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韓国史劇風小説「天皇の母」63(フィクションでした)

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「はい、赤ちゃんを抱っこして笑って下さい」

カメラが笑いを誘うと、マサコはスミヨの子供を抱き上げてにっこり笑った。

赤ちゃんはびっくりした目でカメラを見つめる。

「オワ、その抱き方はどうかと・・・・」

スミヨは正直、はらはらしながらみていた。

軽い気持ちで依頼を受けた。要請はユミコからだった。

何でもマサコがお妃候補に急浮上するらしいから、ぜひ「学友」として

マスコミ対応をしてくれと・・・・まるで雲をつかむような話。

スミヨだって週刊誌は読むから、オワダマサコが皇太子妃候補として

名前が挙がったことは知っている。

でも、彼女は「自分には関係ない」と言い切ったではないか。

それなのに、なぜ今になって?

「それはね。皇太子様がぜひにってしつこくおっしゃるからなの」

ユミコは自慢げにそう言った。

「うちのまあちゃんは外務省で官僚として生きたいって言ってたのよ。

でも皇太子様は忘れられないみたいで再三お誘いになるの。

相手が皇室じゃ断れないじゃない?

マサコも次第に心が向いてきてね。それで、あなたのような方が「学友」として

ついてくれたらまあちゃんも安心だと思うのよ。

何といってもデンフタ時代の同級生だし」

「同級生といっても親しくしていたわけはありませんし。何をどうすればいいのか」

スミヨは戸惑いながらそういうのが精一杯だった。

「大丈夫。こちらでシナリオは書くから。

普通、小学校時代とか高校時代とか詳しく覚えている子なんていないわよね。

だけど皇族が結婚する時って必ず「学友」が出て来て色々しゃべるじゃない?

それをやって欲しいの。

あなたがまあちゃんの学友で「親友」だったら、きっとあなたにも得があると

思うのよ」

「得ですか」

本当にやっかいだ。ヒサシとスミヨの父がたまたま同じ東大出身で

仲良くしていたからといっても、自分はマサコと仲がよかったわけではなかった。

あの子はいつも悪ふざけばかりして周囲を驚かせていたし

自分としてはそういう人って苦手だなと思っていたほど。

社会人になってからの付き合いもない。

それなのに、今になって小学校やら高校時代やらの写真をあれこれ

持ってこられて「このエピソードは何だった?」などと聞かれながら台詞を

つけていく作業。

そして当のマサコは今、自分の子供と一緒にビデオに写って楽しそうだ。

「オワ、本当に皇太子妃になるの?」

スミヨはつい質問してしまった。

カメラがストップし、マサコは子供を放り投げるようにスミヨに渡すと

意味ありげな笑い方をした。

「さあ」

「さあって・・・皇太子殿下はマサコさんのこと、好きなんでしょ。でもあなたは

その話、断ったはずよね」

「結婚そのものには興味がないっていうか?」

「じゃあ、何で今、こんなビデオを撮影しているの?」

「それはお父様がそうしろとおっしゃったからよ」

スミヨは絶句した。お父様の言うことなら何でも聞くのか・・・・・

「皇太子殿下の事は?」

「興味があるかも。日本一のお家柄だし。やっぱり皇太子妃っていえば

だれでもなれるものじゃないし」

「すみません、次はウインナーを炒めてくれますか?」

カメラマンが台所に入ったので、マサコは立ち上がりおもむろに

フライパンを火にかけた。

とはいえ、料理など一度もしたことのない娘である。油のしきかたも

わからないし、ウインナーをどういためたらいいのかすらわからない。

それでも「一応出来ます」と笑いながら「ふり」をする演技力には感嘆した。

そうはいっても、コンロの側に子供がよちよちと歩いて行った時には

ひやりとして、慌てて抱っこしたのだが、マサコは気にならないらしかった。

このビデオを一体、いつどんなときに使うのだろう。

「これからは頻繁に会わないといけないわね」

「オワ、皇太子妃になるってどんな事かわかってるの?皇室ってとても

古いしきたりがあってそれをきっちり守らなくちゃいけないし、いつも

色々な人が回りにいるのよ」

「それくらいなに?大した事じゃないんじゃない?皇室だって人間でしょ。

たかが学習院出身の集まりじゃないの」

よくわからないマサコの台詞にスミヨは頭を抱えた。

一番信じられなかったのは、こんな意味不明のビデオを嬉々として

撮影しているマサコの気持ちだ。

彼女は単純に自分が話題の中心になる事が嬉しいようだった。

 

