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昭和34年2月6日内閣委員会議事録8

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○高瀬委員 

実は私は皇室会議のあり方について私の所見も述べ、

あるいは内閣あるいは宮内庁の意向も伺いたい、こういうことであるのであります。

特に今回の皇太子殿下の結婚に関しまして、

皇室会議のあり方について一言お伺いしたい。そ

して私の所見も述べたい、こういうのであります。

もちろん前提条件として、私は皇太子妃が今回きまりまして、

御成婚があるということについて、日本国民として心からお喜びを申し上げておる一人でございますから、

そういう点は誤解のないようにお願いしたい。


 私は皇室のあり方というものについて、平井君などと意見が違うかもわかりませんが、

敗戦直後陛下もおっしゃったように記憶しておるのでありますけれども、

つまり英国の皇室のようなあり方、これが日本としては非常に望ましいということを

陛下がおっしゃったように記憶しておるのであります。

御承知のように私から申し上げるまでもなくいイギリスは今日存在しておるところの

君主制の国家の典型的、代表的のものであると言ってもいいのでありまして、

皇室と国民とが真に一体になっておるということは事実のようであります。

従って敗戦後、日本が民主主義の国家として再出発した際に、

英国流の皇室のあり方、あるいは英国流の議会の運営のあり方、

あるいは英国流の国民と皇室の関係、こういうものを陛下は理想にしておられたのではないか、

そういうふうに拝察される節があるのでございます。

しかし現在必ずしも皇室と国民とが一体になっておるとは私は思えない点もございます。

たとえば、これは言葉のあやでありますから、こんなことは理由にはならぬかもしれませんが、

菊のカーテン、こういうような言葉をよく耳にいたします。

従って現在の皇室に対する国民の感情というものは、

今回の皇太子妃の選定に当りまして、端的にこれらの点を現わしておる点がなきにしもあらず、

一般の世論というものは非常にお祝いを申し、私もその一人でありますが、

必ずしもそればかりではない。

先ほど平井君もちょっと触れたようであります。

しかも憲法の第一条に明記してあります通り、天皇は日本国民統合の象徴でありますから、

皇室と国民とが密接なつながりを持つということは当然でございますし、

天皇御自身ももちろんそういうふうにお考えになっておると私は拝察いたします。

ところが現在の、特に今回の結婚で国民感情から多少離れているような印象がある。

これは実は私はあの発表の形式とか、そういうものをかれこれ言うのではありませんが、

実際のところ皇太子妃の選定に当りまして、

宮内庁の宇佐美さん初め関係者は長い間大へん御苦労になったと思うのです。

この点私は敬意を表しておりますが、国会も何ら御結婚について知らされておりません。

公式発表の十日前、つまり十一月十七日のニューズ・ウィークには事こまかに、

全部私は翻訳して持っておりますが、

「皇太子の恋」という表題で詳細に報道されております。

結局知らないのは国民だけだ。私はこういう問題がありましたときに、

宮内庁に電話をかけまして、宇佐美さんは当時お留守でありましたが、

そういう事実があるかどうか、私はそれを尋ねたのでありますが、

電話に出た人は相当の方だと思いましたが、全然知らないというお話でございました。

それはいろいろ都合があったかもしれませんが、現在結納もかわされた今日ならば、

その辺のいきさつを相当詳細に御報告を願って、そうしてやはり国会の記録に残しておく必要がある。

これはやはり一つの国事でございますから、その点はぜひとも――先ほど、

いろいろうわさされておるような事実はないとか、断片的におっしゃったようでございますが、

ニューズ・ウィークにいろいろなことが書いてあります。

特にこれは恋愛という言葉を盛んに使っております。

たとえば「二人は恋愛中だが、果して因襲に刃向って結婚ができるだろうか、

これが事情を知っている連中がもう何カ月も抱いている疑問である。

」というようなこと、それから

「皇太子が正田美智子さんに初めて会ったのは軽井沢のテニス・コートである。」

それから、非常に反対があったということも載っております。

「反対は大へんなものだ。一番驚いたのは米国の占領下に皇室を除いて爵位を

全廃された元の公爵、伯爵、子爵、男爵などであった。

天皇の義妹に当られる秩父宮妃のお母さんの松平信子前子爵夫人を先頭に、

華族たちは皇族出の他の候補者を立てて運動したが、

民主化がとうとう皇位にまで及んだことに一斉にろうばいした。」

こんなことが書いてあります。これはもちろん単なるニュースでありますから、

私はその信憑性のいかんは知りませんけれども、

