○宇佐美説明員
きわめて多岐にわたっての御質問でございます。
今回の御結婚に対しまして、もう数年前から、
私が長官になる前からいろいろな準備が始まっておった、調査があったわけであります。
もちろんその調査につきましては先ほどもちょっと申し上げましたように、
これは御両親陛下としても御心配になることであり、
皇太子様自身のお考えということもございまして、
十分お考えも伺いながら方針を立てて参ったわけであります。
もとより御選考の基準と申しますものはこれは皇太子様の妃殿下にふさわしい方ということで、
御健康にしろ何にしろ最上級、お尋ねがあればそう申し上げるよりほかないわけでございます。
しかし現実の場合にはそういったすべて万全を備えるということはなかなか困難でございます。
ただ国会においても各報道が漸次現われるにつれまして、
ほとんど毎国会ごとに宮内庁の考えの御質問がございました。
それにつきましてはお尋ねに従って、われわれは考えるところを率直に申し上げて参ったつもりでございます。
その当初の考えは国会でもお答え申し上げたと思いますが、
そういった諸要件がすぐれた方であられるのはもちろんでございますけれども、
その御選考の範囲というものについてもお尋ねがあったわけでございます。
御承知の通り前の皇室典範におきましては、皇族の結婚は皇族または華族に限るという規定がございました。
それが新しい憲法に従ってできました新しい皇室典範におきましては、
憲法の精神によって、華族制度はもちろん貴族の制度というものが廃止されたのでございます。
従って、皇族男子の御結婚につきましては、何ら法制的には制限はございませんけれども、
やはり皇室自体が長い歴史を持ったお家でありまするし、
旧来の範囲から選考が始まるというのが、むしろ常識的であるということを
われわれも考えておったのでありますが、しかしそういったときにも、ときによっては、
その範囲外に出ることもあり得る。御質問の中にも、
全国民を対象にして選べというようなこともしばしば伺ったわけであります。
われわれとしてはそういうようなことでお答えしたと記憶するのであります。
実際の選考に当りますると、やはり終戦後の各家庭生活の変化でございますとか、
あるいは優生学的な見地からの制限でありますとか、いろいろな点で
なかなかむずかしい問題に逢着いたしました。
従って、第一段の方針から一歩出るということにつきましても、実に時間をかけて
慎重に考えたわけでございます。単純に考えたわけではなかったのであります。
しかし実際問題といたしまして、一般と申しましても、どこでもいいというわけではございません。
やはり日本の良識のあるりっぱな家庭ということを考えなければなりません。
これのうちからまた候補を選ぶということにつきましては、相当苦心をいたしたわけであります。
だんだんそれをしぼって参りまして、何人かの候補をあげ、殿下にもよく御説明をして、
私どもの申し上げることと殿下の御決心も合致いたしまして、
ことしになりましてようやく進行するようになったわけであります。
その間私どもといたしましては、前内閣あるいは現内閣におきましても、
総理大臣にはそういった経過を申し上げ、それからそういった大きな根本の方針の変更等についても
説明申し上げて参ったのであります。
皇室会議を開きますことは、先ほど仰せになりました通りに、
議長たる内閣総理大臣の招集でございます。もちろん一国の官吏としての立場、
議長としての立場から、私どもといたしましては、
過去においても十分な御連絡と御意見を伺うということには意を配って参ったつもりでございます。そ
ういうことで皇室会議が開会せられたわけでございます。
実際先ほどお述べになりました通り、皇室会議を開くにつきましても、
実は皇室会議が設置せられましてから第二回の例であります。
第一回は御承知の通りに、新憲法の実施の当時に多くの皇族が下られまして、
そのときが一回で、第二回であります。
私といたしましてもこの取扱いについては、内々皇室会議の委員であられる方の御意見も
聞きながらやったつもりであります。
会議が開かれまして、できるだけ経過と資料を申し上げ、私といたしましては、
