星組のトップスターは沢山見送って来たと思いますが今回程、いなくなることが悲しいと思ったスターは・・・久しぶりで、姿を見るだけで泣きそう。
ファンがそうであるなら組子は・・・これまたみんな泣いちゃう。ふとした拍子にないてしまうそうです。
なぜ紅ゆずるはこんなに人を泣かせるのか。
やっぱり舞台に対しての真摯な姿に心打たれたからじゃないのかな。
ここ2代ほど、レジェンドありベテランありのトップスターを迎え、一芸に秀でて観客を魅了するというのが定番でした。
しかし、技術的には特技というものがほとんどない紅ゆずる程には誰も感動させられなかった。ここが作られたスターと自然発生的なスターとの違いではないでしょうか。
トップになるまではそんなに偉大な人とは思わず・・・・自分の見る目のなさが情けないと反省しています。
確かに紅ゆずるの前にはレジェンド柚希礼音がおり、印象が強かったせいもあるんでしょうけどね。
先日、友人から紅ゆずるについて「昭和のスターみたい」と言われ、成程と思いました。
じゃあ、いわゆる昭和のトップスターってどんな共通点が?
技術的に秀でている訳ではない
サービス精神が旺盛
そこに立っているだけでいい
星組でいうと鳳蘭・麻路さき・湖月わたる・・・路線なんですよね。
「歌が」「ダンスが」と言われつつも「そんなん上手い人にさせたらええねん!」って言い返すしかない(ファンとしては)
舞台を見る度「今日は何をやってくれるんだろう」と期待してしまう。そんなスターですよね。
紅ゆずる 下級生のころ
88期生。初舞台が「プラハの春」「ラッキースター」
これ、見てましたよ。バリバリ夢輝のあファン時代ですから毎週劇場に通っていた時期なんです。そして星組ファンとしては黒歴史ですわね。
新専科制度で香寿たつきがいきなり星組に来てトップになり、安蘭けいら雪組からの組替えも多く(夢輝のあもどっちかっていうと雪系ですし)どこの組を見ているのかわからない状態。
2番手も安蘭なの?彩輝直なの?と錯綜していた時に入団してそのまま星に入ったんですよね。当時、新人公演と言えば涼紫央で、香寿たつきとはあまりにも正反対のタイプで損をしていたなあと。
しかもすでに柚希礼音の台頭が始まっており・・85期と夢乃聖夏ら86期が下級生として頑張っていたんですよね (下級生の入り待ちしてた頃が懐かしい)
じゃあ、紅ゆずるの名前はどこで聞いたのか?というと、安蘭けい主演の「雨に唄えば」の時に「朝澄けいに似ている男役がいる」ということでオペラグラスでしげしげと見た・・のが最初です。
確かに当時、あの切れ長の目は朝澄けいっぽかったかなあ。
でも朝澄は王子様風、81期の真飛聖はワル風で、後ろに立ってただけの紅がどういう印象かと言われても「別に」って感じでした。
先日も友人と話したのですが、紅ゆずるの上下には結構実力派の男役がいたり、組替えで来たりしていて、その中でも麻尋しゅんが別格で何もかも上手でした。
宙組から和涼華も来て、イケメン揃いだったような?
「グラフ」によると、この頃の紅は叱られてばかりの劣等生だったそうです。
それ、何となくわかります。
いつの間にか「スカーレット・ピンパーネル」の新人公演主役を演じていたけど、スカステで見る限り、面白いけど下手!って感じでしたから。
化粧も下手なら歌も下手、演技もイマイチ。
背は高いし目立つから下手だと余計に怒りたくなるんでしょうね。演出家としては。
ただ、何となく目につくようになったのが個人的には「リラの壁の囚人たち」でした。この作品は大昔にビデオで見ました。
舞台が見事に花だらけでびっくりした記憶があります。しかも1場芝居というミュージカルには珍しい形でした。主役は涼風真世。紅ゆずるが演じた車椅子のDV夫は久世星佳が演じていました。あの演技が上手な久世星佳をして「ヒステリック」としか印象がなかったんです。
再演を見て、舞台が地味になったなと感じました。テーマが大きくて深くて、今時のヅカファンには受けるのかな思ったり。
そして このDVジョルジュは怒鳴ってばっかり。
傷痍軍人でしたっけ?身動きできないつらさを妻にぶつけているだけ。そこから逃げる事の出来ない彼女の悲しさも感じましたが。
この作品で「うまいな」と思ったのは実は天寿光希の方で・・・ここらへんから彼女に注目するようになりました。
思えば、この頃の紅ゆずるは自分の個性を生かし切れていなかったというか、何が悪いのかちょっとわからなかったのかなという気がします。2枚目としては下級生の方が上って感じで、このまま3枚目をやるの?と思ったり。
多分、回りも彼女をどう扱ったらいいのかわからなかったかも。
そんな時に巡り合った「ロミオとジュリエット」のマーキューシオ。
これはまさに紅の持ち味がそのまま役になったようなお得な役で、後にベンボーリオやティボルトを演じるけれどマーキューシオ以上によい評価は出来ません。
相変わらず歌は・・だったけど、目が座った凰稀かなめのティボルトに対して子供っぽくがむしゃらに向かっていくマーキューシオが対照的で、だから二人の喧嘩のシーンがとても生きたと思っています。
ここらへんから順調に階段を上り始めるのですが・・・?
あ、確かにいつの間にか3番手になってましたね。
小池修一郎恐るべしかなあ。