私は花組にはあまり縁がないので、真矢みき時代からそんなに見ていた
わけではありません。
だけど、すでに「SPEAK EASY」にいたという事ですから、目に入っていたんでしょう。
愛華みれ時代は「ミケランジェロ」しか見ていないけど、蘭寿はニッコロだったのねーーと
ニッコロって・・・石の下敷きになって死んじゃう役だったっけ?
あのシーンは、見てて「ひどいっ」って思った記憶が。
多分、私の目に「蘭寿とむ」として目に入ったのは
「月の燈影」の次郎吉役でした。
あの作品自体、結構暗くて難しくて。特に彩吹が演じたのは感情を抑える役どころ。
しかし蘭寿の次郎吉はどこまでも純粋で明るくて、非常に好感を持ちました。
はっきり言って彩吹より目立っていたし、主役的オーラが大きかったような気がします。
笑顔が弾けるような元気な男役・・・というイメージがそこにはありました。
花組の系統としてコメディが上手というのがありますが、蘭寿は間違いなくその系統に
属し、「天使の季節」の女装シーンは非常に面白かった記憶があります。
後に「逆転裁判」を見た時、まさにぴったりな役柄だなと思ったものです。
あの作品の出来がもっとよかったら、蘭寿の宝塚人生も変わっていたかも思います。
いわゆる「花組の御曹司」状態だった蘭寿が宙組へ異動になった時は
一体何の冗談かと思いました。
当時トップの大和悠河とはタイプが違っていたし、「バレンシアの熱い花」の
ロドリーゴやラモンは・・・・ちょっと・・・・って感じで。
申し訳ないけど宙組時代に印象に残る役柄はそんなになかったと思います。
まるで咲きかけの薔薇のように、早く咲いて早く咲いてと願うのに
なかなか花弁が開かないような、そんな印象を持っていました。
ファンにとって嬉しかったのは、蘭寿が花組にトップとして凱旋した事でしょうか。
数年間の宙時代は忘れて伝統的な花組の、都会的で粋でかっこいいトップスターの
誕生に誰もが拍手を送りました。
二番手がやっぱり返り咲きだった壮一帆というのも+に働くだろうと思われたのです。
しかし、お披露目の「ファントム」からして蘭寿の個性を生かすものではなかった。
そもそも再演というのも不満でしたけど、「ファントム」のエリックのような
孤独をしょった青年など、全く蘭寿のイメージとかけ離れていたからです。
時には柄違いの役をやって幅を広げるというのは大事なことです。
「この人はこんな役も出来るんだ」と発見することはファンとしても嬉しい。
けれど、それは2番手時代にすでに終了しておかなくてはならないもので、
蘭寿の場合、2番手時代に確実に「柄」にあった役に恵まれなかった事が大きな
禍根を残したと思います。
本当に「逆転裁判」の脚本がもう少しすぐれていたら・・・と思わざるを得ません。
役柄的には本当に似合っていたと思うので。
トップスターになって、以前のような華やかさとか弾け感が消えてしまい、
逆に2番手の壮一帆がどんどん自己主張しはじめて目立ち始めた時、
何とかならないかなと思っていました。
そこに表れたのが「オーシャンズ11」
これまた再演ではありましたが、ダニーという都会的でちょい悪で大人な男は
蘭寿の個性にぴったり 多分、星組よりも演出家の意図に近い出来であったと
思いますし、これが代表作といってもいいのではないかと思います。
しかし、その後「サン・テグジュペリ」も「アンドレア・シェニエ」も不発。
ショーにおいては唯一「CONGA」だけはよかったけれど、あどはどれも・・・・
演出家たちが蘭寿の個性をよく把握できなかったのが原因かなと思うのですが。
ダニーのような役柄がぴったりであるともう少し早く把握していたらとも思います。
見かけのちゃらさ(失礼)に比べて、中身は非常にまじめで不器用。
正義の味方よりは屈折した方が似合い、けれど声が高いからセリフに
重みがなかなか出ない・・・・いわゆるかなり遅咲きなんだと思います。
今回のさよなら公演「ラスト・タイクーン」は蘭寿の集大成としては内容はともかく
役柄的にはぴったりで、「こんな蘭寿をもっとみたい」と思わせるものでありました。
それなのに退団。
これからどのような活動をするのかわかりません。
同期の涼紫央は母となり、遼河はるひはバラエティで活躍、紺野まひるは女優にして
母・・・・とこの82期は個性にあふれた生き方をしています。
蘭寿もきっと型にはまらない生き方をしてくれるものと信じています。
不器用だから多少迷ったり、場違いな事をやってしまうかもしれないけど
これからの長い人生を考えると、全てに無駄はありません。
いつか舞台でテレビで、「これぞ蘭寿とむ」を見せてくれる事を祈りつつ・・・・
せっかく彼女の18番が出来たというのに・・・・・