ヒサシが外務省の事務次官に就任すると、事は急激に動き始めた。

宮内庁の職員に外務省からの出向組が増え、東宮侍従長になった

ヤマシタを始め、元ソ連大使のナカガワやヤナギヤなどがヒサシに近づき

密かに会合を重ねていた。

政治家などは空気を読むと動くのが早い。

つい先日まで「機密費」がどうの息を巻いていた連中が、週刊誌に

「皇太子妃オワダマサコさん再浮上」の記事が載ると、急に声を出さなくなった。

今回の記事は「皇太子の忘れられない恋心」が中心となっており

最初の出会いから6年も一つの思いを抱き続けている皇太子に

同情的な風合いになっている。

宮内庁内では相変わらずフジモリ宮内庁長官が反対しているし

皇族方もおおむね反対の立場をとっていた。

常盤会も当然学習院出身でないマサコには反対の立場をとっていた。

しかし、それらは全て「負け犬の遠吠え」もしくは「時代遅れの人達」

そのものの言い草だった。

華族制度が崩壊し、いまや身分制などないのだ。

皇室だってこっちが敬ってやってるから立場を維持できているのであって

いくらそんな連中が「血筋が」「家柄が」と言っても何も怖いことはない。

要は「権力」さえ持っていれば、そんなものはひねり潰せる。

 

ヒサシはヤマシタを通じてタカマドノミヤに接近した。

タカマドノミヤは「文化交流」を通じて外務省とは繋がりが深いし

お手元不如意の宮家の為に外務省は度々仕事を斡旋。

互いに「金と名声」を交換しあいながら均衡関係を保っていた。

それゆえに、皇太子とマサコの最初の出会いの場を提供したのは

タカマドノミヤだったのだが、その後は交流が途絶えていた。

そこにもう一度楔を打ち込むのだ。

末端宮家とはいっても皇族は皇族。これを味方につければ皇室内の

反対勢力をじわじわと追い詰める事が出来る。

特にタカマドノミヤの父であるミカサノミヤは先帝の末弟だが、今は

長老としてそれなりの発言権を持っている。

戦後は「赤い宮様」などと言われていたくせに、今は保守派の権化のように

マサコの入内を反対しているという。

その父親の牙城を崩すにはまず息子から・・・・・

 

勿論、タカマドノミヤはそこまでヒサシが考えていたとは思っていない。

ただ

「今後、皇太子殿下の恋の相談に乗って差し上げてください」

とヤマシタに頼まれ、「兄とも慕うタカマドノミヤのご意見なら聞くでしょう」

と持ち上げられれば悪い気はしない。

日頃、東宮職から見たら末端宮家なんて・・・と見下げた態度をされている・・・

と感じている宮にとっては、相手が下手に出るのは嬉しい。

「何が出来るの?」

「そうですね。まず、マサコさんの人柄をもう一度知るために、

ピアノリアイタルにご一緒されてはいかがでしょう」

「ああ・・・中村紘子の。一緒に行けばいいの?」

「はい」

宮は軽く応じた。今時有名な外務省の美人キャリアを侍られていると

なればこちらの知名度も上がるかもしれない。

案の定、会場に現われた自分達がマサコを連れている事に会場は

ざわつき、マスコミがしゃったーを切った。

アキシノノミヤケ誕生以来、こんなに注目されたのは初めてだった。

「お礼はいかようにもさせて頂きます」

ヒサシからのメッセージを受け取り、宮はにっこり微笑んだ。


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