特にあのとき宇佐美長官もおっしゃったと思うのですが、

あれは恋愛ではない、たとえば結婚は相互の合意のみによって成立し、

相互の協力によって打ち立てなければならないという憲法の条章そのものとは関係がない、

普通の恋愛ではないのだということを非常に強調されたようでございます。

従ってこういうような問題について、先ほど長官も非常にいい機会を与えてもらって感謝すると言われましたが、

私はやはり国家の一つの重大な国事でございますから、

こういう点についても詳細に系統的にいきさつを説明されて、

国会の記録に残しておく方がよかろう、私はこういうふうに考えるので申し上げているようなわけであります。

ここで一問一答をして宇佐見さんをどうこうしようというのではございません。


 それから、特に私の念頭に浮びましたことは、皇室会議というものはただ一度しか開かれていない。

結局皇室会議を一度開きまして、決定をやったのは既成事実をただ承認しただけ、

椎熊前副議長などに聞きますと、その日に正田家の家系その他いろいろ書類を渡されて、

それにただ無言で賛成しただけだというふうにも聞いておるのでありますが、

こういうふうになりますと、皇室会議などというものは非常に形式的なものであって、

国民や国体と重大な関係にある皇太子妃を決定するということは、

あまりにも非民主主義的なやり方じゃないか。

皇室会議というものは非常に形式的なものになって、

たった一回、既成事実を承認するというだけになってしまったのでは、

皇室会議のあり方としては非常に危険じゃないか、こういうふうに思うのであります。

特にたとえば皇室典範の第三条を見てみますと、

世継ぎの方、皇嗣に重大な事故があるときは、皇室会議の議によって皇位継承の順序を変えることができる、

こういうふうに述べてあります。

従ってこの皇室会議を開くのは、議長であるところの総理大臣ではありますけれども、

形式的には宮内庁がイニシアチブをとることになりますから、

これが非民主主義的に運営されるということになりますと、

非常に重大な結果を及ぼすと思うのであります。

従ってこれは宮内庁だけを責めるわけには参りません。

政府の重大なる責任でもあると思いますが、一体こういうような点で、

ただ既成事実だけを皇室会議に形式的にかけて、

たった一回だけの会議でああいう重大な国事をきめるということが果していいのかどうか、

その点が非常に私は重大だ、こう思うのであります。


 それからもう一つ、こういうような問題について、

これは例は違いますけれども、イギリスなどの例をとってみますと、

たびたび非公式の閣僚会議などを開いております。

たとえば私はここにノーマン・バリメインの書いた「ザ・ストーリイ・オブ・ピーター・タウンゼント」という本を

持っておりますが、これによりますと、あのプリンセス・マーガレットがタウンゼントと婚約するときに、

非常に衆人環視の中で国民が納得するような状態でああいう問題を解決したようであります。

従ってその当時のサー・アンソニー・イーデンはたびたび閣僚会議を開き、

あるいはカンタベリー大僧正とも相談をし、あるいは上院の枢密院議長のソールスベリー卿などとも相談をして、

慎重な手続をとってあのプリンセス・マーガレットの問題を解決した。

私は当時ロンドンにおりました。

非常にその点の合理的な国民と密着したやり方について、

敬意を表して帰ってきた一人なのであります。

従ってそれと比較して、この皇太子妃のきめ方が一回の皇室会議できまる。

しかも私は、きょう内閣側からだれも出ておりませんが、

この皇室会議の構成自体についても非常に疑問を持っております。

両院の議長、副議長が出ているが、副議長というものは議長が事故あるときにだけ

これを代理するものであって、院を代表して出るとすれば議長だけでいい、

こういうような点も私の聞きたい点でございますが、答弁する人がおりません。


 そこで私は、この皇室会議の構成についても疑問があるし、

ああいう皇位継承をきめるような重大な皇室会議というものはもっとたびたび開くなり、あ

るいは内閣と連絡するなり、そういうふうにして国民が納得するような状態で

あの御結婚をきめていただいたらなおよかったのじゃないか、こう思いますが、

これらに対する宮内庁の見解、それから内閣の見解、

それから宮内庁は内閣などとどういうふうな折衝をされたか、

小泉という人は皇太子殿下の先生でありましょうけれども、大体田島、小泉などという方だけが

イニシアチブをとって、きまったものを総理大臣に報告し、

総理大臣はただ正田美智子さんの信仰の問題だけを

お聞きになったというふうにしかわれわれは受け取れない。

それの前にたびたび閣僚会議を開くなり、あるいは皇室会議を開くなり、

こういうふうにして念には念を入れてきまったものならば私は非常にけっこうだと思うのですが、

われわれ国民はその点は全然知らされてない。

