1976年生まれ。直近は宙組「天は赤い河のほとり」(2018)
何と慶応義塾大学卒の才媛です。
宝塚史上3人目の女性演出家として2002年月組「SLAPSTICK」でデビュー。
植田景子も児玉明子も期待外れでがっかりしていたので、小柳奈穂子には心から期待をしていたわけですが、最初のこの作品でがっかり・・・
これは霧矢大夢のバウ初主演作品だというのに、小劇場風というのはわかるけどミュージカルとしてはどうなの?っていう作品で。
次の2003年雪組「アメリカン・パイ」でがっかりを通り越して「この人はそもそも宝塚が嫌いなんだな」と思いました。萩尾望都作品の中でもなぜ「アメリカン・パイ」なのかさっぱりわからず。
勿論、当時スタジオライフなどが「トーマの心臓」などを舞台化してはいたけど、宝塚の舞台にかける事を考えればあの作品はなかったんじゃないか?と。
しかも貴城けいと山科愛が可哀想になるほど退屈な作品で・・・貴城けいにとっても貴重なバウ作品だったのに飛躍のチャンスを逃したなと。
2004年花組「NAKED CITY」は彩吹真央の単独初主演作品で、彩吹真央と小柳奈穂子の相性はよかったようですけど、なにせ作品が暗いし、ストーリーもわかりにくいし、うーん・・・小柳奈穂子よ、お前もかと失望したのでした。
変化が出て来たのは2007年雪組「シルバーローズ・クロニクル」で、漸く宝塚らしさとは何かとわかって来たのかなと。この作品ははっきりいって主役より脇の方が目立つ作品で、主役をオタク設定にしたところが冒険というか、優等生風彩吹真央にとっては挑戦でした。
凰稀かなめの方が断然二枚目でかっこいい・・・とちょっと悲しかったけど、彩吹真央が正統派ではなく演技派としての実力を見せたものと思います。
2010年宙組「シャングリラー水之城の」は、かなり難しい作品ではありましたが、ここらへんで男役の動かし方がわかったというか、宝塚の番手意識も出て来たと思うし、主演コンビをどう表現したら観客に愛されるかわかったんでしょうね。
小柳奈穂子が小劇場的な作品から宝塚に適応しようとして選んだ路線は「乙女ちっくラブロマンス」
その記念すべき1作目が2011年星組「めぐり会いは再び」です。
この作品は大劇場デビュー作品でしたが、通常よりも時間が短く作られフィナーレまでついていました。
これがまあ大当たり。そりゃそうでしょ。イケメンの貴族とブリブリツインテールのお嬢様、イケメン従者と出来のいい侍女がそれぞれ入れ替わる話。婚約者候補、売れない作家、姫のお兄ちゃん、みーんなイケメンで個性が強い。
年上の女性に熱を上げる、ひっついてきた侍女がひそかに好き、ストーカーされている間に好きになる・・何でもありのコメディでこれぞ宝塚の少女漫画の世界とばかりに繰り広げられたストーリーが素晴らしかったんですね。
だけどやっぱり観客を魅了したのは柚希礼音と夢咲ねねのラブシーンでしょう。
まあ、そのおかげで、翌年にはなんと続編まで上演され(宝塚としては極めて珍しいケース)それだけ小柳への期待度高いんだと思いました。
バウ作品でも2011年月組「アリスの恋人」は「不思議の国のアリス」をベースに少女チックなラブラブ作品に仕上がっていましたし、そのノリで星組の台湾公演「怪盗楚留香外伝ー花盗人」まで担当。
ところがオリジナル作品はここまでで、これ以降は焼き直しが目立つようになります。
2012年雪組「フットルース」は映画の焼き直し
2013年雪組「SHALL WE DANCE」も映画の焼き直し
2015年雪組「ルパン三世ー王妃の首飾りを追え」はアニメ
2015年星組「キャッチミー・イフユーキャン」も映画
2016年宙組「エリザベート」は演出のみで、ポスターにだけ小柳風が見えます。
2017年星組「オーム・シャンティ・オーム」も映画
2017年雪組「幕末太陽傳」も映画
2017年花組「はいからさんが通る」は少女漫画
2018年宙組「天は赤い河のほとり」は少女漫画
オリジナルっぽいのは2014年星組「かもめ」ですが、これは完璧にチェーホフだし、2015年専科「オイディプス王」はギリシャ悲劇だし。
それでも映画やアニメの焼き直しするよりずっとずっといいと思うんです。
何でこんなに映画やアニメの舞台化ばかりするのか、それが本人の希望なのかわかrませんけど、段々小柳らしさがなくなってきてるのは確かです。
