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初心者の為の宝塚講座 20 スター編5

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 宙組

 姿月あさと(花總まり)・・・トップスターになりたくなかったのに

73期として花組に配属。1993年、月組に組替え。1998年宙組トップに。

宝塚に入る以上、誰でも一度はトップスターを夢に見て、その為に努力精進するものだ・・・と書いたのは岸香織さんです。だから姿月あさとに「トップになんかなりたくなかったのに」と言われた時はかなり驚いたし呆れたようです。

じゃあ、姿月あさとはどうして宝塚に入ったのかといえば、やっぱり踊りたかったしみんなと仲良くわいわいやっていたかったんですよね。

ところが月組に来て、ちょこっと真琴つばさを追いこして月組トップへの道が示されたり、宙組のトップに抜擢されたりと、心の準備をしていず、尚且つ野心もないのに回りが勝手に持ち上げてくると感じたのではないでしょうか?

背が高く、見た目よく歌もダンスもとても上手。これで路線に乗らないわけがないんですけど、彼女に欠けていたもの、それは演技力です。

ダンスや歌に自信がある人ってそればかり上手になろうとして肝心の演技力を磨かない人が多いのですが、姿月あさともその一人で、天海祐希の「ミー&マイガール」にしても久世星佳の「CANCAN」にしてもセリフ回しが幼稚というか、学芸会みたいな雰囲気があって、いつもあちゃーーって感じでした。

でもどういうわけか番手ばかりが上がっていく・・・久世星佳のさよなら公演「バロンの末裔」では完璧に真琴つばさを追い越していましたし、事と次第によっては番狂わせもあるのかな?と思ったり?

真琴つばさのお披露目「エル・ドラード」ではワルパを演じたのですが、東京公演の紫吹淳のワルパの方が皇帝らしいなと感じましたしね。

1998年、宙組発足と同時に初代のトップスターに就任したのですが、そのプレッシャーはかなり大きいものだったと思います。

でも相変わらず「エクスカリバー」では棒読みみたいなセリフ回し。「シトラスの風」では「明日へのエナジー」がなかったら代表作にもならなかったでしょう。

以前から何度も書いていますが、当時の宙組はかなり冷たい印象があったんです。劇場に入るなり冷風が吹いているような?

それはどうしてなのか?と色々考えたんですが、まずは姿月あさとと花總まりの相性が悪かったこと。互いに目を合わせることなく勝手に演技しているんですね。

それと2番手3番手が技術的に未熟であった事も要因だったかも。

「エリザベート」の姿月トートは悩めるトート君という感じ、またやたら涙を流すエリザベートにかなり違和感を抱いたものです。

「激情」は初演当時はセットが浮いていたし、花總まりがどうみてもカルメンじゃないでしょって事で評価も低かったんですが芸術祭賞演劇部門優秀賞を受賞したんですね。

そしてわずか2年にも満たずに姿月あさとはあっさり退団を決めてしまいます。

考えてみると宙組ってこの2年でもかなり人が変わっています。朝海ひかるが雪組へ組替えになり樹里咲穂が入ってきたり、新人公演主役をやった人から退団していったりとか。落ち着きがない組というか、今一つ息があってないなと感じていました。

「砂漠の黒薔薇」は中東の話なのに時代劇のノリでこれまた姿月あさとの演技力のなさが目立ち、かえって和央ようかの方がいい味を出していました。

私が気になったのは、退団する寂しさをみじんもみせずに退団してしまった事で。

何だろうな・・・この清々しさはと。

その後、すぐに結婚して今はお幸せ?お仕事も順調のようですしめでたしめでたしなんですけどね。

 

 和央ようか(花總まり)・・・女帝の夫と呼ばれて

74期で雪組に配属 →1998年宙組へ組替え

背が高くて目が多きくて一目で印象に残る和央ようかは、「エリザベート」東京公演のルドルフ役で初めて見ました。とてもかっこよかったし耽美的だと感じました。

ところが高嶺ふぶきのさよなら公演「仮面のロマネスク」では何というか出てくるたびに不愉快で・・・これがメルトュイユ夫人が復讐したい相手か?嘘!みたいな。それは宙組の2番手になってからもそうで、「男役欠乏症」とか「フランツのマントがねんねこに見える」とまで書かれてしまう程。