知らないのは国民だけだという結果になったわけであります。

十一月十七日のニュースでこういうこともちゃんと出ているわけであります。それで私は電話をかけた。

 しかも十二月六日号の「エコノミスト」に日本の皇室と題して、

宮内庁の役人の各位には非常に痛いことを書いてあるのであります。

これは読むとはなはだ妙なことになりますが、一応読んでみましょう。

「古くからの皇室の伝統のうち、残っているものは天皇一家が守っているよりも、

むしろ皇室の役人が守っているといった方がいい。

宮内庁の役人の数は一万人から一千人に激減したが、依然強力である。

彼らは野心を持たず、別に悪い人間ではないが、強い義務感に縛られる傾向があるので、

時代に取り残されがちである。彼らは渉外のセンスがないので、

他の官庁のより進歩的な役人たちからきらわれ、

一般国民から疑惑の目で見られている。」

これは非常にお気の毒ですが、これはただ書いてあるので、私の意見ではございませんから……。

「皇太子の婚約発表の際、発行部数の多い日刊紙「読売」は十一月二十八日の社説で辛らつに論じている。

「天皇を独占することによって特権を維持しようとする暗い勢力が、

かたくなに民衆への接近を妨げていたのである。

皇太子の婚約は、これらの人たちの態度に対して、痛烈な反省のむちを与えたものと言ってよい」

以上の言葉は、正しいと思っていることをやってきただけの役人たちにとって、

やや点が辛いかもしれない。だが、大ていの日本人は、

宮内庁の官僚が皇太子に、一般民間人と決して結婚させないと考えてきたが、

今では皇太子みずからがこれら官僚に分を知らしめることによってのみ、

自分の望みを貫徹したと信じ、皇太子の勇気ある行為に対して、

熱烈な拍手を送っていることは事実だ。」というのであります。

非常に長くかかりましたが、こういう批評もあるのでございますから、

私は宮内庁の、特に皇室会議なんかに対するやり方に対して反省を促したい、こういうことでございます。


 それから先ほど三笠宮の問題で受田君からお話がありましたが、

私は少くとも皇族方というものは政治的にもあらゆる点で中立性を持って、

インパーシャルでなければいけないと思うのです。

特に選挙権もない、被選挙権も行使されない、

こういう地位にあるのでありますから、やはり政治的な影響のあることは発言されない方がいいと思うのであります。

そういう点で宇佐美長官が率直に三笠宮におっしゃったことは私は正しいと考えております。

従って今後も三笠宮殿下の学問のいろいろ結論とかなんとかを、

そういうふうな中立の立場にある特殊な皇族方は、

ぜひとも積極的に発表されないことを望む一人でございます。


 自分の意見だけを長々と述べましたが、

これらについて実は内閣並びに宮内庁の意見を拝聴したい。

特に私は宇佐美さんを責めるよりも、国家組織法によりましても、

宮内庁は内閣の一つの庁になっておるのでありますから、

内閣委員会としては赤城官房長官の臨席を願って、

この点の所見をはっきりと聞く必要があると確信いたしておるのでありますが、

どういうわけか来ない、それでは答弁を得ることもできませんが、宇佐美さんに一つ所見をお伺いしたい。

(陛下(昭和天皇)は、民主主義国家における皇室の在り方として

イギリスの王室のようなものが望ましいとおっしゃったような気がします。

イギリス王室は現在、存在している君主制国家の中でも人民と一体化していると思います。

日本の場合、必ずしも皇室と人民が一体化しているとは言えないと思います。

例えば「菊のカーテン」という言葉がありますよね。

 

天皇は国民の統合の象徴ですから、当然皇室と国民は一つであり、

また陛下もそのように望まれていると思います。

しかし、皇太子殿下のこのたびのご結婚に関しては、必ずしもそうとばかりは

言えない空気があるのです。

皇太子殿下のご結婚について宇佐美宮内庁長官などは非常に努力されたと思いますが

国会は何一つ知らされておりません。

11月17日のニューズウイーク誌に細かく書かれておりまして

それには「皇太子の恋」という風に報道されています。

結局、知らなかったのは国民だけ。

これについて宇佐美長官に電話をしたけどお留守だった。

電話に出た宮内庁の方も知らなかった。

記録としてこういう事は国会に残していく必要があると思います。

 

ニューズウイークにはいろいろな事が書いてあります。

特に「恋愛」という言葉を多用しています。

「皇室の因習に歯向かって二人は結ばれるのか。事情を知っている人達の

疑問である」

「二人が出会ったのは軽井沢のテニスコートだ」

「反対も相当あった。秩父宮妃の母である松平信子を筆頭に

旧皇族・華族は他の候補者を立てて反対したが、民主化が

とうとう皇室にまで及んだことに、みな狼狽した」

確か宇佐美さんは「これは恋愛結婚ではない」とおっしゃいましたよね?