世上でいわれまするいろいろな不安と申しますか、心配ということも率直に申し上げて、
御説明をしたわけであります。
その結果、満場一致でおきめをいただいたのであります。ただ今回の問題を離れて、
将来のことを考えます際に、先ほど摂政の場合の例をお引きになりましたが、
要するに結婚の場合におきましては、あくまで憲法の原則と申しますか、
これは新しい憲法ばかりでなく、従前からも、これは人間の本質であろうと思いますが、
結婚される方の合意がなければならぬわけでございます。
事前にいろいろなものを多くの人が公式に論議をして、これを配合するというものではなかろうと思っております。
皇室会議におきまする皇族男子の御結婚、将来も起るのでございますが、
これはやはり両性、両方の合意というものがなければ、
皇室会議の議にはならないのではないかというふうに思います。
こういった選考の経過というものを国民に周知させてやるということは、
その事柄の性質上、私は避けねばならないことだと考えております。
その間においていろいろ派生的な問題が起りますし、
人権の問題にも及ぶことであろうと思います。
ただ皇室会議に慎重に審議を願うという意味から申しまして、
私も今の皇室会議があのままでいいかどうかということは、実は今回当りまして、
いささか考えたことでございます。今回の現実のことを申すのではなく、
全体を進める上において、たとえば御結婚会のような重大なことを進めます際に、
今の制度のままでいいかどうかということは多少私も考えました。
まだこうしたらいいのではないかという結論はここで申し上げかねますけれども、
単に御結婚のことばかりでなく、摂政の選定等いろいろ重大なことを議する制度でございますから、
慎重に検討しなければなりませんが、私も正直に申し上げて、
多少当時は考えて、幾らか申したこともございます。そういうような点から考えますと、
皇室制につきましても、御発言のようなことが一つあるのかもしれません。
どういうふうにしたらば、ほんとうに事を運ぶに容易であって、
しかも慎重な審議を尽せるかという行き方について、将来検討すべきものであろう、こう考えます。
申し落したことがあるかと思いますが、以上でございます。
(皇太子の結婚に関しては旧皇室典範にあるように旧皇族・旧華族から
選ぼうと思ったのですが、優生学上の問題などからその範囲を広げざるを得ず
かといって誰の家でもいいというわけでもなく、色々考えた結果なのでございます。
とはいいつつも、両性の合意がなければ皇室会議にかけることもできません。
皇室会議に関してはこれで2回目になります。
今のままの在り方がいいとは言えないけど、だからこうだとも言えません)
要するに、「皇太子妃にはこの人がふさわしい」という視点と、皇太子自身が
気に入ったかどうか、そして妃となる人が合意したかどうか。
宮内庁としてはイエスともノーとも言えないのです。
○高瀬委員
私は別にこれ以上伺うことはありませんが、
実はこういうふうな重大な国事というものは、やはり国会というものは国民の代表というか、
国権の最高権威のところですから、
こういうことはやはり内閣において公式に国会に報告があって
しかるべきものだと思うのです。
それは宇佐美さんに申し上げてもなんでありますが、私はその点を特に官房長官に
念を押しておきたかったのでありますが、おりませんから、
委員長を通してこれをお願いします。
委員長、いいですか。特にこういう問題については、やはり公式に国会に内閣が報告する
義務があると思うのです。そういうことを特に私は確かめたかったのですけれども、おりませんから、
委員長を通してお願いいたします。
それから、特に皇室会議のあり方ということについては、
宇佐美長官もいろいろ考えておられるようでありますから、
内閣においても慎重に考える必要がある。うまくいったときはいいのですが、
いろいろ事が紛糾した場合に、あんなやり方、ほんとうの形式的な、
イエスかノーかというようなやり方では、非常に国民が安心しない。私
はこういう考えでございますから、どうぞ御善処方を要望いたしまして終ります。
(とにかくこういう重大な事は国会を通すべきです)