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韓国史劇風小説「天皇の母」71(フィクションだね)

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12月20日。

「誰が結婚を承諾したって?」

天皇は思わず椅子からずり落ちそうになった。じっとヤマシタの顔を見る。

ヤマシタはこういう反応が来るだろう事を予測していたので、慌てるでもなく

ただ淡々と報告しようと決心していた。

「オワダマサコさんです。東宮様のプロポーズに承諾したとオワダ家から連絡が」

「まだあの話は続いていたの?」

天皇は皇后の顔を見る。

皇后は「自身で説得を」と言われた事に心から気を悪くしていたので

ヤマシタの方を見なかった。

今回の事では本当にオワダ家の見識を疑っていたしむしろダメになってほっとしていた。

それなのに。

「皇太子殿下から直接のご報告があると思います」

何で自分で参内して報告しないのか?

天皇は「筋が違う!」と叫んだ。

「それはまあ・・色々ございましたので。殿下は今、ご公務にお忙しいので

一足早く私に伝えるようにと。ですから陛下。東宮様とお話を」

天皇が受けたショックは計り知れないものだった。

 

12月25日。

ようやく皇太子との食事会。

天皇・皇后が東宮御所に着いたのは夜の7時すぎ。それから約2時間

夕食を共にして皇太子の報告を聞いた。

皇太子は嬉しそうに「マサコさんがオーケーしてくれました」と報告。

「でも、いきなり言われても。私達は聞いてなかったし」

天皇が不機嫌に黙り込んでいるので皇后がとりなす形に。

「ですから今日、こうやってご報告を」

「でもそれはまず御所に参内して」

皇后の様子にさすがの皇太子も何だか変だと思ったらしい。

「この結婚、反対なのですか?」と言い出した。

「反対も何も終わった事だと思っていたから。過程をきちんと報告せずに

いきなり決まったと言われて承諾できる話ではない」

父の厳しい言葉に皇太子は少なからずショックを受けた。

誰もが待望する自分の結婚。

それも世界一のキャリアを持つ女性との結婚についてこんな反応をするとは。

「よく考えてみましょうね」

夕食が終わり、お茶の為に別室に向かいながら皇后は優しく言った。

「おたあさまはアーヤの時はすぐにオーケーしたのに」

皇太子は口をとがらせる。天皇はまたも黙ったまま。

そこに侍従が駆け込んできた。

「あの・・・お客様が」

「お客?」

お客?天皇・皇后が東宮御所にいるこの時間に客?二人は目を見合わせる。

でも皇太子はにこにこしながら「ああ。お通しして」と言ったのでさらにびっくりする。

「一体誰が?」

「オワダさんですよ」

言う間もなく、満面の笑みで登場したのはマサコだった。

時計の針は9時を過ぎていた。

未婚の女性がこんなに夜遅くに誰かの家を訪問するというだけでも非常識なのに

ましてやここは東宮御所。しかも両陛下までいる。

「こんにちは」

物怖じせずマサコは言った。そのフランクな物言いにさらに仰天する。

(この場合、せめて「こんばんは」ではないかと)

「よく来てくれましたね。両陛下にご紹介しましょう。オワダマサコさんです」

・・・・こういう場合、どんなリアクションをすればいいのか。

一瞬、天皇は思考が停止してしまった。

天皇も皇后も「誰かに会う」時には、あらかじめ双方の予定が検討され

時間も決められる。

ハプニング的に突然の来客もなきにしもあらずだが、でもそれだって数時間前には

「参内してもよろしいでしょうか」と連絡が入る。

ゆえに、そういったことが一切ない・・・状況が飲み込めなかったのだ。

「今日は遅かったね」

皇太子がにこにこと笑いながらマサコに話しかける。

「仕事帰りなの。今日はクリスマスでしょ。だからと思って」

何が「だから」なのか。クリスマスって?皇室では祝わない事を知らないのか?

しかも自分達を完璧に無視して会話している。

「両陛下と皇太子殿下はこれから別室お話をされます。マサコさんには

お待ち戴きますか?」

沈黙に恐れをなした侍従が思わず声をかけると

「一緒に話しましょう。これからのこともあるし」

いとも簡単に皇太子はそう答えた。

「いいでしょう?」

「私は帰る」

天皇は言った。こんな失礼な態度をされた事がない。完全に不愉快になっていた。

「客が来るなら最初からそういえばいいものを」

「ちょうどよかったじゃないですか」

「邪魔だろうから帰る」

低く声を抑えた天皇の静かな怒りが全くわからないマサコは

「いえいえお構いなく。ご一緒に」などと言う。

さすがに侍従が「マサコさん。両陛下はお忙しい中、東宮御所にいらしたのです。

やはりご遠慮を」

そうでなくてもさっきから寒い廊下に立ちっぱなしになっている。

「とりあえず部屋に」

皇后が口を挟んだ。ここで怒りに任せて帰っては負けになると皇后は考えたのだ。

皇太子とマサコは当たり前のように部屋に入り、お茶を飲み、会話した。

天皇にも皇后にもマサコの言葉の半分も理解できなかった。

「今日はクリスマスじゃないですか。デートする人は銀座あたりのホテルの

レストランでディナー。プレゼントはティファニーのオープンハート」

「へえ。ネックレスがいいんですか?」

「他にもシャネルのバッグとかファラガモの靴とか。絶対ブランド品じゃないと。

で、鍵を渡すんですよ」

「何の鍵?」

「やあだ。殿下。部屋の鍵に決まってるじゃないですか」

これはもう結婚について具体的に話し合いも何もなかった。

ペースはすっかりマサコのもの。

結果的に天皇・皇后は先に帰り、マサコは深夜0時を過ぎても帰らなかった。

クリスマスだというので、皇太子は急遽大膳に晩餐会に出す高級な

シャンペンとつまみを要求し、慌しくそれらが用意され、夜勤の侍従や内舎人

達は仮眠も許されず、ただひたすら

「マサコさん、いつまでいるんだろう・・・」

「早く帰ってくれ」と祈るだけの時間が過ぎていった。

神道の皇室にあって「キリストでもいいから誰か救いの手を」と望まれたのは

初めてではなかったろうか。

 

12月26日。

そして外務省では淡々と準備が進んでいた。

「トウゴウ君、頼むよ」

ヤナギヤの言葉に外務省ロシア局長のトウゴウは

「任せてください」と言った。

「これで兄のスキャンダルが消えるなら私としては恩の字ですよ」

現在、ワシントンポストの記者をしている兄は

「痴漢」で捕まったという前科があった。

それで新聞記者を首になり、それでも元々が名門トウゴウ家の子孫という事で

ワシントンポストの1記者に鞍替え。

一方の弟は外務省ロシア局長というポストにつきながらも、兄の不名誉に

頭を悩ませてきた。

が、そこに救いの手を差し出してきたのはヒサシと外務省。

兄に恩を売れば今後、何かと得をするかもしれない。

 

12月29日。

仕事納め。

マサコは福島のスキー場へと直行した。

今回は家族全員揃ってのスキー。結婚したらこんな事もないかもしれない。

ヒサシが一生懸命にビデオを回している。

家族の思い出を作る為というより、年明けにマスコミに配る心積もりなのだろう。

「あーあ、のんびり出来るのも今だけかあ」

マサコは来年からの忙しさを考えないようにひたすらすべりまくった。

来年のスキーはSP付きでスキー場貸切とか?

それを考えるとちょっと鬱陶しさも消えた。

 

 


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