最初で最後の公演です。
神々の土地
作・演出が上田久美子さんですから期待していました。
期待通りというか、脚本も演出も舞台装置も今年一番の出来です。
さすが上田久美子!
ラスプーチン暗殺した人を題材に
ロマノフ家には興味があり、アレキサンドラ皇后やアナスタシアについては色々調べた事がありますが、ラスプーチン暗殺者を題材に取るとは。
ドミートリィ・パブロヴィチ・ロマノフ&フェリックス・ユスポフと言われてもぴんと来なくて。そういえばあのラスプーチンが誰に殺されたかなんて気にした事なかったなあ なんせラスプーチンといえば「影の皇帝」の代名詞。
二人は本当にお友達だったのね。
それとセルゲイ大公妃を絡めるなんて・・・あまり想像つかないよねーー
しょっぱなからセリフの応酬
オープニング前の流れる雲や雪のような風景が寒々しくて雰囲気が盛り上がっていた所にセルゲイ大公暗殺から入り、そこに開演アナウンスが入るという凝った作り。
しかもこの後、暫くはセリフのやりとりでストレートプレイ?と思うようなシーンが続き、主人公のドミートリィもいきなり狩りのシーンからさりげなく入る。
無論、そこに現れたイリナを強引にダンスに誘って上着をぽいっとするあたり、何ともキザですが、何と近衛兵の閲兵式で「これぞまー様」シーンが出てきておおっ!
大階段を効果的に使う
この近衛兵閲兵式に限らず、ラスプーチン暗殺シーンにも登場する大階段。
それに八百屋舞台が立体的に場面を盛り上げるんですね。
特にラスプーチン暗殺の所はアレキサンドラ皇后じゃないけど言葉が出ないというか、観客の息が一瞬止まりますよね。
勿論、その前にオリガとの婚約シーンにおいてラスプーチンが暴露しようとし、その時にイリナへのテロが起きて・・・
ラスプーチンに突っ込まれつつじっと睨むドミートリィの沈黙が効果的というか、あれこれいう男よりずっとかっこいいです。
盆がこんなに効果的とは
やはりラストシーンではないでしょうか。
一度銀橋で歌い切ったドミートリィが退場して、登場人物が踊って消えて、そこに盆がまわりつつ、ドミートリィとイリナが向かい合って立ち尽くす・・・その二人がやがて近づくところで幕。見事です。
下手にあれこれセットがない分、ロシアの荒涼とした大地が見えるようでした。
ロシア → ソ連 → ロシア
我が家の姫はペレストロイカ以降の生まれですので、ソ連を知りません。
劇中に名前が出てくるレーニンも知らないし、ロシア革命もよくわからない。
「オルフェウスの窓」を読みなさい・・・というしかありませんが。
私達以上に社会主義国ソヴィエト連邦の恐怖がわからないんですよね。
国の名前だけではなく、都市の名前も変わっていくのが複雑ですし。
ペテルブルク → ペトログラード → レニングラード → サンクトペテルブルク
だし。
アレキサンドラ皇后もイリナもドイツ人ですけど、イギリス育ちのドイツ人でロシアではイギリス人だと思っている人も多かったと思います。
上田久美子が描く主人公は頑固一徹
「月雲の皇子」「翼ある人々」「星逢一夜」「金色の砂漠」とみて来て、上田久美子が描く主人公はとにかく頑固一徹。
それが時代の流れに合う合わないより正義を通す方を選ぶという、かっこいいけど面倒な性格。
こんな上田作品を引き立たせたのは朝夏まなとを置いて他はないと思います。
一つ間違えばただのストーカーになるし、オタクっぽくなるし、暑苦しい人物になりそうなものをまー様が演じるといじらしくてしょうがなくなる。
フェリックス・ユスポフの必死の「亡命」説得も絶対に受けないだろうなと思いつつ、でも今はそんな時じゃないよ、逃げてよ・・と思ってしまう切なさがあるのです。まー様を失った上田先生、ちょっと苦労するかも。
ちょこっと残念な所
オリガに関してですが、オリガは現皇帝の第一皇女ですから、他の皇族達とは立場が違います。たとえ親戚であっても「オリガ」と呼ぶのはどうかなーーせめて「オリガ姫」じゃないのかなと思ったり。
セルゲイ大公妃は実際にはエリザヴェータという、アレキサンドラ皇后の姉らしいですね。そういう無茶な事も出来るのが宝塚のいい処だけどね。
出演者について
朝夏まなと・・・卒業を飾るにふさわしい役柄に巡りあえてよかったですね。男役として非常に大きく、優しく温かく宙組に君臨してくれました。軍服が似合うのが本当に素敵でした。
真風涼帆・・・本来、ロマノフ家転覆を企む悪役の立ち位置ではあるけど、最初から最後までドミトリィが好きで好きでしょうがない役に徹しました。
怜美うらら・・・未亡人とか苦労する女性がやたら似合う。「翼ある人々」再びのコンビで嬉しかったです。抑えた演技がよい感じでした。
愛月ひかる・・・あと一歩かなあ・・・かなり怖いラスプーチンではあると思うけど
やっぱりあと一歩かなあと。
星風まどか・・・次期トップにふさわしく体当たりなオリガで好感が持てました。
桜木みなと・・・本来はおっとりした人格だと思うけど、正反対の役をよく頑張りました。
クラシカルビジュー
稲葉太地は一体何をやってるんですか?つまんないよっ
この作品は朝夏まなとのさよならだってわかってるよね?
まー様の得意技は何?ダンスでしょ?ダンス!
さよならこそ「これぞまー様!」ってシーンを出さないでどーするっ
構成が中途半端で形だけさよならってみましたーーラストは「ジュピター」をオーケストラ風に。はい。おわりって。
こんな気のないショーを作る人だったっけか?
こんなんじゃ酒井先生二世になっちゃうよ。
「稲葉」って言っただけで客が入らなくなっちゃうよ。いいの?
ストーリー性を持たせるなら完結させなさいよ。
それぞれの特性をいかしたシーンを作りなさいよ!ねっ!
正直、まー様が辞めたら宙組は忘れそう
真風も芹香も愛月もよくみると同じ雰囲気だし、下級生には個性が強いのがみられないし(私がわからないだけです。きっと)
わくわく感がないっていうか、どうなるんだろうなあとちょっと心配です。
かといってこれ以上の組替えはしないで欲しいです。