宙組に来て自分がトップになるまでは、あまりやる気がなかったというか生気がなかったというか?そんな感じでしたね。

2000年、初恋の相手である花總まりとやっとのことで結ばれて(?)宙組トップスターに就任。以後6年にも渡って妻一筋で頑張りました。

お披露目の「望郷は海をこえて」これがまあなんともお披露目にふさわしくない酷い作品でしたけど、これはきっと美しい花總まりのエカテリーナ姿を見せたかったのかなと思います。

2002年の「鳳凰伝」も完璧に花總まりありきでした。

やっと存在感を発揮できたのは2004年「ファントム」でここで退団してくれていたら、怪我もせず円満に歴史に名を遺すトップスターコンビでいられたかもしれないのにと当時は思いました。

和央ようかの代表作といえばこの「ファントム」と1999年「CROSSROAD」2004年「BOXMAN」があげられます。

「CROSSROAD」は勿論ストーリーもよかったんですけど、唯一花總まり以外の人と共演した(遠野あすか)貴重な作品です。「BOXMAN」も主役として花總に負けない存在感を出していたと思います。偶然にも二作品は、正塚先生でもしかしたら彼と相性がよかったのかもしれませんね。

2006年「NEVER SAY GOODBYE」は主役なのにどこか傍観者のようでもありましたが、ともあれ、これが今の旦那さんとの出会いの作品としてみればよかったんだろうと思います。和央ようかも花總まりも最近の宝塚には珍しく長いトップ生活を送ったわけですが、その間、若手がどんどん退団し、しょうがないので次々よその組からトップを引っ張ってこなくてはならず、生え抜きが一人もいません。

なぜ新人公演主役を演じた人から退団していったのか、組長も副組長もやたら在任がながく、結局実力派は退団させられていくような気がしました。

宝塚生活のほとんどを花總まりと過ごし、いつの間にか「女帝の夫」と呼ばれ、退団してからその女帝は陰になり一生懸命に和央を立てて頑張っていたけど、今は花總は帝劇に欠かせないヒロイン女優となり、和央はワイルドホーン夫人として裕福で贅沢な生活を謳歌しています。でも外国へ行ったら「ワイルドホーンの〇〇目の妻」って言われるんだろうなあ。それもまあ一つの生き方ですけどね。

 

 貴城けい(紫城るい)・・・悲運の貴公子

78期で雪組配属 → 2006年宙組トップに就任

以前も書きましたが78期というのは運が悪い期です。なぜって77期がいたから。

77期はなかなか退団しなかったし、春野寿美礼・安蘭けい・成瀬こうき・朝海ひかる・花總まりらがおり、下級生の頃からトップに足りない部分を補う役割をさせられていました。でも78期も職人的な期でもあり、瀬奈じゅん・大空祐飛・貴城けい・夢輝のあ・檀れいと決してそん色はなかったと思うんです。

ただ、貴城けいの可哀想だったことは、雪組に「だんご3兄弟」が来たことで実力派あるのに大幅に番手を落とされたことです。

そういう事に耐えつつも2001年雪組「アンナ・カレーニナ」におけるカレーニンは素晴らしい出来栄えで、コスチュームも似合うし、大人の役がぴったりで本当によかったと思います。

2003年、朝海ひかるお披露目「春麗の淡き光に」では主役の朝海よりも源頼光の方が演技力や所作が上で、まるでどっちがトップかわからないなと思った程です。

ショー「JOYFUL」に置いてもしっかりと2番手という地位を固めたなと思いました。

だけど2003年バウ主演「アメリカン・パイ」があまりよくなく、っていうか貴城けいのよさを出せなかった事で足踏み状態になります。

2005年、「霧のミラノ」が最後になって宙組へ組替え。まさかここで水夏希を次の雪組トップにするなんて考えられない事で私は大いに怒ったし悲しかったです。

確かに融通性がない純正雪組スターではありました。でも軍服に似合う、コスチュームが似合う、あそこまで美しくこなすスターは貴重であったと思いますし、彼女が雪でトップになっていたら、沢山のコスチューム物を見る事が出来たかもしれません。

