Quantcast
Channel: ふぶきの部屋
Viewing all articles
Browse latest Browse all 5842

韓国史劇風小説「天皇の母」34(フィクションだわ)

$
0
0

「ねえ、ミーヤ」

もうすぐ中学生になろうという時期の6年生は何となくあわただしい。

とはいえ、そこは学習院。初等科から中等科に上がるだけなのだが。

しかし、中学へいけば「女子」と「男子」に分かれる。

女の子達だけの学年ってどんな感じなのかしら?

「ミーヤは皇族だから、将来結婚するのは王子様?」

聞いてきたのは同じクラスの子だ。

ミーヤというのはノリノミヤの愛称。「宮」だから「ミーヤ」とは単純。

どうやら最近、ヒロノミヤのお兄様の「お妃」候補問題がテレビに出るようになったので

話題になっているらしい。

「さあ。私はよくわからないけど・・・」

「きっとどこかの国の王子様がプロポーズしてくるんじゃない?いいなあ」

王子様ってどこの?少なくとも日本で王子様といえば二人の兄だけだし。

日本の皇族が外国人と結婚できるのかどうか・・・それすらわからない。

「ダイアナ妃って本当に綺麗だったし結婚式のドレスもふんわりしてて素敵だったわ。

なんたってガラスの馬車がシンデレラに出てくるみたいで憧れちゃった。あんな人が

お姉さまだったらいいと思わない?」

「そうねえ。ダイアナ妃は目がさめるくらい綺麗だったんですって」

皇太子夫妻はチャールズ・ダイアナの結婚式に行ったのだった。

大英帝国の栄華よ再び・・・という壮大な結婚式の模様は衛星中継された。

夜遅かったので見せて貰えなかったけど、次の日から毎日のように報道されていた。

ダイアナ妃はもうすぐ20歳で金髪で青い目の可愛い人だなと思った。

ボリュームたっぷりのウエディングドレスと裾が長いベール。まさに少女マンガから

抜け出たような。

「日本はウエディングドレスじゃないの?」

皇族の学友をやっていながらこの程度の知識しかないのは仕方ないのかも。

ミーヤの時代では皇族そのものが意味不明の部分もあるから。

「十二単よ」

母の紅色の十二単は毎年の皇室特番の目玉だ。飽きる程見ている。

「唐衣もかつらもとても重かったのよ。特に髪の毛がびんつけ油で固まって

しまってね」

とよく聞かされた覚えが。

「ダイアナ妃がお姉さまだったら嬉しくない?」

「そうねえ。綺麗だものね」

まぶしすぎて会う度に気後れしてしまうかも。母の美しさにも気後れしてしまうのに。

つくづく母に似なかった事が悔やまれる・・・とみんな思っているのかも。

そんな空気は何となくわかるのだ。

「私、結婚するなら三浦友和がいいわ。百恵さんみたいに教会で結婚式するの」

「まあ・・教会で」

「そうよ。ミーヤは?理想の旦那様はどんな人?」

と聞かれてノリノミヤは答えに窮した。

そんな事、考えた事もない・・・けど、頭にすぐ浮かぶ顔。それは兄・アヤノミヤ。

(アーヤお兄様みたいに背が高くてハンサムで・・でもお兄様はすぐに私を

からかって泣かせるし)

ノリノミヤにとって一番身近な男性は兄二人だった。

特に歳の近いアヤノミヤとは仲良しだったけど、ことあるごとにノリノミヤにちょっかい

を出しては泣かせて母に叱られている。

「ごめんね」って謝られると「よろしくてよ」って答えてしまうのだが、数分後には

また・・・それで東宮御所はいつもにぎやかだと言われていた。

「ねえ、ミーヤ。理想の芸能人とかいないの?」

「あ・・里見浩太郎」

「え?」

学友が一気にひいたような気がした。

「ルパン三世でもいいわ」

「そうだった・・・ミーヤは時代劇とアニメが好きなんだったわね。でも里見浩太郎は

おじさんよ。長七郎様が理想なの?」

「助さんも好きよ。他にも一杯いるけど」

「わかったわかった・・・それでルパンはなぜ?架空の人物じゃない」

「あら、ルパンのよさがわからないなんて信じられないわ。「カリオストロの城」を

見た?素敵な「おじさま」だったのよ。クラリスがね・・」

「はいはい」

もう聞いてくれなかった。ルパン三世はアニメ界の不朽の名作だと思ってる。

特に宮崎駿の「カリオストロの城」は本当に素敵だったもの・・・うまく言葉では

表現できないけれど、心の中でおおむね、そんな事を考えていたのだ。

(いつかクラリスのドレスを着たいわね)

