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韓国史劇風小説「天皇の母」近未来編 1

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「あーあ。かったるいよな」と俺は一緒に来ている記者仲間に呟いた。

「しょうがねえだろ。仕事だし」

「どうせやらせだろうが」

いつか世界を揺るがせるような記者になって・・・なんて夢を持っていたのは小さい頃。気が付いたら「忖度」のマスコミ界にあって、しかも親が宮内庁職員だからという理由で宮内庁記者会に回されちまった俺。

そりゃ、家柄が家柄だから小さい頃からそういう雲上人とは多少の付き合いもあるし、人には言えない話も多少知ってる。

それでも、だからって俺をこういう所に送り込むなんて将来はおさき真っ暗だよな。

国際的な報道の方がどんなに面白いかしれやしない。でも我慢しろとさ。

「皆さま、間もなくトシノミヤさまがお出ましになります」

ざわついていたのが急にしんとなった。宮内記者会は各新聞社やテレビ局などから選ばれた者だけが入り、取材することが許される。即位や退位がない限りは結構退屈な場所だ。

3年前に前代未聞の「天皇の退位」というものがあって以来・・・っていうか、本当は憲法上にも皇室典範にも「退位」の条項はないのだ。

なぜって?江戸時代までは気まぐれに退位する天皇が多かったせいだ。その度に元号が変わるし、「退位」を幕府への脅しにつかう天皇もいたりして、明治の世になって「1天皇1元制」が敷かれ、「退位」はなくなったのだ。

ところが、5年前に突如天皇が「退位したい」と言い出し、80を過ぎた年齢にみんな騙されて無理無理な形で「退位」が整ってしまった。

今や上皇と上皇后は新築した元東宮御所(何でそうなるかわからないけど住み慣れているんだとさ)に二人きりで60人体制の悠々自適の生活を送っている。

噂によれば上皇はとっくにボケちまって仙洞御所の庭を徘徊しているとかいう噂だが、表に出てくるときは上皇后がしっかりと腕をとってささやいているからそんな風には見えない。

一部のネットユーザーからは「どっちが上だかわからない」と言われているが、上皇后の頭の中はいまだに半世紀以上前のいい思い出に浸っているのだろう。そういう意味じゃこっちもぼけているのかもな(その割には毎日のように音楽会に出るが)

4年前に起こった皇嗣一家の長女、マコ姫の恋愛スキャンダルは惨めな結果になった。いい女程悪い男に惚れるというがそれはまさに本当だなあ。どうしてああもダメな男が好きなんだか?

姫はすっかり結婚を諦め、ひたすら「公務」に打ち込んでいる。そんな皇嗣一家には心無い中傷がこれでもかと言う程、雑誌を通して降り注ぎ、さすがの俺もマスコミ不信だよ。別にマコ姫が悪いわけじゃない。相手が悪いに決まっているのに。

そして今日はいよいよ、もうすぐ成年式を迎える天皇家の長女、トシノミヤの記者会見がある。

思えば内親王の母、つまりマサコさが適応障害になってから25年も経つんだが、未だに「体調の波」とやらは治らない。というか治す気がない。

そりゃ自分に甘い人間というのは、絶対に医者も薬もサプリでさえ信じないくせに自分は悪くないと思っているから、生活態度の改善なんか見込めるわけがないのだ。

よく父が言ってたなあ。「皇族は国民の手本にならなくては」と。

ところが今や、でっぷり太って季節ごとに皇后と御用邸巡りをする天皇は、こっそり国民に笑われているし、もはやどこの国からも招待が来ない。たまに政治的発言をする時は「上皇陛下の心残りである韓国へ思いをいたします」とかなんとか言って保守派を怒らせるのだ。

こんなことを言えば共産党がもろ手を挙げて歓び「天皇陛下万歳!」と叫ぶのはわかりきっているが、その気持ち悪い程の持ち上げ様が天皇と皇后には嬉しくてたまらないらしい。

もはや国民の誰もが期待しない天皇と皇后。だけど、本人達はそれを知らないから呑気に手なんか振っていられるんだろうなあ。

東京五輪以降、日本はさらに景気が悪化して老人たちの生活の質の低下は日々目に余る程だ。若者は減り言葉のわからない外国人と、名ばかりの日本人ばかりが闊歩して、自分の国に住んでいるのにコミュニケーションをとるのが大変になった。

日本はそんな国じゃなかった筈なのに、どこぞの多国籍国家のようになってしまったのだ。それこそが天皇の唱える「グローバリズム」とやらだというから腹が立つな。

こんな時に必要なのはナショナリズムなのに、その言葉は今も禁句だ。

「ではトシノミヤ様のお出ましです」

右側のドアが開き、もうすぐ20歳を迎える内親王が入ってきた。


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