13年に恋愛結婚したるい子さんと新平さん。るい子さんは女流歌人としてやってる職業婦人。

嫁いだ家には生意気な義弟が。

その義弟の嫌味に負けず毎日、家事や料理に頑張り、歌も詠むというるい子さん。

口癖は「大丈夫」

でもある日、とうとう旦那様の給料を使い切ってしまい・・・でも何が何でもお給料日まで持たせるぞ!と決心したるい子さんは、最終的にハヤシライスを考案。

実はこの家には女中さんがいたのですが、妻が早く馴染むようにと暫く暇を出していたのです。

ハヤシライスを作る事で自分なりに婚家に馴染んだるい子さんです。

 味噌汁にケチをつけたり、ハヤシライスを一緒に作ってくれたりする可愛い義弟の存在がるい子さんを励まします。

その他にも、沢山「なるほどな」と思う作品が沢山。

個人的には

 大夜会始末記・・・和をこよなく愛する婚家で突如洋食パーティを開く事になった若妻の奮戦記。

 公爵さまのオムライス・・・公爵様と女中さんの恋。

等が好きです。ぜひ全巻通して読んで下さい。

 

 

 

 


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