2006年に落下傘で宙組トップになった途端に退団発表。

匠ひびき、絵麻緒ゆうに続く3人目の1作トップで、それも何で坂本竜馬をやらせるかなあと・・・

退団してからはずーーっと綺麗なお姉さんで結婚もして女優としても活躍して嬉しい限りですが、もうちょっとトップ生活を送って欲しかったです。

 

 大和悠河(陽月華)…結局大地真央にも天海祐希にもなれなかった

 81期→月組配属。2003年宙組に組替え。2007年宙組トップスター就任

とにかく月組に配属された時から「大地真央に似ている」とか「第二の天海祐希」とか言われて持ち上げられていたのは事実です。1996年に阪急電鉄ポスターに抜擢されていたし、久世星佳お披露目ショー「マンハッタン不夜城」でも真ん中にいたし。

97年の「TCAスペシャル」でも女装して踊っていたし、この年には「エル・ドラード」新人公演主役に選ばれ、「ワン・モアタイム」でダブル主演。

98年には「シンデレラ・ロック」で単独主演を飾り、2001年には新人公演6度目の主演を果たして卒業。

でも彼女の運命は霧矢大夢が組替えしてきた時からゆっくりと変わっていったんじゃないでしょうか。

なんせ霧矢は何でもできる子。おまけに大和より1期上。いつでもぽーんと抜かされてもおかしくない状態。

97年月組「NON-STOP」では可愛いサーカスの天使を演じていた大和も学年が上がるにしたがって大人っぽさを出さなくてはいけない。でもなかなかそれが出来なかったんですよね。99年「十二夜」でも出来が悪かったわけじゃないけど今一つ。

2000年に「更に狂わじ」で霧矢とダブル主演をするも、内容が難しすぎて代表作になりえなかった。

でもぱっと見華があるし、いつの間にか月組の顔になっていた事は事実ですよね。

2002年「ガイズ&ドールズ」のネイサンはかなり無理してたけど、2003年に特出で星組に出演、「雨に唄えば」と2004年の「1914」の時は大和の華が大いに役にたったと思います。もしかして星組向きだった?

トップになってからは何だか心もとない状態が続き、あっという間に退団してしまったような印象があります。

今や帝国ホテルに居を構え(?)めちゃくちゃお金持ちな生活をする「セレブな元ジェンヌ」と言われていますが、大和悠河、本当は宝塚で何をしたかったのか?

 大空祐飛(野々すみ花)・・・遅咲きすぎたトプスターが組を救う

78期で月組配属。2008年花組へ組替え。2009年宙組トップに就任。

待てば海路の日和ありという言葉がぴったりのスター、それは大空祐飛。残り物には福がある、負けるが勝ち、ことわざしか浮かんでこない人です。

私が宝塚を見始めたのが1996年くらいからですが、その時荒大空祐飛の名前も顔もわかっていたし、何となく目が離せない、綺麗で笑顔が素敵なスターだと思っていました。どうしてもっと上にいかないんだろうとも。

96年当時、上には樹里咲穂や成瀬こうきがいて、下には水夏希に大和悠河。そんな中で大空の地位は常に「路線に乗せるべきかどうか悩む存在」だったと思います。

樹里も成瀬も水も大和もいなくなって残ったのは同期の瀬奈じゅんと霧矢大夢だった。歌劇団も正直大空の扱いをどうしようかと思っていたんじゃないでしょうか?

とりあえずトップ就任の霧矢大夢の邪魔にならないように花組へ異動させたけけど、今度は宙組に空きが出来たのでこれはいいとご祝儀トップみたいな?

何でここまで長い道のりを歩く結果になったのかといえば、大空祐飛の持つムードが他のジェンヌとちょっと違っていたからです。

学年が若いころからミステリアスで大人っぽい。だけど笑顔は純粋。相反したムードを持っていて似合う役はなかなかなかったと。

コメディも向かないし、ヒーローというよりもっと大人の策士タイプで、だから「LAST PARTY」はよい出来だったと思いますし、「愛と死のアラビア」でもまさに頼りがいがある役をしっかり演じていました。この学年になってやっと似合う役が出て来た。その代表が2009年花組「太王四神記」のヨン・ホゲだったと思います。

彼女のヨン・ホゲは愛と憎しみの間で悩みつつ、避けられない運命に向かって行くことがよくわかる演じ方でしたし、なによりビジュアルのよさが勝っていました。

2009年宙組お披露目「カサブランカ」では、まさに最も似合う「大人の男性」を演じきって名作にしました。

大空祐飛がトップになって宙組は確実に変わりました。それまでなかた連帯感のようなものが生まれ、組子達が大空祐飛を中心にまとまり始めたのです。これは宙組始まって以来のことで、やっと宙組生にも目指すべきお手本が出来たということではないでしょうか?