漠然とだがノリノミヤの心に憧れが登場した。

(お兄様と結婚なさる方は優しい方がいいわ。一緒におしゃべりしたりケーキを

焼いたり出来るような。だって私、お姉さまが欲しかったんだもの。お姉さまと二人で

アニメや時代劇の話をするの。それからおそろいの服を着たりして)

妄想が膨らんでいく・・・・自分勝手な「兄嫁」の妄想ではあったがノリノミヤには

それが精一杯だった。

「女子中等科にいる帰国子女がすっごく可愛いんだって」

男子中等科のクラスは3学期なのにのんびりしていた。

アヤノミヤの学友はみんな持ち上がりで高等部に行くから受験の心配がない。

世の中受験戦争まっさかりだというのに、全く別の空気がここには流れていた。

「帰国子女?」

アヤノミヤはちらりと反応した。

帰国子女・・・という言葉は最近の流行語だ。

生まれも育ちも外国で日本語が不自由だったり、自分の感情をストレートにぶつける

性格が災いして学校に馴染めずいじめられたりしているという。

一方で「帰国子女」といえば「秀才」の代名詞にもなっている。

英語が堪能で発音がネイティブ。それが日本の学校社会の中では

羨望と嫉妬を生み出すのだ。

「人と同じように」としつけられる日本人と違って、帰国子女は

「何でも言葉できちんと説明できるように」教育される。弁が立つし、相手に対しても

ものおじしない。でもそういうありかたが日本では嫌われてしまう。

「帰国子女っていう事は英語が得意なのか?」

「ドイツ語も話せるんだって。1年前にアメリカから帰国したらしいけど

最初は日本語が下手だったみたいだけど、今はぺらぺらだってよ」

「殿下のお妃は帰国子女がいいんじゃないの?最先端な感じで」

アヤノミヤは学友の言葉を無視して本をめくっていた。

「きっと兄宮はそういう人をみつけるかも」

「そうだな。僕は気楽な次男坊だから」

「話がずれた。ほら、女子部の帰国子女の話。なんかとってもおっとりして

いるんだって。テンポが人と違うって」

「どう?」

「わからないよ。女子部に忍び込むわけにはいかないだろ?でも帰国子女って

何でも口に出してズケズケいうイメージないかい?でも彼女はそうじゃなくて

妙におっとりしててこちらが・・・あららーーってなるらしい」

「今時そんな女の子がいるならぜひ付き合いたい」

と誰かが言った。

「そういう子はきっとおしとやかで三つ編みなんかしちゃってさ。

朝、校門の前で手作りの弁当なんかを持って待っててくれたら。いやーー最高!」

アヤノミヤは知らん振りして本めくる。女は新珠美千代以外は認めない。

なんたってあの人こそ理想の女性だ。でもそんな事を口にすれば「マザコン」と

言われそうなので我慢している。

その女子中等科の帰国子女がどんなに可愛らしくても、新珠美千代に匹敵

するはずがない。

「ところでさっきから何を熱心に読んでるんだい?植物学の本?」

「ああ・・おじじさまに手伝わされてる分類」

「おじじさまって・・・天皇陛下・・・」

「そう。御所に上がるたびに質問されるから答えられるようにしとかないと。

昔はこういう事は全部おばばさまの仕事だったんだけど、お加減を悪くしてからは

それは僕の役割になったんだ。僕は動物の方が好きなんだけど」

「相手は陛下だもんんあ。すごいおじいちゃんを持つと大変だよなあ」

「そうそう。だから早く兄には結婚してもらわないと。せいぜい植物学好きな

あるいは父のハゼに興味がある人がいいかなあ。で」

「帰国子女」

「どっちでもいいけど日本が好きな人」

アヤノミヤは笑って答えた。

「ところで、その子の名前は?」

「何ていったかなあ・・・自転車の車輪みたいな名前で・・・」

「違うよ。ガラスをひっかく音だよ」

「なんだい?そりゃあ」

「キコ・・たしかキコっていってた」

アヤノミヤは別段興味を持たなかった。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 5842

Trending Articles