正直、映画やアニメ、少女漫画をミュージカルかして1時間半ないし2時間半の枠におさめるのはものすごく大変です。あの「ベルサイユのばら」だって、観客がストーリーを知っているという前提で作られているのです。
全く話を知らない人が見ても矛盾がないように作る、あるいはまとめるというのは至難の業というか、話が長くなればなる程難しい。
小池修一郎が「るろうに剣心」「銀河英雄伝説」で失敗したのは、結果的にまとめきれなかったせいだし、「ポーの一族」はエドガーに絞って、重要な妹のメリーベルのエピソードをあっさりカットするありさま。
でもそうするしかないんですよね。
「SHALL WE DANCE」あたりは設定をアメリカに持って行った事である程度オリジナル性を出せたけど、他の作品はひたすら忠実に、だけど手短に話をまとめようとするあまりいに、もっとも大事な「面白さ」「感動」を忘れているような気がします。
「はいからさんが通る」はあの長い作品をよくこれだけまとめた・・・と思うけど、結果的に中身がない。気が付けば少尉と紅緒のラブシーンだけが印象に残るものでした。(原作を知らない人でもわかったのはすごいと誰もが言いますが、そういう問題なのかな)
ここらへんから「ラブシーンさえやってれば観客は満足する」と思い込んでいないか?とちょっと疑問だったんです。そしたら見事に「天は赤い・・」でやってくれましたよね。女の子が胸キュンするシーンの連続。中身がない。これじゃBL小説と変わらないじゃない?
誰でも主演コンビがラブラブでかっこいいのは嬉しいけど「柚香光がかっこいい!」「真風涼帆がかっこいい」だけで全てが許されるのが宝塚じゃないですよ。そこに軸となるドラマがあり、起承転結がありテーマがあり感動がないと。
「めぐり会いは再び」のラブシーンがおおウケしたのは柚希のちょっとした工夫でしたよね。エッセンスはそういうちょこっとしたところでいいのにやたら壁ドンだ腕くいだって・・ねえ。
そろそろ目を覚ましてちゃんとした作品を見せて欲しいです。
稲葉太地 → 守りに入るのは早過ぎでしょ!!
直近は月組「カルーセル輪舞曲」(2017)宙組「クラシカルビジュー」(2017)
2006年花組「Appartement Cinema」を見た時に、正直ストーリーのお粗末さに腹が立つやらあきれるやら、金返せだなあーと思った記憶があります。
稲葉太地とか鈴木圭あたりは基本的な脚本の書き方を知らないままで作品を作り、見直しもせずに舞台化しているという印象なんですね。
2010年雪組のショー「Carnevale睡夢 - 水面に浮かぶ風景 -」はなかなか面白い作品ではあったけど、「え?そこで燕尾?大階段は?」みたいなセオリー無視の部分がちょっと気になったんです。
それでも結構期待していたのですが
2011年宙組「ルナロッサー夜に惑う旅人」
2012年星組「Celebrity -セレブリティ-」
2013年花組「Mr. Swing!」
ここまでが全部ペケ。組風がわかってないのと、選曲とか目玉のなさとか・・・ちょっとだらだらした印象を受けました。
それじゃまずいと彼自身思ったんでしょうね。
2014年星組「パッショネイト宝塚!」では大目玉に柚希礼音と鶴美真夕のラテンダンスをぶつけてきて成功。
途中だらだらしても、一つ印象的なシーンを作ればいいって思ったのでしょう。
2015年月組「GOLDEN JAZZ」では愛希れいかにそれをさせてました。
2016年雪組「Greatest HITS!」では望海風斗が担当。
2017年月組「カルーセル輪舞曲(ロンド)」では・・・あれ?愛希れいかがムチ持ってたシーンだった?お披露目だったし、お正月公演だったし、めでたさ満載だったらいいのにと思いましたが、やっぱり選曲と振付がもんだいですかね。
2017年宙組「クラシカル ビジュー」は宝石にまつわるショーだったのですが、踊れるまー様にはもっともっと踊って欲しかったし、真風涼帆とのへんてこBLシーンはごめんこうむりたかったです。
要するに早々と守りの姿勢に入ったのが稲葉太地なんです。
まだ若いし、色々な工夫とか創造の翼を広げて欲しいのに、どこかでみたシーンの連続だったり、唐突に踊りまくるシーンをいれたりとすでにネタが枯渇している?
担当する組、担当するスターの個性とか得意わざとか、そういうものをもっと突き詰めて考えてからショーを作って欲しいです。