大空の宙組に対する貢献度は本当に高かったと思います。

 

 凰稀かなめ(実咲凛音)・・・階段を駆け上がりすぎて何もつかめなかった

86期で雪組配属。2009年星組に組替え。2011年宙組に組替え。

お友達から「気になる男役を見つけました」とメールを貰って、その後一緒に観劇した時に教えられたのが凰稀かなめでした。背が高くてビジュアルが最高の、新人時代から抜擢をされている人です。

凰稀かなめの宝塚生活を振り返り、一言でいうと「挫折知らず」ですね。

スカイフェアリーズに選ばれ、「霧のミラノ」で新人公演初主演。2007年「エリザベート」では早々にルドルフを演じ、アクア5のメンバーにも選ばれてメディアへの露出も増えました。

星組へは2番手就任のご栄転。宙組へは次期トップとしてのご栄転。

まさにトントン拍子にトップの階段を駆け上がって行ったという印象です。

彼女の代表作は何と言っても2010年星組「ロミオとジュリエット」のティボルトではないかと思います。あの時の目が座った感じ。愛され感のないなげやりな感じがとても似合っていました。

当時からどちらかというと悪役が似合っていたんでしょうね。

「太王四神記」のヨン・ホゲも大空祐飛とはまた別な魅力で見せてくれたと思います。

「モンテ・クリスト伯」はまさに凰稀かなめにピッタリで、二面性のある役が本当にあっていたんだなと思います。

ただあまりにもトントン拍子すぎて「男役」を究める時間はなかったようです。

もうちょと先を見越して精進して欲しかったと思います。

 朝夏まなと(実咲凛音)・・・優しさで包んだ組

88期として花組配属。2012年宙組に組替え。2015年宙組トップ就任。

正直、花組の時はあまりよく見ていなかったというか、とりあえず名前を見たものの顔と一致することがなかったんですね。

所が2012年「銀河英雄伝説」のキルヒアイスがたちまち評判になり、一気にトップへの切符を確実にしたと思います。実際キルヒアイスは主役よりいい役でしたよね。優しくて忠誠心があって最後は主人公の為に死ぬなんておいしい役、これをものにしない手はありません。

根っからの善人が似合う朝夏まなとは「モンテ・クリスト伯」の悪役は散々でしたけど、上田久美子との出会いが彼女を変えたような気がします。

2014年「翼ある人々」はブラームスの青春を描いた作品でしたが、シューマンに師事し、その妻クララに片思いをしつつも決して野蛮な態度に出ず、ひたすら尽くす方に回る・・・まるで「ベルばら」のアンドレです。

そういう役をさらりとこなす事が出来るというのは朝夏まなとの大きな資質ではないでしょうか?

それが2017年「神々の土地」で花開き、名作になったと思うと本当に嬉しいです。

無論、朝夏まなとのダンスも好きでした。決して朝海ひかるのような難易度を競うものではないけれど、それでも技術的に感じるものがあったと思います。

元々綺麗な人なので女優になっても大丈夫。これからの活躍を期待します。

 

 真風涼帆(星風まどか)・・・ビジュアル系トップ

92期として星組配属。2015年宙組へ組替え。2017年宙組トップ。

まだまだこれからの人ですから。

星組に配属され新人公演の主役を演じ、バウの主演を果たし、3番手まで上がってもどこか自信なさげで、いつも「怖いよ」という声が聞こえてきそうな顔をしていました。ところが宙組に行った途端に生き生きと2番手を務めるようになった。

よっぽど朝夏まなとと仲良しになれたんでしょう。それからは芝居においてもショーにおいてもどこかBLっぽいというか、二人の親密度をアピールする作品が続きましたよね。

では単独トップになってどうなのか?

まだ未知数としかいいようがありません。今はまだ・・・

 


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