皇室の結婚は憲法のいう所にある「両性の合意によってのみ」とは

立場が違うものだと。

 

さらに皇室会議は一度しか開かれてないようですね。

当日に正田家からの資料をあれこれ渡されて無言のまま賛成しただけとか。

これでは皇室会議の意味があるんでしょうか?

既成事実を見て承認するだけになったら皇室会議の在り方として

危険すぎますよね。

重大な事をたった一回の皇室会議で決めてしまっていいものでしょうか?

イギリスではマーガレット王女とピーター・タウンゼントの件について

何度か非公式の閣僚会議を開き、カンタベリー大僧正やソールズベリー卿などとも

話し合って全ての国民が納得するように衆人環視の下で解決しました。

私はその時、ロンドンにおりましたが感動しましたよ。

なのに日本はたった一回の皇室会議で、こんな重大なことを決めてしまうなんて。

しかも小泉信三・田島前長官らがイニシアチブをとって、決まったものを

総理大臣に報告し、総理大臣は正田美智子さんの「信仰」についてのみ

質問したとか。

それも閣僚会議が開かれ、皇室会議が開かれ、何度か話し合った結果のもの

ならわかるけど、国民には何一つ知らされていなかったんですからね。

「エコノミストには「皇室の伝統は天皇一家より宮内庁職員が守っている。

悪い人達ではないけど融通がきかず、時代遅れになりがちだ」

また、読売新聞の社説においては

「日本人はみな、官僚が皇太子と一般庶民との結婚を許さないだろうと

考えていたが、皇太子自らがその官僚たちに分を知らしめることによってのみ

自分の思いを貫徹したと信じていて、皇太子の勇気ある行動に拍手した」

と書いてあります。

また三笠宮に関しては、宇佐美長官の方が正しいと思います。

全てにおいて中立であらねばならない皇族が政治的発言をしてはいけないと思います。

何気にすごい事が書いてあるんです。

 皇太子妃決定のニュースはニューズウイークが最初に配信した。

 皇太子妃決定に関して小泉信三・田島前長官などが先頭に立ち

  総理大臣はその報告を受けるだけで、なんら疑問をさしはさむ余地がなかった。

  それでも「信仰」の問題は気になった。

 国民も国会も何も知らされておらず、しかも皇室会議が一度だけ開かれたのみ。

 要するに、「正田美智子さん」という人について、実は国民も総理大臣も

 どんな出自の人でどんな考えを持ち、どんな性格なのかという事を全く知らされて

  いなかったんですよーー

 しかも宮内庁長官は否定するけど、皇太子はどうも「テニスコートで知り合った女性と

 恋に落ちたようだ。まるで一般庶民と同じように客観的に「妃」を決めたのではなく

  感情的な「好き嫌い」が優先された。

 それって皇族の在り方としてどうなの?私達一般人と変わらないなら皇族でいる必要は

 ないんじゃないの?そういわれても仕方ないんじゃないの?・・・・って言ってます。

 マーガレット王女に関しては。

  彼女が妻子持ちのピーター・タウンゼントと恋に落ち、スキャンダルになって

  それでも結婚したいという意思を国民は逐一固唾をのんで見守りました。

  最終的には女王も教会も「王女の結婚は認められない」と判断し、それでも結婚したい

  のなら王位継承権と財産分与の権利をはく奪されて平民になれと言われたわけです。

  それを突き付けられた王女は、身分を捨てる事が出来ず別れた・・・・と言われています。

  つまりノブレスオブリージュ・・・高貴な身分の方には制約がある。

  普通の人のようにただ好き嫌いだけで結婚してはいけないという事ですね。

 しかしながら皇太子は「自分の意志を貫き通す事こそが皇室の権威を知らしめるもの」と

  とらえたようで。

  「皇太子である自分が新憲法を地で行く行為をする・・それに国民は拍手した」と

  思っていた?

 総理大臣の疑問「信仰」について、なぜこの時もっと深く掘り下げなかったかと

  今となっては残念無念ですね。

 


 


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