痛み止めと座薬で頑張りました。
シラノ
「シラノ・ド・ベルジュラック」といえば、私達の世代はタイトルくらいは知っているし、鼻が大きな主人公が
愛する人に思いを告げられず・・・という話というのはわかる。
でも、元のお話を読んでいるわけじゃないし、無論ブローウエイ版を見ているわけでもない。
それでもストーリーがわかったのは、ほとんど「剣と恋と虹と」と同じだったから。
二幕のお芝居を太田先生は1時間45分くらいにまとめたのかーーすごいなあ。
今回の脚本は・・正直言ってあまりいいとは思いません
そもそも、何でモンフルリーの芝居がダメと決めつけても上演するのか。っていうか、そんな一座を何で
貴族が応援しているのか。そこから矛盾が。
その当時の時代背景がわからないと、理解しづらい面がかなりあったなあ。
そういう意味では「剣と恋と虹と」様様だったんですが。
舞台は中央に階段。その周りを鉄板で囲ってそこに光をあてる事で時間の流れとか景色を映し出す。
照明が大きな役割を果たしています。
修道院のシーンは凝った落ち葉が一斉にふりそそぐという綺麗なシーンでした。
考えてみればロクサーヌ以外は女性があまり出てこないので、アンサンブルが気の毒でした。
(特に秋園美緒)
演出は古臭い印象。主役の年齢に合わせているのか、とにかく動きがない。若手がごろごろ動き回る程度。
シラノが100人を相手に戦うシーンも、1幕最後の戦闘シーンもない。
クリスチャンが撃たれるシーンすらない。当然シラノが大けがをするシーンもない。
それらすべてがセリフでのみ語られるんですね。
多分、初演当時の舞台の規模では、戦闘シーンとかはできなかったんだろうと
要は小劇場タイプの芝居なんだなあと思ったんですが、日生劇場でやるんだし。21世紀なんだし
もう少しメリハリをつけて見せ場を増やす演出でもよかったのではないかと。
ふと、これを小池先生が演出したらどうなるんだろうなと考えてしまいました
出演者について
鹿賀丈史・・・・シラノ。本人も四季出身だし、回りも四季だらけの中で一人で大衆芝居をしているような
セリフの言い回しが一人だけ違う感じでした。
彼の独特のユーモアとセリフが芝居に面白さを与えていたのは事実です。
そうでなければひどく退屈なお芝居になっていたんじゃないかと。
でも、やっぱり体力的に大丈夫なのかな?とか、心配してしまう不安定さがあります
特に歌の時。息を吸う音が気になってしまって。
役柄としては似合っていたし、すごく素敵な「お兄様」だったと思いますが。
彩吹真央・・・ロクサーヌ。正直「絶世の美女」には見えなかったんです。でもそのしぐさと声が可愛らしくて。
白城あやかが演じたクリスティーヌはまさに「絶世の美女」で色気もありました
女王陛下のような。でも彩吹真央のロクサーヌはどこまでも「聖女」「純潔」「お転婆」「おちゃめ」
マザー・テレサなんですわ
見た人しかわからないのが何とももどかしいのですが、今時、あんなに「聖女」が似合う女優は
いないんじゃないかと。
1幕で「お兄様お願い」と甘えるシーン、クリスチャンにつれなくしたり、ド・ギーシュをはめたり
2幕では男装して愛する人の元へ飛んでくるなど、行動的で素直。それが少しもわざとらしくない。
戦場で、男たちに囲まれてにこやかに話すシーンは、まるで天使のようで。強烈な美はないけど
回りを和ませ、暖かくさせる空気があるんですよね
「ローマの休日」のアン王女とか、「ファントム」のクリスティーヌとか、「レミゼ」のファンチーヌが
ぴったり!!今時貴重な「聖女」タイプの女優を大事にして欲しい。
田代万里生・・・クリスチャン。こういう子供っぽくて単純な役は身に合っていると思いますが、目が冷たくて。
必死にやってるのはわかるけど、もう少し包容力を持たないと主役は無理です。
彩吹ロクサーヌと並んでいると「姉と弟」にしか見えないけど。
鈴木綜馬・・・ド・ギッシュ。真面目なのか不真面目なのかわからない役ですが、声も美しくきちんとやっていて
安定感がありました。もっと大きな役でもいいのに。何で恵まれないかなあ。
光枝明彦・・・ラグノー。相変わらずの美声で安心。
男役が女優になると、ファンとしては違和感を持たざるを得ません。
それが朝海ひかるのようなフェアリータイプだったとしても、どこかに見える男役の片鱗に苦笑したり
やっぱり男役に戻って欲しいなと思ったり
スターの退団後のファンの葛藤って大きいんですよね。
彩吹真央の場合、所々歩き方などは男役っぽい部分はあるけど、しぐさ、表情の付け方などは
「娘役らしさ」を徹底的に身に着けた印象です 普通の女優のような自然体ではない所。女性を
「型」としてとらえている所がいいのだと思います。
そして彼女が本来持っていた「母性的」(男役でいえば「包容力」)
「育ちのよさ」「頭のよさ」などがプラスに働いているものと思います。
いわば、清廉潔白な男役だったわけで、それじゃトップにはなれないよな・・・と思いました。
よくもわるくもトップスターというのはアクがないと出来ない立場ですから、修道士のような清廉潔白さでは
あの大きな舞台の中では埋もれてしまう。
でも、女性を演じた場合、この「清廉潔白」さこそ武器になるぞと。
アクの強い個性的な女性はかつてのトップさん達にお任せして、彩吹は聖女マリアでつっきって頂きたい。
ガラスの仮面でいう所の「二人の王女」。
アルディス役で突っ走って欲しいと思いました。
フィナーレでヒロイン扱いされている彩吹に感無量
ああ・・・頑張ったんだよね。ヅカ時代はつらかったけど。